カルチャー

掘ってみたら、城下町が丸ごと現れた!福井「一乗谷朝倉氏遺跡」の滋賀との意外な関係性?!

【特別史跡一乗谷朝倉氏遺跡】

恐竜の化石が発掘され、
“恐竜王国”として知られる福井県。
しかし、地面を掘って出てきたのは化石だけではありません。

福井市にある遺跡を発掘したら、
保存状態が良好な戦国時代の城下町が、丸ごと出現したのです!

この城下町を治めていたのは、
越前の戦国大名・朝倉氏。

近江国(滋賀)に拠点を置いた戦国武将、
織田信長や浅井長政とも、様々な縁がある大名。

それだけでなく、この遺跡には、
意外な福井と滋賀の繋がりもある?!

大人も子ども楽しめる『特別史跡一乗谷朝倉氏遺跡』で、
戦国ロマンを感じてきました!

その谷は、夢か現(うつつ)か

「あれ、ここはどこだろう?」

取材で福井県にやってきていた私たちは、
不思議な谷に足を踏み入れていました。

復原街並

見渡す限り続くのは、
明らかに現代とは異なる町並み?!

かと思えば、
今度は立派な御殿の中にいて・・・

主従関係

戦国時代のお殿様と家来に大変身!?

現代と、戦国時代を行ったり来たり。
ここはいったい、なんなんだ~!

福井を深堀りできるスポット『特別史跡一乗谷朝倉氏遺跡』

ことの発端は、2024年3月16日に福井県・敦賀駅まで延伸される
北陸新幹線の福井県の駅前取材

せっかくなら、“福井のええトコ”も知りたいと思い、
もっとディープな場所を探していたところ、
協力な助っ人が現れました。

「滋賀の方に、ぜひ訪れてほしい所があるんですよ!」

真田悦子さん

そう笑いながら、教えてくれたのは、
滋賀県出身、現在は福井県で地域の魅力を、
デザインを通じて発信されてる真田悦子さん。

真田悦子(さなだえつこ)
滋賀県守山市出身。福井に移住して12年。デザイン事務所『GOOD MORNING』ディレクター&デザイナー。眼鏡の聖地・鯖江市で『めがねフェス』を開催し全国から2万人の眼鏡好きを集めるほか、福井県デザイナー協会のひとりとして、特別史跡一乗谷朝倉氏遺跡の誘致事業を手掛ける。

真田さんが連れてきてくれたのが
福井市にある、ここ『特別史跡一乗谷朝倉氏遺跡』でした。

一乗谷空撮

戦国時代の遺跡というと、滋賀県には織田信長が築いた『安土城跡』など
様々な城の遺構が残っています。
しかし、ここ一乗谷では、なんと城下町が丸ごと
遺跡として残っているのだとか……?

気になった私たちは、真田さんの案内で一乗谷を訪れました!

朝倉氏と一乗谷の歴史を伝える『一乗谷朝倉氏遺跡博物館』

「まずは遺跡に行く前に、ぜひ立ち寄ってください!」

と、連れられてやってきたのは、
遺跡の玄関口に立つ『一乗谷朝倉氏遺跡博物館』です。

最寄りのJR「一乗谷駅」までは、JR「福井駅」からJR越美北線で16分。
車でも福井市中心市街から約20分、
北陸自動車道「福井IC」から約10分で来られる距離です。

1階ビデオ

まずは1階の展示で、一乗谷と朝倉氏の歴史について学びます。

五代約100年に渡って一乗谷を治めた越前の朝倉氏。
五代・朝倉義景が近江(滋賀)の浅井長政や比叡山延暦寺と手を組み、
織田信長の天下取りを長年に渡って阻みますが、やがて敗北。

一乗谷の城下町は信長の軍勢によって三日三晩焼き尽くされ、
その跡地は約400年のあいだ、田んぼや土に埋もれたままでした。

1階展示

1967年から50年以上、発掘調査が進められており、
山城や発掘された城下町の遺構を含む、
約478haの範囲が国の特別史跡に指定されています。

地図

こちらの博物館を建設する際の事前調査では、
日本海とを結ぶ物流拠点であった
戦国時代の川湊と考えられる石敷遺構が出てきたのだとか。

港跡

もはや、この谷、そのものが遺跡なんですね!

