【びわ湖の道】
雨が少ない影響でびわ湖の水位が、
14年ぶりに低い水準となり
普段は船でしか行けないびわ湖の島も陸続きになりました。
現在は、回復傾向にありますが、
水位低下が目立った12月上旬、
いつもは水の中にある”幻の道”を歩いてきました。
びわ湖に出現した道
写真手前に見えるこんもりとした森が、
滋賀県長浜市湖北町にある「奥の洲」。
水位低下の影響で、
びわ湖の中央にまっすぐ延びる砂地の道を歩いて、
「奥の洲」までわたることができました。
この道、じつは、びわ湖の中にある「湖底」です。
普段はびわ湖の浅瀬に浮かぶ小島が、陸続きの状態に。
こちらが長浜市の広報誌表紙にもなった普段の「奥の洲」。
ヤナギやヨシが茂る小島で、
夕陽に照らされる姿は、夕陽百選にも選ばれています。
歩いている道が、普段は「湖の底」にあることを
思うと不思議な気持ちになります。
さまざまな生き物の気配も
よく見ると、とげとげした木の実らしきものがたくさん。
これって……まきびしですよね?
忍者が逃げるときにまいて、踏んだ相手を怪我させたりするあのまきびし。
そもそもまきびしは水草の実。
ものすごい数のまきびしを眺めていると、
びわ湖の底を歩いているんだという実感がじわじわと。
それに滋賀県甲賀市は忍者の里、
びわ湖と忍者がじつはまきびしでつながっていたとは!
思わぬ発見です。
「奥の洲」周辺では一年を通じて
さまざまな水鳥を観察することも。
雪のように白い羽はコハクチョウのもの。
冬のこの時期は、コハクチョウが越冬で飛来し
湖面でたたずむ姿や、空を飛ぶ姿も見られます。
姿を現す湖底遺跡
(写真提供 @usutati_22)
豊臣秀吉が築いた長浜城で使用されていた
「太閤井戸」の跡も、水位が低下した時期には
井戸の全体が露出していました。
(写真提供 @usutati_22)
普段はこの写真のように井戸は水の中にあり、
石碑だけがのぞいている状態です。
どれだけ水位が低下しているのかがよくわかりますよね。
(写真提供 @sakuradake7)
滋賀県大津市坂本では、普段はびわ湖の水の中にある
坂本城の石垣が14年ぶりに姿を現しました。
水位低下で、びわ湖はどうなった?
取材時の12月上旬は、びわ湖の水位がマイナス60cmでした。
基準値よりも60cm低いということですが、
これは一体、どういう状況だったのか?
滋賀県流域政策局さんにお話を伺いました。
「今年は特に10月が平年に比べ雨が少なく、
その傾向が11月途中まで続き、
結果、琵琶湖の水位が低下したと考えています。
滋賀県では、琵琶湖の水位が
マイナス65cmまで低下し
さらに低下するおそれがあったため
11月17日に滋賀県水位低下連絡調整会議を
14年ぶりに設置しました。
現在は、水位が徐々に回復しつつありますが、
引き続き、毎日の琵琶湖水位や
気象予報などを注意して見ていきたいと考えています。」
とのこと。
もともと、びわ湖本来の特性で考えると、冬は水位が低いもの。
今年は特別、水位が低いのも事実ですが、
現時点では、そこまで心配する必要はなさそうです。
とはいえ、14年ぶりの低水位。
湖底に足を踏み入れたり、見られなかった遺跡が現れたり。
ちょっと違った風景とも出会えました。
滋賀の中央に鎮座し、生態系の要とも言うべきびわ湖。
普段は気にならなかった水位や、
水を大切にすることも、
この機会に考えてみてはいかがでしょう。
(写真・文 しがトコ編集部)
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