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「身体は表現の原点だ!」成安造形大学・秋の芸術月間『playing BODY player』が始まりました!【美の滋賀trip!#03】

【美の滋賀trip!#03】

表現の原点にあるのは、いつも“身体”。
笑ったり、怒ったり、悲しんだり、普段の日常の中でも
私たちは身体を使って表現をしています。

その当たり前のことを改めて見つめ直し、
“身体”をテーマにした作品が展示されたアートイベント
『2018 秋の芸術月間 セイアンアーツアテンション 11 「playing BODY player」』が始まりました。

会場は、大津市仰木の里にある成安造形大学。
「キャンパスが美術館」と名付けて、毎年、様々なアート展示をされています。

成安造形大学

“身体”をテーマにするってどういうことなんでしょうか?
今回のイベントでは、成安造形大学の卒業生作家5名が作品を展示。
ギャラリーツアーに参加した様子を、ご紹介します!

【1人目】スクワットから生まれる圧巻の作品!

身体を使うということなので、
「目の前で絵を描くようなパフォーマンスみたいな感じ?」と、
軽い想像をしながら展示室へ。

するとそこは、壁一面に同じ模様が何枚も張られ、
部屋の中心にあるのは・・・土俵?

そして何やら怪しいマシーンもあり。
そのマシーンの前に一人の男性がやってきました。

菊池和晃さん

こちらが一人目の作家、菊池和晃さん。
菊池さんはマシーンの前に立ち、腰にベルトを取り付けるや否や、
突然、始めるスクワット!!

菊池和晃さん

いったい何が起きてるのでしょうか。

息をのみながら驚く観衆をよそに、
菊池さんは無言でスクワットを繰り返します。

Muscle:Thinghs

菊池さんが腰を下ろすたび、
ベルトで繋がれたマシーンがシーソーのように動き、
反対側に付いてる刷毛(はけ)が、キャンバスに黒い太線を描きます。

緊張感ある部屋の中で、
不思議なマシーンを前にスクワットを繰り返す菊池さんの息遣いと、
キャンバスに描く刷毛の、シュッ、シュッとした音。

菊池和晃さん

スクワット開始からすでに5分が経過し、
だんだん苦しそうになる菊池さん。

菊池和晃さん

足元の土も、じりっ、じりっと掘れていきます。

菊池和晃さん

全身から滴る汗、荒くなる息。
かなり疲れてるのではないでしょうか。
それなのにだんだんと、スクワットが深くなってるようにも見えます。
最初はハーフスクワットだったのに、もはやこれは、フルスクワット。
「どうしてそこまで自分を追い込むの?!」と、思わずにはいられません。

スクワット開始から約10分。
菊池さん「ありがとうございました」という言葉とともに、
会場は大きな拍手に包まれました。

今日はアートイベントを見に来たつもりでしたが、
鑑賞後は、スポーツ観戦のあとのような、選手を褒め称えたい感情と、感動。

あ、そうか!
これが「playing BODY player」なのか!
アートってそういうことだったのか!

など、いろいろ気付かされてる作品でした。

菊池和晃さん

古代ギリシャでは、鍛え上げた筋肉質の身体が美しいとされ、
神の身体に近づくためトレーニングが行われていたと言われています。

菊池さんいわく、
「ご神体に近い美しい身体で作った作品は、美しいに違いない」。

ここで動けば動くほど、足も太くなる。そして、キャンバスの線が太くなります。
つまり、自分の身体をボロボロに追い込むほど、作品は活き活きと力強くなるのです。

目で見て判断する“美術の価値判断を変えたい”という想いから
「美しい身体の僕だからこそ、作品も美しい」と
思われるような作品をつくるため、
バキバキでマッチョで筋肉質の“身体”になることが、
アートを生み出すことと連動してるのではないか。
その想いから、作品を生み出してるそうです。

イベント期間中、菊池さんがパフォーマンスを見せてくれるのは
11月2日(金)、10日(土)、17日(日)。
この日以外は映像でその様子を鑑賞できます。

展示室の内部には、1万回以上のスクワットから生まれた極太の作品たちが飾られます。
この一つひとつが、菊池さんの筋肉から生み出されたもの。
ぜひ目で見て楽しんで下さい!

【2人目】踊ることが美術。ここでしか生まれないアートなダンスを

桑野聖子さん

真っ白な空間の中で、ヨガのような、バレエのような、
ゆっくりとした動きをする女性。

桑野聖子さん

指先まで綺麗な動きに、難しいバランスまで、
ゆっくり、ゆっくり行っていきます。

こちらが、桑野聖子さんの作品『おどりに ちかい[進行形/内/外]』。

桑野さんは神戸を拠点とするダンスカンパニー
「アンサンブル・ゾネ」で活動中の作家さん。

美術とダンスの間で独自の表現方法をと生まれたのがこの作品。
桑野さんの踊る、この空間の中に入ると、
外の世界とは違う、時の流れを感じるような気がします。

桑野聖子さん

と思ってると、どんどん早く激しく動いたり、
次はどう動くのだろう?とまったく先が読めない動き。

これこそが、桑野さんの魅力なのかもしれません。

桑野さんのダンスには台本が無く、
その日、大学のキャンパス内を散策し、
見たものや感じたこと、学生との交流や天候など、
そのときそのままダンスで表現するのだそう。

「playing BODY player」の会期中、
火曜、水曜、金曜、土曜にキャンパスに訪れ、
その度にここでしか作れないダンスをするそうですよ。

【3人目】自分の身体を動かして楽しむ!デジタルな体験型アート

何度か前を通るたびに、とても気になってたこのコーナー。

バーチャルゲームワールド

これも、今回の作品展示の一つだったのでした。
作品名は、その名も『バーチャルゲームワールド』。
子どものためのゲームコーナーかと思ってました!

