【美の滋賀trip!#06/近江の祭り研究所】
普段あまり気にとめることのない瓦ですが、
家の繁栄を願う屋根の上のお守りとして、
実にさまざまな飾り瓦が存在することを知っていますか?
ふと見上げたその視線の先で
屋根の上の天女と目があったことをきっかけに
県内の飾り瓦を訪ね歩いた近江の祭り研究所の代表である
写真家・辻村耕司さんの約10年間の記録が
「かわらミュージアム」で展示されています。
見終わった後には思わず屋根を見上げながら帰りたくなる
そんな瓦の面白さに気づける展覧会をご紹介します。
天女との出会いから始まった、屋根を見上げる日々
いぶし銀のモノクロに染まる展示室。
全国的にも珍しい瓦の博物館「かわらミュージアム」で
開催されている『近江の瓦にみる美を訪ねて』の会場です。
迫力満点に天井から吊るされた天女のタペストリー。
妖艶な天女がこちらに向かって手を差し伸べています。
こちらが辻村さんが一目惚れしたという守山市東光寺の飾り瓦。
辻村さんはライフワークとして、
これまでから県内各地の風景や祭りを記録してきました。
その活動の中で瓦にも、地域性や特徴があり
記録として残す必要があるのではと気づいたそう。
そこから辻村さんの屋根を見上げる日々が始まりました。
飾り瓦に込められた願い。想像力をフルに働かせて感じてみよう
展示写真の一部から瓦の魅力をご紹介します。
飾り瓦は屋根の装飾としてだけでなく
さまざまな意味や願いが込められています。
例えば「鯉」。
これは水に関するものを乗せることによって火から家を守る
火事除けの願いが込められているそう。
同じ意味で「波」を模した装飾も多いのだとか。
こちらも鯉がモチーフですが、鯉に抱きつく人がいますね。
よく見ると相撲のまわしをつけているので、
鯉と相撲をとっているのでしょうか?
「この家に男の子が誕生したお祝いだったのかもしれませんね」と辻村さん。
五月人形代わりにということでしょうか。
「世代が変わり、どういう経緯でその飾り瓦が乗せられたのか
住人も知らなかったりするんですけど、
こうだったんじゃないかなと想像力を働かせて
見てみるのも面白いですよ」。
こちらの男性は何とも悩ましそう。
一体なにを悩んでいるのでしょうか?
想像力を働かせてみて・・・
夕飯のおかずに悩んでいるくらいしか思いつかない
なんとも乏しい想像力が悲しいです(苦笑)
屋根の上からこっそりとこちらを見つめ手を会わせる鬼。
その控えめな姿がなんとも可愛い!
なにかお願いされているような気がします。
鬼は魔除けの意味でよく飾り瓦に使われるそうですが
こんな愛らしい鬼もいるんですね。
塀の上で大笑いする大黒様。
そのユーモラスな表情で出迎えてもらえれば、
家に帰ってくるのが楽しくなりそう。
鳳凰と麒麟、毛並みや羽の柄など、
下から見上げてるだけでは到底気づかない細部にまで
とても繊細な装飾が施されています。
瓦職人たちの腕の見せ所でもあったのでしょう。
鯛・亀など縁起物や、干支の動物をかたどった瓦も多いようです。
飾り瓦は一種のパブリックアート
多くの人の目にさらされることを想定して作られた飾り瓦は
一種のパブリックアートともいえます。
かわらミュージアムに収蔵されている実物も展示されているので
ぜひ、間近でその芸術性の高さを感じてください。
中には金箔が施された作品もありました!
屋根の上に乗せるだけでなく、室内で鑑賞するよう作られました。
こちらは屋根の上から睨みをきかせて家を守ってくれる
「鍾馗(しょうき)」の飾り瓦。
頭にかぶり物をした鍾馗の姿はとても珍しいのだとか。
艶やかな光沢は瓦ならでは。
竹べら一本でこれを作り上げるというからすごいですよね。
人知れず屋根で見守る瓦を探しつづけたい
(撮影:中村圭吾)
会場を案内してくださった辻村さんご夫妻。
「瓦が民家に使われるようになったのは江戸時代の終わり頃から。
でも、瓦に関する資料ってほとんど残されていないのが現状です。
家の建て替えに伴い、破棄されてしまったものもあるかもしれません。
でも、ふと見上げた屋根の上に、こんなに素晴らしいアートがまだまだ残っている。
これこそが滋賀の美、滋賀の良さではないでしょうか?」と辻村さん。
展覧会を見終えた帰り道には、思わず上を向いて歩きたくなるはず。
もしユニークな飾り瓦を見つけたら、まずは辻村さんへ一報を!
(写真・辻村耕司 文・しがトコ編集部)
『近江の瓦にみる美を訪ねて』を地図でみる
近江鉄道バス「大杉町八幡山ロープウェイ口」から徒歩3分
→大きい地図で見る
『近江の瓦にみる美を訪ねて』のデータ
- 会期
- 2021年2月2日(火)~2月28日(日)
※展示はかわらミュージアム主催で3月28日(日)まで延長 - 時間
- 9:00~17:00(入館は16:30まで)
- 場所
- かわらミュージアム(近江八幡市多賀町738-2)
- 入館料
- 大人300円・小中学生200円
- 休館日
- 毎週月曜日(祝日の場合は開館、翌日休館)
- 公式サイト
- 近江の祭り研究所Facebook
※「美の滋賀trip!」は『しがトコ』が企画・取材を担当し制作しています。この記事は、滋賀県公式のポータルサイト『美の滋賀trip!』でも公開されています。