カルチャー

多賀の山奥で見つかった“ビンテージ・ボロ”を未来へ残す『山行きBOKKO』のプロジェクト

河川敷で干されるぼっこ

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激しく使い込まれた藍染めが、
擦り切れ、そして布を当てて修理されながら、
しかし、アートのような輝きを放ちます。

これは、地元の人たちが
「ぼっこ」と呼んでいた衣服。
山での仕事をするときに着ていたため、
「山行きぼっこ」と言われています。

滋賀県多賀町の山村の蔵で、偶然にも大量に見つかり、
その質の高さと数量、そして美しさから、
いま、にわかに注目を集め始めています。

尊い仕事、丁寧な暮らし

「山行きぼっこ」が見つかったのは、
滋賀県多賀町の山奥にある山村。

林業や炭焼きなどが盛んだったこの場所では、
山での仕事が何代にもわたり脈々と続けられてきました。

2018年の台風による被害と老朽化により、
蔵を解体することになり、中を整理していたところ、
つぎはぎだらけの布でつくられた包みの中から
大量の衣類や布切れが見つかりました。

この風呂敷の中から出てきたものこそ「山行きぼっこ」。
偶然にも発見された“山の作業着”です。

はじめは何か分からなかった布切れを、
プロジェクトの発起人・澤田順子さんがSNSにアップしたところ、
大きな反響があり、貴重なものということが分かります。

海外では「ビンテージ・ボロ」と呼ばれ、
高値で取引されることもある、一点ものの古着。
その貴重なものを後世に伝えていくために、
『近江多賀 山行きBOKKO』として、活動が始まりました。

集合写真

こちらは、蔵で見つかった物を分類するために
ずらりと並べたところを撮影した一枚。
中には子どもの服もあり、当時の暮らしや環境が
ありありと伝わる、貴重な品々です。

河川敷で干されるぼっこ

この衣服を、できる限りよい状態で保管するため、
水道水ではなく当時と同じ環境である
川の水で手洗いし、干していく。

河川敷で干されるぼっこ3

布たちが山で活躍していたころも、
幾度となく洗われ、干され、
そして、人々の生活を支えてきたのでしょう。

布の端切れををつぎ足して作った風呂敷が、
当時貴重だった布を大切に使い続けていた様子を伝えます。

ひとつとして同じものがなく、使うたびに姿を変える。
物を大切にする暮らしが生み出した「美」が感じられます。

野良着とはちがう。そんなにヤワやない。

ぼっこのアップ

作業着といえば「野良着」という言葉がありますが、
そう呼ぶと地元の人たちからは
「そんなにヤワなもんやない」と返ってきます。

虫よけ・マムシ除けになるとも言われる本藍染の布を使い、
過酷な山仕事で擦り切れた部分は、裏からあて布で補強します。

破れても破れても、何度でも直し、また「ぼっこ」を着て山に入る。
幾重にも重なった布からは、
多賀の山で暮らす人が持つ、山仕事への強くたしかな誇りが感じられます。

ぼっこ裏側

上着を裏返すと、美しい針仕事があらわれます。
表側ではなく、裏から布をあてて補強するのも
「ぼっこ」の特徴。

虫を寄せつけず、生地を丈夫にする藍染をほどこし、
針仕事で布を重ねることで、防寒にも役立つ。

既製品を着て山に入っても、
汗も吸わず、動きづらくて仕事がしにくいため、
結局は「ぼっこ」に戻るという、優れものでした。

過酷な山仕事を支えた「ぼっこ」

背負子をせおう女性

「ぼっこ」の年代はさまざまで、
明治から大正、古いものは江戸後期のものと
推察されるものも含まれます。

戦争でガスや石油が不足し、
国内の燃料は木材で補っていた時代、
多賀の山では炭をつくり、都市部へ運んでいました。
女性でも30kgの荷物を運んでいたそう。

背中が擦れているぼっこ

当時の仕事の過酷さは「背中」にあらわれます。
「背負子(しょいこ)」と呼ばれるカゴを背負うため、
特に肩と腰のあたりの摩耗が見てとれます。

裏から布を当てて補強し、代々着続けられた「ぼっこ」。
山仕事で布が破れるたびに、下から新しい布が顔を出し、
独特の表情がうまれます。

いっさいを無駄にせず、直し、使い続ける。
究極のSDGsともいえる営みがあったことを
「ぼっこ」は教えてくれます。

多賀の木でつくられた会場でおこなわれた展示会

展示会

2022年、「第50回全国林業後継者大会しが2022」の関連行事で
「山行きBOKKO」の展示がおこなわれました。

会場となったのは多賀町の木材がふんだんに使って建てられた
「多賀結いの森」。
木の床や梁に「ぼっこ」がずらりと並びました。

展示会2

かつての仕事場・多賀の山の木々に
囲まれた「ぼっこ」たち。

見どころはもちろん、背中の擦れと裏地。
意図したデザインでは決して真似できない、
使い、直し、受け継いできたことで生まれる
唯一無二の美しさがにじみ出ます。

展示会パネル

パネルには、当時の人々の様子が
詳しく展示されています。

「山仕事は、何十年も先の未来を見つめる仕事。
木を植えることで土砂災害をふせぎ、
いのちを守ることにもつながります。
こうした営みを続けてくれた人たちがいたからこそ、
いまの私たちの暮らしがある。
ぼっこを見てもらうことで、そういうことが伝われば」と、
澤田さんは話します。

2023年の展示は1月28日(土)から

展示の様子

今年の展示も、多賀町中央公民館「多賀結いの森」から
スタート!
期間は2023年1月28日(土)29日(日)2日間の開催です。

2022年は林業関係者だけが見られる展示でしたが、
今回は同日におこなわれる「公民館まつり」にあわせ、
地元の人をはじめ、多くの人が「ぼっこ」を間近で見ることができる
絶好の機会です。

その後、「滋賀県立美術館」へ移動し、
2月1日(水)から5日(日)まで展示がおこわなれます。
展示会場が変わることで、見え方も変わり、
あらたな「ぼっこ」の魅力に気づくかも。

間近で見ることで感じられる「ぼっこ」の色や
先人たちの息づかいを体験し行ってみてください。

(取材・文:しがトコ編集部 写真:辻村耕司/山行きBOKKO提供 編集:林正隆)

『山行きBOKKO』の情報

多賀結いの森
会期 2023年1月28日(土)~29日(日)※入場無料
時間 9:00~17:00※29日は16時まで
住所 滋賀県犬上郡多賀町久徳160-2
滋賀県立美術館 ラボ
会期 2023年2月1日(水)~5日(日)※美術館入場料は別途。「山行きBOKKO」展示の鑑賞だけなら無料
時間 9:30~17:00(入館は16:30まで)
住所 滋賀県大津市瀬田南大萱町1740-1
主催
近江多賀 山行きBOKKO
公式サイト
https://www.facebook.com/groups/959036577635319

提供:滋賀県 「滋賀をみんなの美術館に」プロジェクト http://bino-shiga.net/

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