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過去をみて、未来を描く「あのとき、あの場所、わたしのくらし」。おうみ映像ラボ上映会をレポート

【美の滋賀Trip#6】

どこかで人知れず眠っている古い8ミリフィルムや16ミリフィルム。
その貴重な映像を一人でも多くの人に見てもらいたいと、
4人の女性で昔のフィルムの上映会を行う活動を続けている「おうみ映像ラボ」。

おうみ映像ラボメンバー

毎年恒例の上映会が12月9日に南草津フェリエ5階の
草津市民交流プラザ音楽室で行われました。
戦前・戦中・戦後の滋賀はどんな様子だったのか?
平成最後の師走に昭和を見に行って来ました。

戦争を生きた高岡堅太郎さんの人生

フィルム

1本目の映像は草津市の高岡さんのフィルム。
昨年、自宅の倉庫から偶然見つけだされたものだそう。

士官学校集合写真

そのフィルムには、昭和12年に23歳という若さで英霊となった
高岡堅太郎さんの村葬の様子が映し出されていました。

ゲスト

この日ゲストに来てくれたのは高岡堅太郎さんの甥にあたる方。
家族である高岡堅太郎さんの人生について語ってくれました。

高岡堅太郎さんは、草津市志津村で生まれました。
子どものころから秀才で、旧制の膳所中学校を飛び級で卒業。
陸軍士官学校に入学し、将校となりました。

その後、戦地である中国大陸へと向かいました。

フィルムの初めは出征の様子や、
大陸にわたる軍艦の船内の様子などが
映しだされていました。

見る人々2

めずらしい映像に食い入るように見入る人々。

いばさん2

さらに、時代背景などがよく理解できるよう
ゲストの滋賀県平和祈念館専門員の伊庭功さんの解説がはいりました。

日中戦争が勃発した直後、
中国と日本の戦闘はとても激しかったそうです。
高岡堅太郎さんは上海近くの羅店鎮とよばれる場所で
夜間巡回中に敵と遭遇。部下の伍長を報告のため本部に
戻したのち、敵陣に切り込み命を落としました。

人のための死とどこまでも続く長い葬列

当時は国のために亡くなった英霊は、
国で葬式をあげるというのが決まりだったため、
高岡堅太郎さんの葬儀も村葬となったそうです。

村葬3

その葬列は導師、遺族だけでなく膳所中学校の後輩、
割烹着を来た愛国婦人会の女性たちなど、
それはたくさんの人が行列を作り、
高岡堅太郎さんを見送った様子が映し出されていました。

村葬2

ゲストの高岡さんは映像を指さしながら、
「あそこが今セブンイレブンになってるところ」
「あそこは今……」と説明。

そう言われると、映像が他人事ではなく、
自分事のようにぐっと身近になってきます。

聴衆

思わず涙をこぼす人の姿も。

高岡堅太郎さんの父であり、
ゲストの祖父である倍太郎(ますたろう)さんは、
「堅太郎さんは人のために死んだ。誰かのために死んだんや」
と後年語っていたそうです。

手紙

高岡堅太郎さんの遺品の数々をみていると
取材陣も涙をこらえられませんでした。

今を生きるわたしたちがこの映像をみる意味は、
もう戦争をくり返さないということを、
もう一度かみしめるためかもしれません。

旧八日市国民学校の「輝かしい朝」

小学生

2本目のフィルムは
旧八日市国民学校の「輝かしい朝」という16ミリフィルムです。
当時の教員だった方が初等科教育研究会の発表用に作ったものだとか。
当時の小学生の様子がありありとわかります。

校庭で体操をしている様子、
授業を受けている様子、
遠足へ行って河原でおにぎりをほおばる様子、

伊庭さんによれば、まだ戦争の影響をそんなに受けておらず、
ゆとりのある時代の映像だそうです。

飛行場

ちなみに、八日市には昔飛行場があったと知っていましたか。
今は工場になっているところだそうですが、
1914年から1945年まで陸軍の飛行場がありました。

飛行機が飛ぶ

その飛行場から飛行機が飛び立つ映像があり、
「これはめずらしい」と滋賀県平和祈念館専門員の伊庭功さん。

「今、八日市の街ってわかりにくいでしょう?それは昔、
飛行場があったからなんですよ」と教えてくれました。

貴重な映像を通して
過去を知ることは未来を描くことでもあると
フィルムの中で生きる人が教えてくれている気がしました。

帰り際、こんな年配の女性に会いました。
「わたしは満州で生まれたんやけど、もしかしたら、
懐かしい満州の様子が最後に一目でも見られるかと思ってきました」

実際には満州の様子がわかるフィルムではなかったのですが、
おうみ映像ラボの方が
「みつかったらまた上映会をしますので、
ぜひFacebookページで日程を確認して上映会にきてください」
と声をかけていました。

ちらし

もし自宅に眠っているフィルムがあったら
「おうみ映像ラボ」へ。

修復が必要なフィルムは京都市の『株式会社 吉岡映像』さんが修復
そしてDVDへの復元を行っています。

吉岡さん2

代表の吉岡さんは
「むかしのフィルムをみんなでワイワイ見るのは本当に幸せ」
と語っていました。

誰かの心の中の思い出が、
映像になって映し出される。
それを見た人は心があたたかくなる。

おうみ映像ラボでは滋賀県下で、
心があたたかくなる上映会を行っています。

Facebookページをチェックして、近くで開催されるときがあれば、
ぜひ行ってみてはいかがでしょうか。

おうみ映像ラボFacebook

フィルムで“昭和”が蘇る、おうみ映像ラボ「フィルム映像上映会」が今週末に開催!

8mmフィルムに残る「昔の滋賀」江若鉄道や昭和初期の風景も登場した映像上映会をレポート

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