作家は、日本唯一のアニメ漫才師であるアキラボーイさん。
「エンタの神様」などにも出演経験があり芸人さんで、
ご存知の方もおられるのでは?
Youtubeなどでもネタを見ることができます!

アキラボーイさんのゲームワールドなんて楽しそう!
と、ワクワクしながら中へ入ります。

バーチャルゲームワールド

室内は大きなプロジェクターで映し出されたゲームの世界。
ここでは、自分の“影”がプレイヤーになるようです。

スーパーマリオのようにスライドしていく映像の、
プレイヤーである“影”を動かして、コインを入手しポイントを稼ぎます。

トンボを避ける

敵(トンボ)が来た!避けて、逃げて!

バーチャルゲームワールド ジャンプ

今度はイヌです!ジャンプ、ジャンプ!

GAME OVER

あー、残念。ゲームオーバーになりました。
これが意外と難しい!

でも、小さなお子さまでも遊べるので、子連れでチャレンジするには良いかもです。
会期中は、なんと無料で何度でも挑戦できますので、
順番を守りながら、高得点を目指してくださいね!

この作品のコンセプトも“身体”。
通常、“身体”をテーマにした作品の場合、
作家の“身体”を使うことが多いのですが、
この作品で使うのは、観衆の“身体”。

見てる側が参加して、作品の中で“身体”を使う。
さらに、デジタルも融合させたアート作品なのです。
ぜひ楽しんでみてください!

ほかにもまだまだ!“身体”がテーマの作品たち

“身体”がテーマの「playing BODY player」。
ほかにもまだまだ、作品が展示されています。

マツムラアヤコさんの作品

こちらは動物の皮を織り込んで作ったという
マツムラアヤコさんの作品『body suit』。

タテ糸に植物の糸、ヨコ糸には動物の皮からできた糸を
織り込んで仕上げた作品なのだそう。

マツムラアヤコさん

マツムラさんは動物の皮を使った織物でさまざまな作品を生み出す作家。

目で見たリアルな身体ではなく、
“頭で想像した身体をカタチにしたい”と自由な発想で糸を織り込みます。

マツムラアヤコさんの作品

シカやウシの皮を使ったという作品は何か置物のような形をしたものや、
ヘビの抜け殻のようなものまで、さまざま。

よく見ると凸凹とした表面で肌触りも気になります。
織物がこんな不思議な形になると考えると面白いですよ!

変わって次は、瀧弘子さんの作品『写身‐うつしみ』。
瀧弘子さんの作品

暗い部屋床に無造作に置かれた鏡。その中には人が描かれています。

瀧弘子さんの作品(プロジェクションマッピング)

そこに光を当てることで、浮かび上がる鏡の絵。

光の角度、位置、強さによって、映像は様々に変化します。
見方によっては異なる姿が映し出される空間。

瀧弘子さんの作品

「鏡に映る私は、写真や映像でみる過去の私ではなく、現在の私。
そんな鏡に写る自分を油性マーカーでなぞった」
と、瀧さんは伝えます。

鏡に写る輪郭を何度もなぞることで、その姿を浮かび上がらせる。
瀧さんの表現からは、自分自身への深い興味と、
そこから生まれる強いコミュニケーションを感じます。

瀧弘子さん

そして、この日は観客の前で、
赤いマントを脱ぎ捨てたパフォーマンスを披露してくださった瀧さん。
最終日の11月17日(土)にも滝さんのパフォーマンスが見られますので、
興味のある方は、ぜひご覧ください!!

どなたでも、気軽にアートに出会える「キャンパスが美術館」

田中真吾さん

“身体”を使った作品展示で今回のイベントを主催する、
成安造形大学「キャンパスが美術館」の田中真吾さん。
この日は『playing BODY player』のオリジナルTシャツを着用中!

芸術における表現は驚くほどの多様さを見せる中で、
パフォーマンスやダンス、演劇をどうアートに取り組むか、
日々の動きの中に美術の楽しみを見つけるために
“身体とアート”に注目しました。

看板

誰もが持っている身体だけれど、皆それぞれが違うカタチをしている。
5名の作家にとって“身体”は描写道具であり、オブジェクトであり、
運動となり役者となる。

ここでアートになる身体は私たちと何が違うのか、そして何が同じなのか。
改めて身体の存在を考えるきっかけになればと考えているそうです。

芸術とは自由で、生活の中にある。
そして普段あたり前のように使ったり、スポーツで全力で動かしたり
感情を表したりする“身体”。
それがアートになるなんて今まで考えたことがありませんでした。

作家たちが全身で表現するアートが楽しめる『playing BODY player』は
11月17日(土)まで開催中。

「“身体”が表現の原点」と着目して、
作品に触れるとまた違ったさまざまな世界が見えてくるかもしれません。
この機会にぜひ新たなアートに触れてみませんか。

「成安造形大学」を地図でみる

国道161号線「雄琴IC」から車で約15分!

成安造形大学

→大きい地図で見る

「playing BODY player」の詳細情報

会期
2018年10月26日(金)~11月17日(土)
休館
月曜日・日曜日※11月7日(水)は休館
開場時間
11:00~17:00
場所
滋賀県大津市仰木の里東4-3-1
→地図
料金
無料
お問い合わせ
成安造形大学【キャンパスが美術館】 077-574-2118
公式サイト
キャンパスが美術館

※「美の滋賀trip!」は『しがトコ』が企画・取材を担当し制作しています。この記事は、滋賀県公式のポータルサイト『美の滋賀trip!』でも公開されています。

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