カフェ・お店

ブルーベリーやハーブに包まれて、小高い山でゆっくり味わう贅沢時間「ブルーベリーフィールズ紀伊國屋」

【ブルーベリーフィールズ紀伊國屋/滋賀県大津市】

細い山道を抜けた先に広がる
ブルーベリー畑の雄大な自然!
見晴らしの良い場所に、この季節だけにオープンする
“山の上のレストラン”ではゆっくりとした時間の中で
フレッシュなブルーベリーや
地元の野菜を使った料理がいただけます。

滋賀県大津市にある
「ブルーベリーフィールズ紀伊國屋」は、
全国髙島屋でも販売されている
ブルーベリージャムで有名なお店。

8月30日までの期間限定で「山のレストラン」を営業中。
ブルーベリーの摘み取り体験もできます。

今回は創業者である岩田会長と、営業部部長の前田さんからお話を伺い、
ブルーベリーフィールズがなぜ人々を魅了するのか、
その根幹にある「哲学」の一端に触れることができました。

夏を味わう「山のレストラン」

滋賀県大津市の小高い山の上にある
オーガニック農園「ブルーベリーフィールズ紀伊國屋」。

一階には一本一本手作りのジャムや
ハーブティー、ドライフルーツなどが並んでいます。

取材の日はちょうど「ブルーベリーフィールズ」のシンボルともいえる
生のブルーベリーが販売中でした。

そして二階へ上がると、「山のレストラン」があります。

温かみのあるウッディな内装で統一された「山のレストラン」。

パッと目に入るのは、大きな窓です。
そこから見下ろすのは、無農薬無化学肥料で健やかに育つブルーベリー畑。
さらにその先には、雄大な琵琶湖を臨むことができます。

2023年夏期のランチメニューは、
前菜6種、スープ、メイン料理に、
パン、デザート、ドリンクがセットになっています。

ハーブや季節の野菜を豊富に使った料理は
真っ白なお皿に美しく盛り付けられ、どれも輝くようで、
まずは目から、贅沢に味わうことができます。
口に入れるとふわりと香りが広がり、
料理を堪能しながら見る景色は清々しく。

そして広い窓を見ると、眼下に広がる畑と滋賀の風景が、
さらに彩りを鮮やかにしてくれています。

お話を伺いながら、ブルーベリー畑を見ていると、
野生の鹿がやってきてビックリ。
そんなワンシーンすらも絵になるレストランです。

できることを丁寧に

実はこの「山のレストラン」、コロナ禍の影響もあり、
2020年冬に、一度は閉店をアナウンスしていました。

シェフもホールスタッフもいなくなったレストラン。
それでも、ブルーベリーを摘みに来たいと言ってくれるお客様がいました。
そして、人間の都合なんて知らずに、
ブルーベリーはしっかりと育ってくれています。

全国の髙島屋へジャムを出荷できるのは、
ブルーベリーフィールズの始まりの地である「本店」があってのこと。

この場所をきちんと維持することが大切と考え、
想いを新たに2021年夏からは、夏季限定のレストランとして再出発しました。

そんな料理を作っているスタッフの一人は、営業部部長の前田さん。

以前、関東で暮らしていたという前田さんは、
元々はブルーベリーフィールズのジャムを購入したお客様でした。

ある時、「販売を手伝ってくれないか」とお声がかかり、
イベントの販売を手伝うようになり、
ブルーベリー摘みを手伝うようになり、
そしてとうとう滋賀の地に移住を決断したという経緯の持ち主です。

