カルチャー

一人ひとりの”祈り”が仏になる『近江の小さな仏たち』プロジェクト

ラスト

【滋賀をみんなの美術館に】

本尊を囲むようにずらりと並ぶ、
一体いったい顔が異なる千体の仏たち。

『千体仏・千体地蔵』と呼ばれる
近江の小さな仏たちの姿は、
見る者を圧倒しつつも、
身近な優しさをも感じさせます。

全国的にも珍しく、未だ謎が多い千体仏・千体地蔵。

そんな仏たちの姿を間近で見て、学べるイベント
『近江の小さな仏たち ~近江の千体仏・千体地蔵~』が
1月20日(土)と28日(日)に
滋賀県内の寺院で開催されます。

「なぜ作られたのかわからない」不思議だらけの千体の仏たち

雲迎寺外観

この日私たちは、イベント会場の一つである日野町・雲迎寺(うんこうじ)を訪れていました。
中では1月に行われるイベントの打ち合わせの真っ最中です。

打ち合わせ

まず本尊にご挨拶をさせてもらおうとした私たちは、
目に入った光景にさっそく息を呑みました。

雲迎寺の本尊

そこに祀られていたのは、
中央の本尊を取り囲むように並ぶ小さな仏たち。

今回のイベントのテーマである『千体仏』です。

数もさることながら、その造形も実に凝ったもの。
極彩色に彩られた仏たちは一人ひとり顔も形も異なり、
1体1体が丁寧に手彫りで作られたことがうかがえます。

しかしいったいなぜこのような立派な仏たちが、
この場所で祀られているのでしょうか。

住職

「住職になってから地蔵堂の扉を開いた時は、びっくりしました」

そう語るのは、住職の久志則行(くしそくぎょう)さんです。

「3年前までこの地蔵堂の扉はぴっちり閉じられていて、
中に千体の仏さまがおられるなんて知りませんでした。
今は檀家の方々からお話を集めている最中ですが、
いったいいつからあるのか、なぜ彫られたのか、
一人で千体も彫ったのか、数人がかりで何年もかけて彫ったのか、
由来がはっきりとしないんです」

多賀町高源寺の千体地蔵

多賀町高源寺の千体地蔵(提供:辻村耕司)

実はこうした千体仏・千体地蔵は、
彦根市や日野町、多賀町、守山市など
滋賀県の至るところで祀られており、
近年にわかに脚光を浴びようとしています。

東近江の千体地蔵

東近江の千体地蔵は小幡人形(提供:辻村耕司)

偶然から始まった千体仏とのご縁

千体仏・千体地蔵について、
主催者である『近江の祭り研究所』の辻村耕司さんに話を伺いました。

辻村さん

「1998年、取材の最中に近江八幡市安土にある
小さなお堂に祀られていた『轟地蔵』を見たのが、
千体仏との最初の出会いでした」

以来、取材で滋賀県のあちこちに足を運ぶたびに、
その土地のお寺などで千体仏や千体地蔵を発見するという
不思議な偶然が相次ぐにつれ、千体仏への興味が湧いてきたと言います。

千体地蔵の説明

「千体仏や千体地蔵をよく見つめると、手作りっぽさがあって、
人の手を経て来たという“味”があるんですよね。
その一つひとつに誰かの想いがある、
守ってきた人たちの想いが込められている。
崇めるというより、傍にいてもらっているというような
身近な存在であることにとても興味を持ったんです」。

全国的にも珍しい近江の小さな仏たち

それから本格的に千体仏について調べはじめた辻村さんですが、
こうした千体仏の例は全国的にも珍しく、研究自体も進んでいないと言います。

本

彦根市宗安寺のように、
「石田三成の護持仏」と説明書きがあったり、
「江戸時代に子どもの供養で奉納したのがきっかけ」と
由来が判明している守山市の地蔵堂の例もあったりしますが、
出会った千体仏のほとんどは由来も制作者もわからないそうです。

それでも2015年に開かれた「お地蔵様サミット」で情報を募るなど
地道に千体仏・千体地蔵の調査を進めていた辻村さん。

そして今回、その一部を公開することで全国的な研究の端緒にしようと
『近江の小さな仏たち ~近江の千体仏・千体地蔵~』を
開催するに至ったとのことです。

クラウドファンディングで復活した1万体の地蔵

イベントはまず2024年1月20日(土)に
湖南市にある長寿寺にて開催されます。

長寿寺

注目すべきは、室町時代作と伝わる「地蔵曼荼羅」。
中央に描かれた地蔵菩薩は腕が6本あり、
全国に数例しかない貴重な姿なのだそうです。

そしてその周りを埋め尽くす小さな地蔵の数は、なんと1万体以上!

