カフェ・お店

賤ケ岳の山麓から滋賀の食と文化を発信する古民家カフェ『丘峰喫茶店』(能美舎)

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【丘峰喫茶店(きゅうほうきっさてん)/滋賀県長浜市】

「丘峰喫茶店」と名付けられたその場所は、
築350年の古民家を改装したレトロでノスタルジックな空間。
同時にここは、「能美舎(のうびしゃ)」という名の
小さな出版社でもあります。
長浜市の最北部・木之本町大音(おおと)地区。
七本槍で知られる賤ケ岳の山麓にあるのどかな集落、
琵琶湖の北の端からきらりと光る滋賀の文化を発信しています。

廃屋から生まれ変わった古民家「源左」

お店の入り口で来客を迎えてくれるのは、
「丘峰」と染め抜かれた生成りの麻のれん。

時折、風に揺れる様子はとても涼し気で、
なんだか田舎のおばあちゃんちに来たような
懐かしさでいっぱいになります。

目印は家の前にある柿の木。
堂々としたたたずまいの古民家には「源左(げんざ)」と
いう屋号がついていました。
住む人もなくなり、朽ちるのを待つばかりだった「源左」でしたが、
ある大工さんがその立派な梁(はり)に惚れ込み、
地元の人々の協力の下、現在の姿に改修。

地元の女性たちの活動の拠点として使われるようになった
「源左」を引き継ぐ形で、2017年「丘峰喫茶店」が誕生。
人々が暮らしを営む場所として本来の役割を取り戻しました。

古民家の良さをふんだんに生かした、ゆったりとくつろげる空間

カフェスペースではジャズが静かに流れ、
天井から吊り下げられた丸い和紙のライトが優しい光を投げかけています。

外を仰ぎ見れば、青空の彼方にそびえるのは、滋賀県最高峰の伊吹山。
秋には黄金色の稲穂が波打つ近江盆地を眺めることができます。

カフェに続く居間にはたくさんの本や漫画が並び、
まるでプライベート図書館のよう。
本好きにはたまらない空間です。
展示されているアコースティックギターやウクレレは
オーナー森下諒平さんの作品。
ここは諒平さんの工房兼ギャラリーでもあります。

土間はギャラリーになっていて、先ごろ「能美舎」から発刊された
『はじめてのびわこの魚』が展示されていました。

同書は黒川琉伊(くろかわ るい)さんという
大津市在住の中学3年生が書いたもの。

2歳の時から琵琶湖に4000日以上通い続けた琉衣さんが描く
琵琶湖の生き物たちはどれも色鮮やかで、
生き生きとした生命力にあふれています。
本の横では実際に琵琶湖の淡水魚が飼育されています。

手作りの発酵食はフルーティで、味や香りもまろやか

「丘峰喫茶店」の食材は四季折々の地元で採れる野菜や、
琵琶湖の漁師さんから仕入れた湖の恵みなど、
人の手の温もりや大音の風土が感じられるものばかり。

この日、いただいたランチは季節の御膳。
ハンバーグ牛すじトマト煮込みに季節の野菜がたっぷり入ったすまし汁。
3種の小鉢は夏野菜のだし漬けにトウモロコシ豆腐、
ゴーヤとピーマンとじゃこの炊いたん(炊いたもの)。

丘峰喫茶店ふなずし

こちらは熟鮨(なれずし)の御膳(鮒ずしとビワマスのこけら鮨)。
滋賀の郷土食として有名な鮒ずしですが、独特の香りが苦手という人も。
「丘峰喫茶店」の鮒ずしはとてもフルーティで、
ご飯はチーズリゾットのよう。初心者にも食べやすい逸品です。

福井県の伝統食として有名な、「へしこ」もメニューに並んでいました。
有名なのが鯖(さば)のへしこですが、
滋賀では鯖の代わりに鮎も使い、
こちらでは塩と糠(ぬか)で漬けあがった鮎をご飯で漬け直すのだそう。
そうすることで塩がいい塩梅(あんばい)に抜けて、
まろやかで甘味のあるへしこが出来上がります。
滋賀大学名誉教授で、
「滋賀の食事文化研究会」堀越昌子先生に習ったそう。

デザートにはイチゴのレアチーズケーキと
自家製梅ジュースのソーダ割をいただきました。

昔から大切に守られた信仰の里

「丘峰喫茶店」があるのは、
長浜市の最北部・木之本町大音(おおと)地区。
賤ケ岳の山麓にあるのどかな集落です。

8月半ばに訪れた大音は、
屏風のようにそそり立つ深緑の賤ケ岳を背にして、
うとうととまどろんでいるかのようでした。

標高421mの賤ケ岳は大音からリフトで登ることができ、
南に琵琶湖、北には羽衣伝説などで知られる
余呉湖(よごこ)が一望できる絶景が楽しめます。

飛鳥時代から人が住んでいたという大音には神社やお寺も多く、
古くからの深い信仰を感じられる地でもあります。

湖北随一の名社とされる伊香具(いかぐ)神社や、
かつて比叡山の魔除けとして建てられたお寺・浄妙寺(じょうみょうじ)の
山門跡には「大日如来堂(だいにちにょらいどう)」が建てられるなど
その信仰が大切に守られています。

滋賀に来て変わった、豊かさのものさし

「丘峰喫茶店」の店主は、2016年に大音地区に移住してきた
森下諒平(もりした りょうへい)さんと
堀江昌史(ほりえ まさみ)さん。

大音での暮らしを、昌史さんは「歳時記のような里山の暮らし」と表現します。

「以前は新聞記者として働き、
刻々と変化する情勢の中に身を置いていました。
情報やテクノロジーに置いていかれないように、
自分自身を常にアップデートしていました。
でも、そういう暮らしはとてもしんどいことに気がついたのです」

「大音では目に見える景色や人々の暮らしは
何百年前とほとんど変わりません。
それは地域の人々が田畑を手放さなかったから。
ずっと変わらないであり続けることに良さがあり、
歳時記のような里山の暮らしの中に豊かさの源があります」

「丘峰喫茶店」の「丘峰」は、もともと昌史さんのお父さんが
東京の上野で経営しておられた会社の屋号なのだそう。

「上野の山は比叡山、不忍池(しのばずのいけ)は
琵琶湖を模したものといわれています。
琵琶湖のそばでカフェをやることになったのも、
父の会社の屋号を復活できたのも、私にとってはとても嬉しいことです」

諒平さんは建築にも携わるようになり、
昌史さんはカフェの女将のかたわら、取材や執筆、
本づくりに忙しい毎日です。

時折、仕事を終えた地域の人々がカフェを訪れ、
休憩しながら話に花が咲くことも…

日々の暮らしを縦糸に、四季折々の変化を横糸に紡ぎながら
二人が織り上げる里山の暮らしが、訪れる人々を温かく包んでくれる。
滋賀にはそんなカフェがあります。

(写真・文 松島頼子

記事を書いた人
松島頼子/岐阜県在住で、限りなく滋賀に近い所に住んでいる、滋賀と琵琶湖が大好きなフリーライター。先祖は滋賀から岐阜に移ったらしい。夏よりもどちらかといえば冬が好き。湖北の冬を取材したい。紙のお仕事もしてます。

「丘峰喫茶店」を地図でみる

「丘峰喫茶店」の店舗情報

住所
滋賀県長浜市木之本町大音1017 
電話番号
080-2079-4692
営業時間
11:00~17:00/土日月
公式サイト
https://www.kyuhokissaten.com/
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