営業部部長、だけどシェフもホールもやる。
そこには、限られた人数でも、できることを丁寧にしたいという
前田さんの想いを感じます。

そして、そんな想いが生まれる元には、
創業者である岩田さんの姿があるのかもしれません。

前田さんは岩田さんのことを、
「逞しさと繊細さを兼ね備えた、芯の強い人」と語ります。

ブルーベリーフィールズ紀伊國屋の原点

岩田会長

この日は岩田さんからもお話を伺い、
ブルーベリーフィールズ誕生から、現在の想い、伝えたいメッセージまで
じっくりとお聞きすることができました。

「自分の命を繋いでいるものを、ただただ買うだけで、
そのことに何にも携わらないでお金だけで手に入れている自分は、
何か人間として足りないのではないかな」

漠然とそんな気持ちを感じて生きていたという岩田さん。

35歳の時、二人の子どもとともに京都の婚家を去って、
滋賀で農地を探し始めた時から、人生が変わりました。

いくらお金があっても、農業者でなければ買わせてもらえない農地。

その農地で何を何本植え、いくらの利益が出るのか。
緻密な計画書を立てなければならないと知りました。

「私はここで何を植えようか」
と、この時、初めて命を繋ぐものに携わり始めます。

お米や野菜は、自分よりも美味しく作る人がすでにいる。
自分には何ができるのか、考えていた岩田さんの頭に、
一つの果実が思い浮かびました。

それは以前、フランス料理を習っていた頃。
日本では生のブルーベリーが入手しづらく、でもとても美味しいのだということを、
先生から聞いたことがありました。

誰もやっていなくて、ニーズのあるものをと考えた末、
「ブルーベリーはどうかしら」と、思い至ります。

そうして、右手には比叡山、眼下には琵琶湖、天上に広がる滋賀の空と、
雄大な自然に包まれるようなこの土地で、ブルーベリー作りを始めました。

ひたむきに向き合うことが、すべて

今でこそ全国の髙島屋に商品が並び、
多数の姉妹店を持つ「ブルーベリーフィールズ」ですが、
初めからすべてが上手くいっていたわけではありません。

夏は暑く、冬は寒く、腰にも辛い農作業。
できたからといって、売れるわけではない果実。

それでも一生懸命にブルーベリーを植え、摘みとり、ジャムを炊いていると
ある時、百貨店の髙島屋からお声がかかりました。

「髙島屋の棚に載るなんてとんでもない。
100本とか200本、そんな百貨店に出せるような量は作れません」

そう言って何度もお断りしたのですが、
髙島屋は諦めませんでした。

「一本で良いから」

三度目にそう言われた時、岩田さんは
自分が髙島屋との取引を恐れていたことに気付きました。

「まさか自分なんて」

いやいやとんでもない。
いやいやそんなにできん。

そう思っていましたが、
髙島屋は「一本でも良い」と、諦めません。

一本もできんことはないな。

ひたむきにブルーベリーと向き合い続け、
新しい扉が開いた瞬間でした。

できることを”一生懸命”が、新たな扉をひらく

髙島屋との契約が開始し、もう手一杯!と思っていた頃、
今度は滋賀県高島市の山中に土地を借りてほしいと声がかかります。

「うんざりするほどのヘアピンカーブでね。
しかも縦長の細長い土地。どうしようかなと思ってね」

アイデアはあったものの、一人では無理だと感じた岩田さんは、
「あなたが帰ってくるなら借りる」と息子さんに言ってみました。

生きるために必死に働く母を見て、
思春期の頃は東京の大学へ飛び出したという息子さんでしたが、
「ゼロからなら、やろう」と返事がありました。

そうして、今度は親子二人で作りあげたのが、
高島市にある「ソラノネ食堂」です。

初めは人が来るような土地ではなく、
親子間でもやめようかという話が出るほどだったそうですが、
「竈で炊いたお米」がコンセプトの、見晴らしの良いこの食堂は、
今では自分でご飯を炊ける「かまどご飯体験」も話題になっています。

