カルチャー

「漁師ほどおもしろい仕事はない」新しい文化を作る琵琶湖の漁師中村清作の挑戦【琵琶湖の漁師#02】

【琵琶湖の漁師シリーズ #02】

滋賀に住む人は琵琶湖のことを「うみ」といいます。
それほど琵琶湖は身近で
昔から、人々に豊かな恵みを与えてくれました。
鮒ずしに使う鮒をはじめ、ビワマス、鮎、鮴(ごり)など、
琵琶湖で獲れる魚は固有種含め、50種近く。
でも、最近は外来魚や異常気象の影響で漁獲高が減っているとも耳にします。
実際はどうなのでしょうか?いつも食べている琵琶湖の魚のこと、
ちゃんと知っておきたい!そんな思いを胸に、
今回は滋賀県漁業協同組合連合青年会の
中村清作さんを訪ね、お話を聞いてきました。

海津漁港にある仕事場を訪ねて

海津漁港
風や波から人々を守るために造られた石垣が残る古い町並み。
すぐそこまで琵琶湖が迫る、高島市マキノ町海津。

道端のネコ
道の真ん中で、うずくまったまま、
まだ眠たそうにじっと目をつぶる猫の姿と、停泊する船。
漁村ならではの独特の空気が流れています。

中村さんと待ち合わせ
そんなノスタルジックな町、海津の早朝。
中村清作さんと待ち合わせて
仕事場があるという海津漁港に向かいました。

中村さんと歩く
中村清作さんは、海津生まれ海津育ち。
お祖父さんの代から琵琶湖の漁師で、
会社員を経て、20歳のときに漁師となりました。

仕事場
中村家は昔から鮒寿司を作るニゴロブナ、ニゴイを主に獲っていましたが、
だんたんと、獲れる魚の数が減ってしまい、
鮎漁をメインに生計を立てていると言います。

せいさくさん語る
ところが、昨年の台風21号以降、急激に魚や貝が減り、
「鮎の獲れる数も減ってしまった」と話す中村さん。
なぜ減ったのか?その理由は、わかっていません。

桟橋

台風でたくさんの船も沈みました。中村清作さんの船も例外ではなく、
すぐ引き揚げ修理に出しましたが、
4カ月たった今も船は戻ってきていません。
今はお父さんの船を交代で使っているとか。

せいさくさん横顔
「あの台風で漁にでるのをやめた人もいるんですよ」と中村さん。
「でも嘆いてばかりもいられないですしね。
 何か新しい売り方を考えないといけない」。

そう言って、この日は海津漁港にある仕事場で
新しい売り方を試行錯誤する、
中村清作さんの普段の姿を私たちに見せてくれました。

伝統を守りながらも新しい文化をつくるために

ハス
「今の漁師は釣るだけじゃなくて、
魚の食べ方の提案もしていかないといけないんです」
そう言って、そのままでは売り物にならないという
小さなハスの一夜干しを作っていました。

「一夜干し?」
この日の取材陣は全員滋賀出身。
だけど、琵琶湖の魚の一夜干しというのは、
あまり聞きなれないので、戸惑いました。

そんな取材陣に中村さんは
ハスの一夜干しを焼きながらこう話してくれました。

せいさくさん魚焼く

「滋賀県の魚の食べ方は、昔から佃煮か馴れずし。
それ以外は売れないからダメだと思われているんですよね。
たしかに、今まではそれで食べていけた。
だけど、これからはそれだけじゃ無理でしょう?」

そんな時に、海の漁村はどうしているのかと、
現地まで足を運び、学びに行ったと話す中村さん。

「海の漁師のおかあさんは息子のとってきた魚で、
売れそうにないものを加工するんです。
一夜干しにしたり塩辛にしたりね。
滋賀県にはそういう文化があんまりないから、
すごくもったいない魚がたくさんあるんですよ」

ハス一夜干し

中村さんの話を聞きながら、食べたハスの一夜干しはふっくらとして、
口当たりもいい。ほんのりといい具合に塩がきいていて、
ご飯のお供としても、お酒のアテとしてもいける!

