カフェ・お店

糀(こうじ)一筋180余年。三上山の麓で作り出される『糀屋吉右衛門』のこだわり糀

【糀屋吉右衛門(こうじやきちうえもん)/滋賀県野洲市】

味噌・日本酒・みりんなど、発酵食作りに欠かせない“糀”は
「体に良い」「免疫力アップ」と改めて見直されている日本古来の食材です。

三上山の麓で、江戸時代から続く糀専門店『糀屋吉右衛門』では
滋賀県産の米にこだわり親子二人三脚で
黙々と糀づくりに励む姿がありました。

三上山を望む年季の入った作業場と新店舗

御上神社

美しい稜線から別名「近江富士」とも呼ばれる三上山。
三上山の麓、国道8号線のほど近くにある「御上神社」を越えて脇道に入り、
田園風景と住宅が混在する場所に『糀屋吉右衛門』があります。

釜看板

先代が使用していた釜を細工した看板が目印です。

店舗前

2019年11月にオープンした念願の新店舗から入っていきましょう!

 

ショーケース

現在はこの店舗で自家製糀を使った塩こうじや甘酒、
味噌などの商品が購入できますが、店舗ができるまでは、
裏にある作業場に直接、お客さんが入ってこられたとか。
年季の入った作業場もお客さんに人気があったそうですよ!

では、実際に興味深い糀づくりを四代目店主・山﨑豊彦さんの
案内で見せてもらいましょう!

伝統の製法を残しつつ、機械も取り入れた糀づくり

糀つかみ手

“こうじ”には二つの漢字があることを知っていますか??
“麹”と“糀”。“麹”は米・麦・大豆などの穀物から作られたこうじ全般を指します。
もう一方の“糀”は米を材料に発酵させたもの。
“糀”は日本で作られた和製漢字で、
米に白い菌糸が「花が咲くように生える様子」から生まれたといわれています。

糀づくりは蒸した米にこうじ菌を付けて発酵させていきます。
『糀屋吉右衛門』では、地元のお米を中心に滋賀県産の米だけを使用しています。
実はこの三上地区、1928年の昭和天皇大嘗祭に
献納する米を作るための悠紀祭田に選ばれた土地なんです!
昔から、野洲川の水の恵みで良質の米がとれる土地柄だったんですね。

自動製麹装置

この自動製麹装置はなんと300㎏の米が入ります。
2015年までは糀完成までの蒸し、種付け、発酵などの
15工程を全て手作業で行っていましたが、
2010年初頭に起こった爆発的な「塩こうじ」ブームなどの影響で
供給が追い付かず、機械化を思案。
糀の需要拡大に応えたいとの思いで申請した国の補助金制度に通り、
2016年から機械化に取り組みました。

機械米チェック

完成までに15工程ある糀作りですが、
自動製麹装置で初めの8工程までができてしまいます。
でも最後はやっぱり、長年の経験と勘。
豊彦さんの息子で5代目店主・山﨑吉輝さんが、
こうじ菌の付き具合を目で見て、
自動製麹装置からこうじ菌の付いた蒸し米を取り上げます。

解砕機

蒸し米が塊になっていると、うまくこうじ菌が入らない為、
解砕機を通して塊をほぐし、
まんべんなくこうじ菌が付くようにします。

ここから機械で完成していくものと、
昔ながらの製法を取り入れたものへと分かれていきます。

発酵機温度

こちらの発酵機では、こうじ菌が付いた大量の蒸し米の中に
付属の温度計を差し、温度を自動調整し発酵させて、糀を完成させます。

升盛り

そして、こちらが昔ながらの製法!
まず、升でこうじ菌の付いた蒸し米を木製の糀蓋に盛ります。

筋つけ

温度が上がりすぎないよう糀蓋に薄く広げ、
時間を経て空気に触れる表面積を増やすため筋をつけていきます。

室

これは豊彦さんの先代が作った室(むろ)です。
この室の中に、先ほどの糀蓋を積み上げて発酵させます。

室は外気が入って気温が下がらないよう入り口が狭くなっています。
中にはストーブが焚かれ、水をはった鍋を上に置くことで
室内の温度と湿度を調整し、発酵を促しています。
「昔は火鉢にやかんでしたよ」と豊彦さん。
時代を感じさせますねー

糀積み上げ

糀蓋が吉輝さんから豊彦さん、息子さんからお父さんへと
素早く手渡され、積み上げられていきます。
積み上げられた数、80数枚。
息の合った作業には無駄がありません!
場所によって温度の上りが違うため、4時間おきに2回、組み替えられ発酵。
最後に一晩放冷し、しっかり冷やしてようやく糀の完成です。

自慢の自家製糀を使った様々な商品

塩こうじ

モンゴル産の岩塩を使用した塩こうじと、
守山の『遠藤醤油』さんの醤油を使用した醤油こうじ。
どちらも肉、魚を漬け込むと肉質がやわらかくなり旨味が倍増!
そのまま調味料としても使える万能調味料です。

甘酒

米糀だけで作った甘酒に少量の塩を加えた上品な甘味の甘酒。
「飲む点滴」といわれ健康食としても人気です!

味噌

地元の大豆で作られた米こうじ味噌は、
大豆の2倍の量の糀を使用し、熟成後6ヶ月以上のもので深みがあります。
他に、黒豆独特のコクがある黒大豆味噌や
「滋賀県産水くぐり」という大豆を使用し、糀を3倍使用した
甘味のある白味噌なども人気。
また、自家製糀を使用した手作り味噌教室も好評です!

後世に伝えていきたい糀文化

木糀蓋

『糀屋吉右衛門』は1837年頃、
野洲市で山﨑吉右衛門が糀を作り始めて以来、
その製法が代々引き継がれてきました。
お店には今でも「天保11年製造」と記された糀蓋が残っています。

豊彦さん

「糀作りは重労働ですが、
『食べて感動した!手作りした味噌が本当に美味しかった!』と
喜びの声を聞くと励みになります。
糀作りはすでに、ほとんど息子に任せていますが、
これからも糀の素晴らしさを伝えていきたいです」と豊彦さん。

商品はオンラインでも販売中。
お店のホームページもぜひチェックしてみてください!

(写真・文 安部愛子)

記事を書いた人
安部愛子/滋賀県大津市出身・在住。びわ湖から唯一流れ出る川・瀬田川を身近に感じながら育ちました。大学進学を機に県外に出るも、びわ湖のない土地に窮屈さを感じ、びわ湖のありがたみを実感!
滋賀の地域情報紙記者を経て、現在は子と共に育ちながら滋賀の魅力を再発見しています。

『糀屋吉右衛門』を地図でみる

JR野洲駅より徒歩約25分

→大きい地図で見る

「糀屋吉右衛門」の店舗情報

住所
滋賀県野洲市三上1039(→地図
電話番号
077-587-0397
定休日
日曜日
営業時間
9:00~18:00
HP
https://kojiya-kichiuemon.jp
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