ソラノネ食堂を一生懸命にやっていると、
今度は高島市の道の駅から相談を持ちかけられました。

「道の駅の中にお客さんが喜ぶキッチンをつくりたい。何とかしてくれへんか?」

声をかけた担当者は、実は、ひたむきに、
実直に、ブルーベリーや農業と向き合っている岩田親子を
若い頃からずっと見ていたのです。

「信頼」が扉を開いていく

「しんどいこと、嫌なこと、大変なことをしたくない。
難を避けて避けて楽にと思っていても、
いつか人生は終わってしまうんですよ」

岩田さんは、両親、兄、友人と、
死を身近に感じるたび、
賢い人も、お金持ちも、頑張っても、頑張らなくても、
誰にでも等しく与えられる死を意識するようになります。

今、存在する自分と、いつかはいなくなる自分。
だからこそ、限りある今日を精一杯生きる。

髙島屋でのジャム販売、ソラノネ食堂の始まり、道の駅。
岩田さんのこれまでをお聞きしていると、
何度も出てくる言葉がありました。

それは、「信頼」という言葉。

日々を精一杯生きていれば、
その姿を誰かが見てくれている。

その誰かが、自分を信頼し、次の扉を開いてくれる。

いつも扉を開くのは「信頼」であり、
そして信頼とは、自分の可能性を信じること、
自分への信頼でもあるのだと
岩田さんのお話から気付かされます。

自分を信頼している人であればこそ、
自分を裏切るようなことはできない。

そんな人となりが伝わるからこそ、
周囲も信頼を寄せてくれるのではないか。
お話を伺いながら、そう強く感じました。

失敗を怖がらなくていい

小さい頃はコンプレックスの塊だったという岩田さん。

数々の経験を重ねてきた今、
失敗を怖がらず、可能性の中を生きる大切さを感じています。

「みんな自分の力でこの世の中に生まれてきて、
誰にも教えられないのに、お母さんのおっぱいを吸って、
それを自分のエネルギーにして、そうして立ったんですよね。
でも、一回で歩き始めたわけじゃない。
こけて、泣いて、でももう一度立ち上がったから、今があるんですよね。
失敗することを怖がるけど、
あの時いっぱいこけたやんって、何度も何度もこけたはずやって。
失敗したら、次は失敗しないように歩き始めたらいいだけのこと」

初めからブルーベリーが売れたわけではなく、
髙島屋の商品が売れたわけでもない。

それでも精一杯、心を砕いて
誠心誠意向き合ってきた岩田さんの言葉は、実感を伴って心に響きます。

「精一杯した時に、次の扉は必ず開かれる。それを信じてほしいと思います」

毎日を精一杯生きる。
その言葉の通り、岩田さんはこの日も
体調を崩してしまったスタッフの代わりに、
朝からキャベツを切ったり、糠漬けを盛り付けたりされていたそうです。

「自分にとっての精一杯は、何をすることだろう」

お話を聞いていると、そんな気持ちが湧きあがってきます。

すぐに答えの出るもの、パッと見て分かりやすいものを
信じてしまいがち、求めてしまいがちな今だからこそ、
日々の積み重ねでしか生まれない「信頼」に価値がある。

自分の可能性を信じ、精一杯生きる。

そんな人生の哲学を教えていただきました。

(取材:しがトコ編集部 文:大関梨紗 写真:しがトコ編集部)

記事を書いた人
大関梨紗(おおぜきりさ)/東日本大震災の被災地を歩いて旅したことがきっかけで、地元関西から岩手県沿岸部に移住。田んぼや畑で無農薬栽培を実践しながら文筆業を営む。巫女をしていた経験から民俗学に関心があり、特に民間信仰について研究中。一番好きな本は『星の王子さま』。Twitter @writer_ozeki

『ブルーベリーフィールズ紀伊國屋』山のレストランの詳細情報

住所
滋賀県大津市伊香立上龍華673
営業期間
2023年7月15日~2023年8月30日
営業時間
ランチタイム(要予約) 11:30~の1部制
カフェタイム 14:30~17:00(L.O. 16:30)
定休日
毎週 木・金曜日
電話番号
077-598-2623
公式サイト
https://bbfkinokuniya.com/
instagram
https://www.instagram.com/blueberryfields.kinokuniya/
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