笑顔の中村さん
「おいしいでしょう?」と笑顔の中村さん。
海や川、そして湖。
漁師のいるところには自分で出向いて、
魚の食べ方を研究する日々。
伝統を守りながらも新しい文化をつくるために
試行錯誤する毎日だと話します。

淡水魚の美味しさを広めるための、数々の挑戦

漁港

中村さんの逆境にもめげず、新しいものに果敢に取り組んでいく姿勢は
仕事をする人なら見習うべきところ。そう伝えると、
「いやあ、遊んでるだけですよ」と笑う中村さん。

「でも、漁師ほどおもしろい仕事はないと思っているんです。
もちろん自然相手で大変なところはあるけど、自由に何にでも挑戦できますからね」

自由だということは、裏を返せば、
自分で自分を律していかなければいけないということ。

中村さん笑顔
ルールの中で、縛られてやるよりも、
もっと厳しい世界に身をおいて、たゆまぬ努力を続けているんだな……
そう思わせる反面、努力を努力と思わず、おもしろがってやっているところがあって、
自然と応援したくなる人柄も魅力の中村さん。

「そういえば、悔しい経験があったんですよ」と、
県外で琵琶湖の魚をPRした時のことを教えてくれました。

「琵琶湖の魚、美味しいですよ!と宣伝しても、
川魚というだけで、敬遠されてしまう。
旬の時期の川魚は本当においしいのに…。
悔しかったですね」。

そこで、淡水魚のイメージアップを狙うため、
2016年、消費者に魚の美味しさを広げるためのイベント
「フィッシュワングランプリ」に出場しました。
年に1回東京で行われ、投票でグランプリが決まります。

JF滋賀漁連青年会として満を持して「天然ビワマスの親子丼」を出品。
その結果、見事グランプリを獲得!
淡水魚であるビワマスの美味しさを全国に知らしめることができました。

メニュー
また、地元でも外食チェーンのココ壱番屋とコラボして
「マジカフライカレー」というメニューを世に送り出しました。

「マジカ」というのは淡水魚の「ニゴイ」のことをさす滋賀の方言です。
そのマジカのフライがのっかっているのが「マジカフライカレー」で、
滋賀にあるココ壱番屋の4店舗限定メニューです。

マジカ
実は、このメニュー開発にも中村さんが関わりました。

はじまりは京都の居酒屋でした。
「琵琶湖のニゴイ、どうしたらおいしく食べてもらえるかな」
と、その居酒屋の大将に相談したそう。

ニゴイは網にかかるけれど、鮮度の落ちが早く、
骨も多いため市場にはほとんど出回っていません。いわば「厄介者」

それが売れる魚になればいいなと考える中村さんがふとつぶやいた一言でした。
すると、大将は「骨が多いんやったら、はもみたいに骨切ったらいいやんか」と提案。
その提案に中村さんは驚きを隠せなかったといいます。

「そもそも琵琶湖には骨切ってハモ食べる文化なんてないですからね。
実際に、大将に骨きりしてもらったら、うまいんですよ!これが!」

鮮度については、船の上で血抜きをし、内臓をとりだして氷締めすることでクリア。
刺身でも食べられるほどの鮮度を保つことに成功しました。

早速、骨切りしたニゴイをココ壱番屋へ。

そこからは話はとんとん拍子に進み、「マジカフライカレー」が誕生しました。
衣はサクサク白身はふっくらとして、臭みもなくおいしいと評判だそうですよ。

漁で生活するみんなが、漁で豊かに暮らせるように

せいさくさんアップ2

「フィッシュワングランプリにしても、マジカフライカレーにしても、
みんなの仕事、みんなのお金にならないと意味がない」と中村さん。

実は今琵琶湖全体の漁獲高の半分は「鮎」
でも、「鮎」が獲れなくなってしまったら……
そう考えると、漁師はみんな共倒れになってしまう。
そして、近年の異常気象を考えると、
それは起こりうる事態なのでは?

「そうなったときに慌てていても遅い。
琵琶湖にはまだまだ資源がある。
おいしい魚の新しい食べ方をどんどん広めて、
琵琶湖の漁で生活する人が豊かになっていけるように」

せいさくさん後姿
そう語る中村さんの眼差しには、
「自分たち漁師の未来は、漁師でつくる」という
これからを見すえた覚悟のような、
凛とした力強さが宿っていました。
この先も、琵琶湖と生きる。
琵琶湖の漁師、中村清作さんの挑戦はまだまだ続きます。

(取材:若林佐恵里 /写真:しがトコ編集部 /企画・編集 しがトコ編集部)

琵琶湖の漁師シリーズはこちらから

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