Interview

ウクライナ避難民をIT支援する18歳。滋賀出身の中井咲希さんにインタビュー

【ウクライナ避難民をIT支援/中井咲希(なかいさき)さんインタビュー】

滋賀で生まれ育ち、中学・高校も地元の滋賀。
この春、大学生になったばかりの18歳、中井咲希さんは
戦争に巻き込まれて、仕事を失ったウクライナの人々に、
日本からITの仕事を紹介するプロジェクトの中心を担っています。

4月から、コンサルタント会社「ネクストエージ」(大阪市)
の副社長も務める中井咲希さんに、
このプロジェクトにかける思いや、滋賀で培ったもの、
そして、新たな挑戦についても伺いました。

仕事を求めるウクライナの方々に応えたい

__具体的には、どのようなプロジェクトなのですか

中井さん:戦争が続いているウクライナでは、
仕事を失い、収入が途絶えたという方が多くいらっしゃいます。
そういう方に、IT関連の仕事を紹介させていただいています。

じつは、ウクライナはIT大国なんです。
パソコン1台あれば、日本からの仕事を受けてくださる方は結構おられます。


現地とオンラインでやりとりするIT支援の様子(写真提供 ネクストエージ)

__現地ウクライナの方々と直接やり取りをされた印象はどうですか

中井さん:一番に思うのは、ウクライナの方々の「タフさ」です。
家族と離ればなれになったり、毎晩のように警報がなったり。
でも、「家族を支えるために仕事をしたい」と口々におっしゃいます。

プロジェクトが始まって約1ヵ月。
すでにウクライナの方、4人に仕事を紹介していますし、
仕事を求める申し込みは、数十件。
いまは、「この思いにしっかり応えないと」と気を引き締めています。

何もかもが”はじめて”の毎日

__大学生さんとは思えないほど、しっかりされてますね。

中井さん:そ、そうですか?(笑)
大学生もこの春、なったばかりで、1ヵ月前は高校生でした。
高校も地元の滋賀県内だったので、
県外に通うというのも新鮮です。

じつは、私、アルバイトもしたことがなくて…。
社会に出て働くというのは今回が初めて。
初めてかかわる企業が、この仕事で、
しかも副社長だなんて数ヵ月前には、夢にも思いませんでした!


副社長として奮闘する中井さんの仕事の現場 (写真提供 ネクストエージ)

__何が、大抜擢につながったのでしょうか。

中井さん:私、人と会って話すのが好きなんです。
本を読むのも勉強になるけれど、
出会った方の生きた経験から学ぶことはすごく多いですよね。

「人との出会いがここまで自分を運んでくれた」
そんな風に思います。
さまざま活動をしてきた縁が、いまの会社につながっていますね。

ネットゲームが入口。独学でITを学びました

__中井さんは、どんな高校生だったのですか?

中井さん: いまはITにかかわっていますが、
じつは、もともと文系だったんです。
でも、インターネットゲームが好きで(笑)

そこから「メタバース」(ネット上の仮想空間)や、
アプリ開発なんかも興味を持って、独学で挑戦していました。

__独学で!?

中井さん:私は、ハマるととことん集中してしまうタイプで…。
10時間くらい、ぶっ通しでパソコンに向かったりもしますよ。
ネットにある情報を集めて、少しずつ学んでいった感じです。

__いや、すごい話です。普段は滋賀県内で遊んだりするのですか?

中井さん:んー、友だちとカフェに行ったりするのは京都が多いかもしれません。
県内でよく遊んだ場所は、正直に言うと、あんまり…。
あ!でもコワーキングスペースが多かったので、利用していましたよ。

高校生のときにビジネスコンテストに出場したのですが、
滋賀県守山市のコワーキングスペース「future lab(フューチャーラボ)」さんは、
そのときのチームメイトと、よく使っていました。

高3の夏休み、打ち込んだ滋賀のコンテスト

びわ湖ピッチ
守山市が市内の中・高・大学生を対象に開催するビジネスコンテスト「びわ湖ピッチ」(写真提供 一般社団法人インパクトラボ)

__ビジネスコンテストですか?

中井さん:はい。「びわ湖ピッチ」というコンテストで、
高3の夏休みは、ほぼそれに使いました(笑)
高校生5人のチームでアプリの開発モデルを発表して、
最優秀賞を頂くこともできました。

グローバドール
中井さんたちがチームで開発した「グローバドール」はビジネスコンテストで最優秀賞を受賞

__どんなアプリ開発を提案されたのでしょう。

中井さん:「グローバドール」というゲームアプリです。
海外経験の多いメンバーだったので、
異文化交流をバーチャルでできるアプリを提案しました。

__日本とウクライナ、異文化でのビジネスを成り立たせる基礎になっているようにも感じます。

中井さん:そうかもしれないですね!

あとは、そのチームリーダーをさせて頂いたのですが、
さまざまな選択肢からひとつの方向性を決めなければならなくて…。
そういう経験は、いまの成長につながっていると思います。


ビジネスコンテストに向けた打合せ風景。写真左中央が高校生の頃の中井さん (写真提供 一般社団法人インパクトラボ)

__コンテストなどは、同世代からの刺激もあったんではないでしょうか。

中井さん:それは、すごくありました。
それと同世代にかかわらず、
いろいろな方と話す機会に恵まれたのはありがたかったですね。

新たに「歌」のプロジェクトも


ウクライナ国歌を歌って動画データを販売し、売り上げを寄付するプロジェクト(写真提供 ネクストエージ)

__いま、別の新たな「支援」も模索されているとか。

中井さん:はい。多くの方にウクライナの国歌を歌って頂き、
その音声をNFT(※)として販売し、
売り上げを寄付するというプロジェクトです。

歌というつながりも感じられるし、
具体的な寄付金としても支援になると考えています。
協力者100人を目指して奮闘中です!
(※)編集部注/NFTとは、複製できないオリジナルの唯一の価値を与えられたデジタルデータのこと

目の前の興味あることに挑戦し続けたい

中井咲希さん

__大学生としても新生活。それにさまざまなプロジェクトも。大変だなあと思ったりはしないですか。

中井さん:毎日、あわただしくはありますが、
ウクライナ現地の方々とオンラインで顔を合わせると、
大変さも伝わってきて、私にできることは限られているけれど、
目の前の方たちの期待に応えないと、そのために頑張らないと、
と思っています。

__そんな中井さんの将来が気になります。

中井さん:将来の夢とかはまだわかりません。
いまは、目の前の興味あることに挑戦し続けようと思っています。

__応援しています!今日はありがとうございました。

中井さん:ありがとうございます!がんばります!

18歳とは思えない、しっかりとした姿勢に、思わずたじろぐ取材班。
まっすぐに語り掛けるまなざしが印象的でした。
中井さんのいまのプロジェクトもさることながら、
今後の挑戦にも目が離せません。

(取材・文:川島圭  編集:しがトコ編集部)

記事を書いた人
川島圭/滋賀県東近江市の若手農家。生まれは東京。北海道から沖縄までを転々とした後、慣れ親しんだ祖父母の家に流れ着き、新規就農しました。地域や文化に興味があり、農業体験宿泊などにも取り組んでいます。
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