この遺跡の入り口である博物館から、
遺跡の中心にある『朝倉館跡』までは
歩いて30分以上はかかるそう。

これだけで、この規模感が伝わります。

日本で初めてわかった戦国時代の城下町の様子

この一乗谷は、戦国時代以降、
大規模な都市開発が進められることがありませんでした。

そのため、近代になって発掘調査が始まった際、
遺構を丸々掘り起こすことができ、
戦国時代の城下町の全貌が明らかになる、大きな手がかりになりました。

ジオラマ

博物館の2階、基本展示室には、
実際に発掘された城下町の一部を、
30分の1サイズで再現したジオラマが展示されています。

これが、もう圧巻!
このジオラマも、発掘調査をもとに再現されており、
戦国時代の人々の暮らしや雰囲気がとてもよくわかります。

ジオラマの一部

井戸があって、縁側があって。
約450年前の戦国時代でも、
普段の暮らしは穏やかなものだったのでしょうね。

博物館には、当時の人々の暮らしの様子がわかる
日用品や仕事道具といった遺物が、
数多く展示されています。

日用品

戦国時代の博物館の展示というと
兜や甲冑、刀など、戦争道具のイメージが強いのですが、
この博物館は違います。
城下町の中で、市井の人々がどんな暮らしをしてたのか。
そういう道具の並ぶ様子が、とても新鮮です!

福井で発掘された”滋賀”

「滋賀の方にぜひ、これも見てほしいんです」

と真田さんが指し示したのは、
何の変哲もないようにみえる器。

木地師と器

学芸員さんのお話によると、
これは木地師(きじし)と呼ばれる職人が作った器。

「木地師(きじし)」
伐採した木を轆轤(ろくろ)という道具で
盆や椀、こけしなどに加工する職人のこと。
滋賀県の奥永源寺地域が発祥の地とされている。

じつは木地師は、滋賀県東近江市が発祥で、
全国に技術を伝えた集団。
越前国・福井県でも人々と合流して技術が伝わり、
作られたのかもしれません。

当時から、人々の暮らしの中に、
近江の技が伝わっていた。
ちょっと、感慨深いものがありますね。

滋賀県出身の真田さんは、
続けてこうも教えてくれました。

真田悦子さん

「今年のNHK大河ドラマ『光る君へ』の主人公の紫式部は、
大津の石山寺で『源氏物語』の構想を練ったと言われてますよね。
じつは、この『源氏物語』も、
一乗谷の武家の間で読まれていたそうなんですよ」

え、武士が恋愛小説にハマっていたんですか!?

「どうやら、当時は武士の教養として
『源氏物語』が読まれてたみたいですね。
不思議ですよねー」

学んだあとは楽しもう!戦国大名になりきる博物館

この『一乗谷朝倉氏遺跡』は、学ぶことはもちろん、
いろいろな体験を通じて楽しく過ごすこともできます。

2階には5代当主朝倉義景の住居であった『朝倉館』の一部を
原寸再現した展示室が。

朝倉館原寸再現

この立派なステージは、能舞台。
当時はきっと、雅な能が舞われてたんでしょうねー。
(※この能舞台は常設ではありません。時期によって展示は変わります)

お殿様の気持ちになって舞台を眺めてると・・・

「せっかくなら、殿様の衣装を着てみましょうよ」
と真田さんからの提案が。

どうやらここでは、戦国時代の着物や甲冑を身につけられる
「戦国衣装着付け体験」が楽しめるそう。
(要予約 1枠50分 1着500円)

