【湖北野鳥センター/滋賀県長浜市】
双眼鏡の先に広がる景色は、
1000年以上前から変わらない琵琶湖の原風景。
ここは、“水鳥の楽園”とも呼ばれる、
滋賀県・奥琵琶湖エリア。
コハクチョウやカイツブリなど、四季を通じて様々な鳥たちが集う場所。
アイドルのように愛される“おばあちゃん”が、
毎年決まってが飛んでくることも?!
今回、そんな楽園の秘密を探りに、
NBCメンバーたちと一緒に『湖北野鳥センター』に行ってきました!
琵琶湖の原風景の中にある『湖北野鳥センター』

センターに足を踏み入れてまず目を奪われたのは、湖岸に広がる風景。
水の中から生えたアカメヤナギの木。
青々と茂るヨシ原。
まるで古代の地形をそのまま切り取ったような景色が目の前に広がります。
この場所は、滋賀県長浜市の琵琶湖岸にある『湖北野鳥センター』。
2階にある観察室には、望遠用や双眼鏡が湖に向けてあらかじめセットされています。

せっかくなので、試しにそっとレンズを覗いてみると……

いました!
鳥たちがのんびりくつろいでいます。
これは、岸辺で羽を休めるカワウだそうです。
このエリアは、約2kmにわたる湖岸を「湖北水鳥公園」として整備されており、
水鳥の保護・自然環境保全の拠点でもあります。
人や船の立ち入りが制限されているおかげで、遠浅の湖には水生植物が繁茂。
魚たちの産卵場所としても最適で、鳥たちにとってはまさに“食べ放題の楽園”だそう!
ここでは、滋賀県内で観測された約70%の野鳥を見ることができます。
双眼鏡ひとつで広がる水鳥の世界

この日、観察できたのはカワウやカモなど。
初夏には「ケケス、ケケス」と鳴くオオヨシキリの声が響き、
冬には白銀の使者・コハクチョウたちが一斉に舞い降ります。
どんな鳥が見られるかは日によって違いますが、
今見られる鳥の情報は観察室内の掲示板で一目瞭然。

望遠鏡の使い方がわからなかったり、目当ての鳥が見つからなかったりといった場合は、スタッフの方々に尋ねると対応していただけるので、初心者でも安心して観察を楽しめます。
しかも、望遠鏡には写真撮影に対応しているものもあり、自分が見た水鳥たちの姿をスマホのカメラなどで記録に残すことができます。

建物の横には、”あの鳥”の顔がモチーフのセンターが!?
湖北野鳥センターのすぐ隣には、もうひとつの施設があります。
それが『琵琶湖水鳥・湿地センター』。
館内では、湖で暮らす鳥たちのライブ映像をリアルタイムで視聴できたり、
琵琶湖の環境や生き物たちに関する資料展示もじっくり楽しめます。

じつはこの建物、外観にも注目です。
遠くから見ると……なんだか“顔”みたい?

その正体は、カイツブリ!
ご存じない方もいるかもしれませんが、滋賀県の県鳥でもあり、
琵琶湖に数多く棲んでる水鳥です。
とても目立つので、センターを訪れる際はいい目印になりそうですね。
みんなのアイドル!「山本山のおばあちゃん」

センターでは、珍しい鳥と出会えることもしばしば。
たとえば、絶滅危惧種のオオヒシクイなど。
でも、その中でも特別な存在がいます。
それが「山本山のおばあちゃん」と呼ばれる、1羽のオオワシ。

(撮影:@necobutaz)
毎年、冬になるとロシアからはるばる飛来し、センター近くの山本山で冬を越すオオワシ。
本来の越冬地からはるか南に離れた滋賀でオオワシを見られることは、とても珍しいこと。
その姿をひと目見ようと、越冬シーズンになると、県内外から人が押し寄せ、カメラを向けます。
まさに“野鳥界のアイドル”と言っても過言ではない存在なんですよ。
年齢は推定30歳以上。
2025年時点で28年連続となるおばあちゃんの飛来は、毎年ニュースになるほどの湖北の風物詩となっています。
千年以上前から守られてきた、琵琶湖の原風景
鳥たちが羽を休めるこの静かな湖畔。
実はこの風景、1000年以上前から大きく変わっていないのだそうです。
……と聞いても、にわかには信じがたいですよね。
その理由を知るべく、センターの所長・植田潤さんに伺ってみました。

