カルチャー

西武大津閉店に寄せて。70年代の写真とともに一級建築士本田明氏による寄稿

西武外観左側から

『2020年8月、西武大津店が閉店』
突然のニュースに、滋賀県民に大きな衝撃が走りました。

1976年に開店した西武大津店。当時は滋賀県で唯一のデパートとして、
たくさんの人が足を運び、華やかな商業施設として賑わっていました。
それから43年余り。西武大津店は、それぞれの世代に思い出を残し、
もうすぐ幕を閉じようとしています。

大きな存在がなくなる寂しさを共有したい。
そんな思いから、しがトコ編集部では開店当時の様子を知る、
滋賀県在住で建築家の本田明さんに寄稿を依頼しました。

記事の写真は、1979年にニコンの一眼レフで撮影されたもの。
当時の本田さんが、人生で最初の”大きなお買い物”として購入したカメラです。
少し色あせたサービス版の、あたたかみのある写真とともに、
建築家ならではの視点で書かれた本田さんの記事をお楽しみください。

西武大津の建築

西武外観夜

この建物は、1976年新築当時すでに大御所だった建築家 菊竹清訓(きくたけきよのり)の設計。

菊竹清訓、建築に興味のある人以外はあまりご存じないかもしれないが、
大阪万博のエキスポタワーや、西武百貨店渋谷店LOFT館などを設計、
愛知万博ではマスタープランを手がけた人物。

菊竹氏の事務所は「菊竹スクール」とも呼ばれ、
現在も活躍する日本のトップクラスの建築家、
伊東豊雄・内藤廣・長谷川逸子・大江匡などなど、
数多くの方々を輩出し、今の日本の建築デザインの源流となってる建築家の一人でした。

西武外観左側から

1977年岐阜の学校を卒業して、大津の設計事務所に最初に勤めた私。
だから、ピカピカの西武大津を知ってます。

『新建築』という、建築設計を志すものならだれもが知っている専門誌にも載ってました。
だから、買い物にも、建築の勉強がてらにも何度も行った思い出深い建物です。

当時、何回かあったデパート火災を受けて、
避難階段が異常にたくさん設置しなければならないようになったのを逆手に取った側面のデザイン、
階段床構造が上下階からの片持ち梁形式という、少しアクロバット的な構造形式で、
ちゃんとしたデザインされていた。

縦写真

それまでは都会の街中立地で駐車場のないのが百貨店だったのに、
今の郊外型ショッピングセンターのプランの端緒となる、駐車場併設のプラン。

2重らせん構造の自走式駐車場は、それゆえに走りにくかったけど、
立体を構成するっていうのは、こういうことなんかなー、と考えさせられた。

西武外観右から

今はなくなってしまったが前に飛び出た、
2階建ての斜路の小店舗群の半地下にしゃれたショットバー?があった。

2,3度一人で飲みに行って、開高健や山口瞳のようにカッコよく酒なんて飲めんわ、と思った。

西武外観正面

各階に設けられたスチールメッシュにツタが絡まり、緑の斜面になる構想だったのに、
いつまでたってもそうはならず、植物の扱いは中々むつかしいなー、と思った。

各階に外気を感じられるテラスは、最初のうちは何とか利用しようと試みたみたいだが、
「建築家」の夢想は実らず結局無用の長物になった。

内部エスカレーター

当時は賑やかでした。
吹抜の三角のガラス温室には鳥も飼ってたように思う。

内部のにぎわい

西武ホールが活用されていた最初の頃の企画展も何度も行った。
「百貨店」が文化発信するんだと実感した。

文化と共にステイタスを売る、そういうお買い物文化は、
40年の時を経て変わってしまったのかな、と思う。

ときめき通り

一番驚いたのが、膳所駅からの通りが、住宅街だったのに、みるみる商店街になっていったこと。
町って、一つのことでこういう風に変わっていくんやなー、と実感した。

西武大津という本尊をなくした参道の門前町(ときめき坂)は、
これからどう変わっていくのだろう?

インフォメーションセンター

ハード的には、現在あまねく立ってる郊外型ショッピングセンターの原点であり、
ソフト的には文化や高級品を売る「百貨店という商売」の終わりの始まりだったのかもしれない。

建築を志した頃、頑張ってた時代の思い出深い建物がまた一つなくなろうとしている。

なお、本文は自分の記憶とちょっとした下調べのみで書いてますので
間違いがあればお許しください。

寄稿者 プロフィール
本田明(ほんだあきら)/滋賀県高島市出身。有限会社 ほんだ建築 代表。一級建築士。父の代から50数年、滋賀県高島市マキノでの建築に関わる。長男は、落語家桂優々。

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