以前までは、掛け軸の形を保つことすら難しい保存状態だったそうですが、
クラウドファンディングで募った修繕費によって修復され、
イベント当日には住職や琵琶湖文化館の学芸員による講演のほか、
修復された地蔵曼荼羅の掛け軸のレプリカを見ることが可能です。

千体仏を自分で彫れる体験も

また翌週の2024年1月28日(日)には
雲迎寺で実際に千体仏を自分で作ってみる、
仏像の木彫り体験ワークショップが行われます。

雲迎寺内部

木彫り体験ワークショップでは参加者全員が楽しめるように
木彫り、色塗りといった作業を難易度に応じて体験できるほか、
会場では滋賀県内の千体仏・千体地蔵の写真や掛け軸が展示されます。

そして午後からは「観音ガール」である對馬佳菜子さんの講演が行われます。
その後は住職の久志則行さんのお話や、對馬さんも交えて
お寺のこと、仏像のことなどお聞きします。

住職紹介

久志則行(くしそくぎょう)
雲迎寺の住職でありながら、実は現役の落語家。
法話とともに落語を一席披露することもしばしば。
予測不能の洒落っ気の効いた軽快なトークが魅力的。

観音ガール

對馬佳菜子(つしまかなこ)
東京都出身。湖北の観音文化に惹かれて2017年に長浜市に移住。
「観音ガール」として仏像を中心とした文化財、地域文化振興や発信に努め、
講演会や執筆活動も行う。

受け継がれていく一つひとつの小さな”祈り”

「滋賀県にこういうものがあるって、知ってもらいたいですね」
イベントの趣旨について、辻村さんはそう語ります。

辻村さん2

「滋賀県を千体仏や仏像文化の視点から
見てみるのも面白いと感じてほしいですし、
今回の取り組みを知ってもらうことで、
千体仏の文化は滋賀県だけなのか、県外でも見られるのかなど、
情報を得るきっかけにもなればと思っています」。

正面

参加を検討されている方に向けて、
「ぜひ、みんなで一緒に学びあいましょう」と
辻村さんは最後にそう話していました。

また、長寿寺の地蔵曼荼羅のレプリカおよび雲迎寺の千体仏については、
イベント参加者以外の方も、事前に問い合わせさえあれば、
通年公開されているとのことです。

雲迎寺の本尊

クラウドファンディングという、
一つひとつの小さな”祈り”が集まって
復活した長寿寺の地蔵曼荼羅。

実物の千体仏を見て、味わって、自らの手で彫る体験ができる雲迎寺。

目的も、作られた時期も謎だらけの千体仏・千体地蔵ですが、
誰かが想いや祈りをこめて彫ったものだということだけは確か。

そんな小さな”祈り”が一つひとつの形になった
近江の小さな仏たちの姿を、
ご覧になってみてはいかがでしょう!

(取材・文:結城弘 写真:山本陽子)

各イベント詳細

イベントチラシ

2024年1月20日 長寿寺(湖南市)

・午後1時より拝観と講演(長寿寺住職・琵琶湖文化館和澄浩介学芸員)

参加申込み:sentaijizo.shiga@gmail.comまでメールにてお申し込みください
住所:滋賀県湖南市東寺5丁目1-11
拝観の問い合わせ:0748-77-3813
ホームページ:https://chojyuji.jp/

2024年1月28日 雲迎寺(日野町)

・午前に仏像木彫り体験ワークショップ
・午後1時より拝観と講演(雲迎寺住職・観音ガール/對馬佳奈子)

参加申込み:sentaijizo.shiga@gmail.comまでメールにてお申し込みください
住所:滋賀県蒲生郡日野町音羽261
拝観の問い合わせ:0748-43-2031
ホームページ:https://unkouji.jp/suv-dir/

『近江の小さな仏たち ~近江の千体仏・千体地蔵~』問い合わせ先

主催
近江の祭り研究所
連絡先
sentaijizo.shiga@gmail.com
公式サイト
http://ohmi-matsuri.com/

提供:滋賀県 「滋賀をみんなの美術館に」プロジェクト http://bino-shiga.net/

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