「墾田永年私財法の頃からですね」
突然、社会科の授業で聞いた懐かしい単語が飛び出してきました。
学校で習った気がしますが、それと、この楽園は何の関係が?
「この場所は魚がよく集まる“漁場”として、地元の人たちにとってはとても重要な場所だったんです。
743年に墾田永年私財法が出され、開墾した土地が自分のものになる法律ができたときも、豊かな漁場だったので、あえて開墾されなかったと言われています」
つまり、開墾しないことで、”人間の手で守った自然”だったというわけです。
何気なく望遠鏡で覗いていたこの景色は、ただの湖ではなく、人々の営みによって意図的に残されてきた原風景だったのです。
かつては琵琶湖全体に広がっていたというこの風景も、
開発によって少しずつ姿を消していきました。
それでも、この場所だけは守られてきた。
理由は、“自然”と“暮らし”が分かちがたく結びついていたから。

たとえば、今では滋賀の生活を支える道となった、
湖岸道路の計画が持ち上がったときも、
この岸を埋め立てる案が出されたこともあったそう。
しかし、豊かな漁場であり、暮らしの重要なエリアでもあったため、
住民たちは猛反対。
その結果、湖岸道路は大きく迂回する形になり、この風景が守られたそうです。
これからも、この景色を守っていくために

とはいえ、楽園の景色が永遠にこのままだとは限りません。
琵琶湖に棲む生き物の数は、年々少なくなっているといいます。
実際に、湖北野鳥センターで観察できる水鳥の数も、20年前と比べて約10分の1ほどに。
──どうすれば、かつてのような豊かな自然が戻ってくるのでしょうか。
「うーん、それは難しいと思いますね」
そう語ってくれたのは、所長の植田潤さん。
「私たちは、もう昔の暮らしには戻れません。
シャワーも浴びるし、洗濯もする。
使った水は下水処理を経て、やがて琵琶湖に戻っていきます。
でも、それが生き物にとって“いい水”なのかは、正直わかりません」
下水処理では塩素などで消毒が行われ、
人間にとっては“きれいな水”に変わります。
でも、それは自然にとっても“正解”とは限らないのです。
じゃあ、どうすればいいんでしょうか?
「まずは、“知る”ことだと思います」
植田さんは、静かにそう答えました。
「たとえば、道ばたに生えていた草が、
実は絶滅危惧種だと知ったとしたら──
次からは、ちょっと気をつけて歩くようになると思うんです。
その“気づき”が、小さな変化を生む。
知ることが、進歩なんです」

1000年前と同じ風景を、今、私たちは見ています。
でもそれは、ずっと守り続けてくれた人たちがいたからこそ。
そして、これからも守っていこうとする人たちがいるから。
双眼鏡の向こうに広がる原風景は、
私たちにとっても“知らなかった琵琶湖”との出会いでした。
ぜひ一度、湖北野鳥センターを訪れて、
知らなかった琵琶湖や水鳥の世界を望遠鏡で覗きにきてみませんか。
(文・結城弘/写真・しがトコ編集部、NBC/編集・林正隆)
- 記事を書いた人
- 結城弘/滋賀県出身。小説家・ライター。滋賀が舞台として登場する小説『二十世紀電氣目録』『モボモガ』を執筆。趣味は旅行、レトロ建築巡り、ご当地マグネット集め、地酒。noteにて旅ブログなどを更新中。各SNS⇒ X(旧Twitter)/ Instagram
『湖北野鳥センター』の施設詳細
- 住所
- 滋賀県長浜市湖北町今西
- 営業時間
- 9:00~16:30
- 定休日
- 毎週火曜日(火曜日が祝日の場合次の日)
年末年始(12月29日~1月3日)※2025年10月23日まで、内装リニューアルのため休館中です - 入館料
- 大人(高校生以上)300円 小・中学生100円(幼児無料)
長浜市内の小中学生は無料 - 電話番号
- 0749-79-1289
- 公式サイト
- http://www.biwa.ne.jp/nio/index.html












