カルチャー

この風景を守るために。滋賀の最奥地、24歳の若手農家が目指す“環境に優しい米づくり”とは?

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【ファームひらい/(滋賀県高島市)】

小さい頃から変わらない、この田園風景を守りたい。
「近江米」(おうみまい)の愛称で知られる米どころ、
滋賀県の最奥地に、米づくりに情熱を注ぐ若手農家がいます。
自然環境に影響しない“優しい米づくり”を実践する
24歳の平井さんが目指す未来とは?
農業への熱い思いを聞きました。

春には冷たく澄んだ雪解け水がそそぐ、お米の名産地

やってきたのは、滋賀県高島市上古賀(かみこが)。
福井県との県境に連なる山々がすぐそばに迫り、
市内のマキノや朽木などとともに、
「滋賀の最奥地」とも言える地域です。

ここは県内でも有名なお米の名産地。
昼と夜の寒暖差が大きく、
春には冷たく澄んだ雪解け水が注ぎます。

この地でもっとも広い田んぼ、32ha(ヘクタール)を
「ファームひらい」を親子二代で管理しています。
甲子園球場にして8個分という広さです。

「大阪のお米屋さんでも、
『ええ米や』って言ってもらえるんです」。

生産したお米を、いつくしむように語る
「ファームひらい」の平井翔さん。

コシヒカリを中心にした15haのお米には特にこだわりがあり、
65~75点が標準とされる、お米の食味値では、
「最低でも85、90以上が目標」と言い切ります。

味の評判は、口コミや個人的なつながりで広がり、
個人宅で100~150戸と、大口の顧客も合わせると、
とれるお米はすべて、直接販売で売り切れてしまいます。

平井さんは、『上古賀』という、
産地のブランドがあるから、と話します。

「僕というより、『昔の人が頑張ってくれた』
という方が、大きいと思うんですよ」。

しかし、名産地ならではの苦労もあるといいます。

「田んぼに入ってくる雪解け水がめっちゃ冷たい。
だからこそ、お米が美味しくなるんですが、
逆にとれるお米の量は少なくなります」。

でも、無理やり収穫量を増やそうとするよりも、
あくまで量より質、が平井さんのこだわり。

「美味しいって買ってくれるなら、それをつくりたい。
それで大きな赤字になっているわけではなくて、
幸い、事業は続けられるので」。

昔からの夢だった、農家の道へ

平井さんが、就農したのは5年前。
代々農家ですが、父の下につくのではなく、
経営を別々に、独立した農家として奮闘しています。

農家は昔からの夢だったという平井さん。

「ちっちゃい頃から、将来の夢は?って聞かれると、
農業と、おじいちゃんと父が大工だったので、大工って」。

「でも、木工が全然だめで(笑)。
中学校の技術の授業でつくった木箱を
おじいちゃんに見せたら『これは無理や』と。
あと、高いところも苦手だったので」。

3、4歳の頃には、父が運転するトラクターに乗っていました。

「足が届かなかったのを覚えています。
でも小学生になったら届いていました。
父も『これでなんでも乗れるな』って」。

「ここらは遊ぶといっても、あるのはグラウンドくらい。
なんにもなかったので、農業に夢中でしたね。
みんなが田植えしているなら、自分もって。
機械に乗るのも楽しかった」。

それでも、農業を仕事にすることには、
家族も最初は、後ろ向きだったと言います。

「職業となると、親は『やめとけ』と。
農業は儲からへん、経営が苦しい年もあるからと」。

「でも、高校卒業後、農業大学校に行くかという話になって、
どうしようかなって悩んだのですが、
僕は、やっぱり農業の道に進みたいって」。

やった分だけ返ってくる、農業のおもしろさ

県内の農業大学校で学んだ後、まっすぐ地元に戻りました。

そして、すぐに実践に。

「でも、1年目はちょっと考えが甘かった。
お米の面積は、今よりだいぶ少なかったんですが、
他の作業もあって、田植えが7月までかかって。
近所の先輩農家さんに、ボロカス叱られた(笑)。

言われた通りにしておけばいい、って思ってたんですね。
2年目からはそれではあかんと思って、
面積が増えても、6月上旬には田植えも終えています」。

「僕は、農業は天職やと思ってて。
やめたいって思ったことは農業ではありません。
まあ、一緒にやっている親父と意見が合わなくて…
なんてことはありますが、
農業のこれが嫌で、みたいなことは一切ないですね」。

農業を語る平井さんの目が輝きます。

「何より楽しいんですよ。
それは、暑い中、肥料まいたりキツイことはある。
でも、田んぼによって穂の長さが違うとか、
葉っぱの色が違うとか、変わってきたとか…。
なんでかな、って考えだしたら、楽しくて」。

「自分でやったことが、その分、返ってくるんです。
手を加えて、頭つかって、取り組んだものは、
しっかりとしたものが返ってくる。
農業の一番の良さ、かなって思います」。

環境に優しい農業へ、あらたな挑戦


そんな平井さんが最近、
強く意識しているのが自然環境のことです。

滋賀県は、環境に優しい農業が全国でもっとも進んだ県。
平井さんの父も長く「環境こだわり栽培」をしてきました。

「正直、僕は、化学肥料入れたら米もたくさんとれるし
何が悪いんかな、って思ってきたんですよ。
でも最近、納得した話ですが、
化学肥料でつくると、植物が二酸化炭素を吸収するより
温室効果ガスを出す方が多くなると。
米作ってる方が環境に悪いって。さすがにそれは…」。

直接販売が多い平井さん。
お客さんの関心も高まっているといいます。

「お客さんも、自分の身体のこともそうやけど、
自然環境を壊していないか、
例えばミツバチに影響するものを使っていないか、
そういう自然への影響を気にされる方が多いですね」。

そんな中、今年になって始めたのがオーガニック栽培。
化学肥料を使わないという挑戦です。

滋賀県が開発した新品種を植えて、
生育状況を注意深く見守っています。

「いいお米で、しかも環境を壊していません、
となれば、手に取ってもらいやすくなるかと」

「なんでもそうですが、
やってもいないのに否定はしたくないですね。
とりあえず、なんでもやってみたい、取り組んでみたい。
そう思っているんです」。

小さい頃から変わらない、この田園風景を守りたい


平井さんの環境を思う気持ちの源は、
地域への強い思いにあるのかもしれません。

「ここの近所の農家は、田んぼの周りの草刈りに
農薬を使わないんですよ。それが昔からの伝統。
暑い夏も、3週間に1度は草刈りしないと、っていう。

だから、誰が見ても、きれいやな、めっちゃええとこ、
いい田園風景やなあって言ってくれる。
僕は、このちっちゃい頃から見ている風景を変えたくない」。

この5年でも近所で、高齢を理由に5件の農家がリタイア。
ことは決して容易ではありません。
しかし、その度に、平井さんはその田んぼを引き継いでいます。

80haという広大な農地を、これからも美しく保ちたい。
「これはブレない目標」と話す平井さん。

「古臭い考えかもしれないけど、
この風景は守っていきたいな」。

(取材・文:川島圭  編集:しがトコ編集部)

記事を書いた人
川島圭/滋賀県東近江市の若手農家。生まれは東京。北海道から沖縄までを転々とした後、慣れ親しんだ祖父母の地で、新規就農しました。地域や文化に興味があり、農業体験宿泊などにも取り組んでいます。

「ファームひらい」を地図でみる

道の駅「藤樹の里あどがわ」から車で約15分

「ファームひらい」の情報

住所
滋賀県高島市安曇川町上古賀
電話番号
0740-33-0885
公式サイト
https://farm-hirai.com/
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