「君の隣は自由席。だけどお願い、誰も座るな。」(Mayさん)
私が電車の天井につけようとしていたポスターには、みずみずしくてどこか懐かしい気持ちにさせられる言葉が書かれていました。
ここは大津市にある京阪電車の車両基地。
車内に取り付けていたのは、全国から集まった「青春21文字のメッセージ」でした。
入賞作品は京阪電車で走る!「電車と青春21文字プロジェクト」

大津市内をほぼ琵琶湖に沿って走る「京阪石山坂本線」
たった二両の小さな電車は日々たくさんの通勤客や学生たちを運び、ときに誰かの思い出や青春を届けています。

そんな電車や青春を題材にしたメッセージを募集するコンテストが、市民グループ「電車と青春21文字プロジェクト」によって毎年開催されています。
第1回から歌人の俵万智さんが審査員を務め、入賞作品は石山坂本線を走る電車に展示されるこのコンテストも19回目となる今年。
取材を申し込むとちょうど入選作品を電車に取りつけるタイミングということで、なんと我々も作業を体験させてもらえることになりました!
滋賀を走る京阪電車が集まる『錦織車庫』

訪れたのは、石山坂本線の近江神宮前駅に隣接する『錦織車庫』
京津線および石山坂本線を走る車両が留置されていて、毎年開催される「大津線感謝祭」などで一般開放される以外滅多に入れるチャンスはありません!
作品が印刷されたポスターを抱えて、いざ、電車の中へ!

普段は決して入れない運転席の出入り口から、慣れないステップをおそるおそる登って車内に入ると…
あれ、何だかいつもより広々と感じるような…?

あ、天井から吊り下げられている広告がないんだ!
意外とありそうでない光景なので新鮮です。
本来なら広告がある天井付近の空間は”中吊り”と呼ばれ、今からその枠に展示作品を取り付けていきます。
京阪電車・石山坂本線は青春路線

「今日だけ紙きっぷ。思い出を持ち帰りたくて。」
脚立を使って私が取り付けているのは、《滋賀県知事賞》を受賞した坂下遥香さんの作品。
慎重に展示作品を手に取っていくと、
《大津市長賞》「今は無い踏切をカーナビだけが覚えている。」(横尾悠月さん)
《青春賞》「踏切の音が聞こえないのは君の隣にいるからだ。」(成松光さん)
などなど、胸がキュンとしたりノスタルジックに駆られたりする言葉に触れ、ついつい作業の手を止めてしまいそうになります。

「作品は21文字であれば、形式は問いません」
そう話すのは、プロジェクトメンバーの木村浩一さんです。
「京阪は、向かい合わせの席が青春ぽいから好き!」
という沿線の女子中学生の何気ない言葉から生まれたのが「電車と青春21文字プロジェクト」

(写真提供:「電車と青春21文字プロジェクト」)
沿線に数多くの学校がある石山坂本線は”青春路線”ということで、駅数の「21」にちなみ、「21字」の青春や電車にちなんだメッセージを2006年に募集したのが始まりでした。
今年のサブテーマは「偶然・踏切・窓・推し」
全国47都道府県から、過去最高の5,398ものメッセージが集まりました。

それぞれの想いが詰まった作品を取り付け終えた光景がこちら。
その淡い色合いとみずみずしい言葉に、一足先に電車の中が新緑を迎えたみたいです。
湖国を走る「青春21文字のメッセージ」
作品が展示されている車両は2月から3月末まで、点検日を除き毎日一編成が石山坂本線で運行される予定です。

展示車両の目印はこちらのヘッドマーク!
地元の成安造形大学の学生さんによって考案されたもので、中央の波線は「21」、背景のシルエットは数字の「2」と滋賀の県鳥である「カイツブリ」を組み合わせたデザインなのだそうです。
車内での作品展示は、京阪電車以外にも近江鉄道、信楽高原鐵道で同じく3月末まで開催中です!
またポスターは滋賀県内のJR西日本の各駅、坂本ケーブルの駅舎でもそれぞれ掲示されているほか、入賞作品や俵万智さんの審査評は「青春21文字のメッセージ」のホームページでもご覧いただけます。
そろそろ冬が終わり、新しい春がやってくる季節。
電車の中でふと顔を上げてみると、思わぬ素敵な出会いがあるかもしれませんね。
- 記事を書いた人
- 結城弘/滋賀県出身。小説家・ライター。滋賀が舞台として登場する小説『二十世紀電氣目録』『モボモガ』を執筆。趣味は旅行、レトロ建築巡り、ご当地マグネット集め、地酒。noteにて旅ブログなどを更新中。各SNS⇒ X(旧Twitter)/ Instagram
『青春21文字のメッセージ』の情報
- 開催期間
- 2026年3月末まで
- 掲載場所
- 京阪電車石山坂本線、近江鉄道、信楽高原鐵道など
- 主催
- 電車と青春21文字プロジェクト
- 公式サイト
- https://densyatoseisyun21.com












