【しが文化交流プロジェクト/近江の祭】
秋色に染まりはじめた「ラ コリーナ近江八幡」に、今年も力強い松明(たいまつ)のシルエットが現れました。
人気観光スポットの景色に、千年以上続く近江八幡の“祭の文化”がふっと寄り添う——そんな特別な季節。
今回は、滋賀の大学生2人といっしょに、松明づくりの現場に潜入。
「設計図がない」「すべて口伝え」という驚きの制作現場で、地域の人たちと汗を流してきました。
近江八幡で1400年以上続く、松明文化

滋賀県近江八幡市では、春になると市内各地で200基以上の松明が奉納されます。
まちに深く根づいたこの文化は「近江八幡の火祭り」として、国選択無形民俗文化財にも登録されているんです。

ラ コリーナに並ぶのは、その中でも特に個性的な5基。
中には1400年以上の歴史をもつ松明や、木村拓哉さん×綾瀬はるかさん主演の映画『レジェンド・バタフライ』に登場した松明も!
形も、作り方も、込められた思いも、すべてが違う。
それぞれの町で脈々と受け継がれてきた技術と伝統が、ここに集結しています。

この伝統文化を”次の世代へつなぐ”ために始まったのが、ラ コリーナでの松明展示です。
多くの人が訪れるこの場所で、松明を制作し、展示する。
まずは”松明と出会える場”を作りたいと始まった取り組みは、今年で10年目を迎えました。
さらに今年からは、例年3月には「近江の祭 左義長」の展示も開催。
松明、左義長と、近江八幡の祭文化全体を伝えていく一歩となっています。
「設計図がない!?」学生が驚いた、松明づくりの現場

「え、設計図がないんですか?」
「じゃあ、どうやって同じ形に……?」
松明づくりの現場を訪れた学生・野村さん(写真左)と村上さん(写真右)が、最初に驚いたのはこのことでした。

いざ、松明づくりに参加してみると──。
「それだけ渡されても材料足りないよ!」
「もうちょい短いほうがええで」
「そうそう、その調子!」
作業場には、地域の人たちの声が響きます。
右も左もわからない学生たちは、最初はおどおど。

教え方はすべて”口伝え”。
地域の方が丁寧にアドバイスや励ましをかけながら、その都度調整して手を動かしていきます。

「松明って、燃えているところしかイメージがなかったんです。でも、こんなに形がそれぞれ違って、燃える前の松明がこんなに美しいなんて」と野村さん。
「ズレても直せる。みんなで一つの形を擦り合わせていく感覚が面白かったです」。
村上さんも、「地域の人が培ってきた感覚で、どんどん形になっていく職人技に圧倒されました」と目を輝かせます。

最後には2人とも、地域の人に縄の長さを尋ねたり、笑顔で作業に没頭したり。
初めは緊張していた学生たちも、松明づくりの楽しさと奥深さを、肌で感じたようでした。
気づけばみんな参加者。広がっていく”松明の輪”
松明づくり当日は、ラ コリーナのバームファクトリー前の道沿いで作業が行われていたこともあり、敷地内を歩くたくさんの観光客が興味津々に松明を見つめていました。

「この縄、全部編んで作ってるのかな?」
そんな会話をする親子連れや、地域の人と直接話し込む来訪者の姿も。
大阪から遊びに来ていた親子が、そのまま作業を手伝いはじめた場面もありました!
松明の”原点”にふれる、しめ縄ワークショップも

取材当日は、一般の方もしめ縄づくりを体験できる「しめ縄ワークショップ」も開催されていました。
松明の基本ともいえる”縄”に気軽にふれられる機会として人気の取り組みで、飾りに使う植物の一部は、この日のために一年かけて育てられたものだそう!
子どもも大人も思い思いの作品づくりを楽しんでいました。
“出会い”から始まる、次世代へのつながり
「文化遺産としての松明を次世代へ贈る会」会長の大西實さんは、こう話します。

「松明を作れる人や関わる人が年々少なくなってきています。だからこそ、まずは松明と出会える場所を作りたかったんです」。
口伝えで受け継がれてきた技術は、一緒に手を動かさないと伝わらない。
松明結いの場は、ただ技術を教えるだけでなく、地域の人との交流や、これまで松明を知らなかった人とも触れ合える大切な時間なのだと大西さんは語ります。
「今年も学生さんたちが参加してくれています。ここで見て、触れて、興味を持ってくれた若い人たちが、いつか松明結いに参加してくれたら。そうやって少しずつ、輪が広がっていけばと思います」。

ラ コリーナの自然の風景にすっと溶け込む、個性豊かな松明たち。
この場所ならではの、秋だけの特別な景色が広がっています。
千年以上受け継がれてきた技術と想い。
そして、今この瞬間も”つながっていく”伝統の現場。
ぜひ、見に行ってみてください。
『近江の祭り たいまつ』の詳細
- 展示期間
- 2025年11月8日(土)~12月中旬予定※雪が降るまで(9:00~18:00)
- 開催場所
- ラ コリーナ近江八幡(滋賀県近江八幡市北之庄町615-1)
- 主催
- 文化遺産としての松明を次世代へ贈る会
※この記事は、滋賀県の「地域資源活用交流創出事業に係るレガシー創出事業」の一貫で、『しがトコ』が企画・取材を担当し制作しました。 http://bino-shiga.net/