いや、でも、私たちはいま取材中ですし、
しかも、年齢的にもいい歳なので、
衣装を着るとか恥ずかしいですし・・・

出陣

「であえ、であえー!」
「出陣じゃあ!」
「ははーー!!」

戦国時代の人々の暮らしを学んだ後だからでしょうか。
恥ずかしい気持ちは、どこかに消え去り、
朝倉氏の武将・大名として振る舞ってしまえます。

この衣装は、
展示室内であれば自由に撮影ができます。

それならやっぱり、行くところは一つ・・・

貸衣装での決めポーズ

やっぱり能舞台に立ちたいですよね。
その気になって、舞ってみるのも一興です。

貸衣装での舞

貸し衣装は、男性用の殿様、武将だけでなく、
姫君の着物や、子ども用の衣装もあるので、家族連れやカップルでも、
ぜひ楽しんでみてください!

また1階には「やきものパズル」や
遺跡の土を顕微鏡で覗ける体験コーナーもあり、
遊びを通じて楽しみながら遺跡の調査研究について
学べる仕組みが盛りだくさん。

やきものパズル

実際に発掘調査で見つかった「やきもの」が展示されるまでの
過程をパズルで楽しめるとあって、
特に子どもたちに大人気だそう!大人でも意外と難しい…
ぜひ、挑戦してみてください!

『復原町並(ふくげんまちなみ)』はまるでジオラマの中

博物館を出て、いよいよ遺跡の中へと入っていきます!

最初に訪れたのは『復原町並』と呼ばれる施設です。

復原街並

遺構をもとに武家屋敷や町屋を忠実に復原した建物が
並ぶ通りとなっており、自由に散策を楽しめます。

通りと人

歩いているとまるで、
あの博物館の展示で見た当時の人々の暮らしの中に
入りこんだかのような気分に!

門の先

門を一つ出入りするだけで
現代と戦国時代を、行き来できる。
不思議な感覚です。

戦国の夢と現実がコラボする『朝倉館跡』

最後に案内してもらったのは、
5代当主朝倉義景の館があった『朝倉館跡』です。

朝倉館跡

江戸時代に建てられたと伝わる『唐門』をくぐると、
柱の跡などの遺構だけが広がっていました。

俯瞰

「あそこに見える緑の部分、
じつは日本最古の花壇跡なんですよ。
さっき博物館で見た、能舞台が組まれてた場所ですね」

能舞台!知ってます!
博物館で着付けをしてた、あの館ですね!

そういう体験があったおかげか、
当時の建物の様子が目に浮かんできます。
「遺跡に行く前に博物館に立ち寄って」という真田さんの話の意味が、
わかったような気がします。

再び集え!北陸新幹線で、いざ福井へ!

最後に真田さんは出身地の滋賀県の人々に向けて、
こう語ります。

真田悦子さん

「一乗谷の朝倉氏は、現在の長浜市・小谷城の浅井長政と
強い同盟で結ばれていたと聞いています。
それだけでなく、一乗谷から京の都までの道が、
近江国になります。だから、朝倉氏は、
朝倉氏は近江のことを何かと気にかけていたそうです。
昔のほうが福井と滋賀の交流が盛んだったのでは、
と思うくらいですよ」

真田悦子さん笑顔

「だから、北陸新幹線をきっかけに滋賀との
新たな交流が生まれたらいいですよね!
『再び集え!』という感じです!」

かつて、多くの人が集い繁栄と平和の時代を築いた一乗谷。
城下町は、一度は滅びてしまいましたが、
その保存状態が良好だったおかげで、
再び、注目を集めつつあります。

春には地元の小学生たちやピクニックに来たり、
家族連れがのんびり過ごしたり。
人も集まる場所になりつつあります。

遺跡というと、歴史に疎い人は敬遠しがちですが、
ここでは、誰もが気軽に、当時の雰囲気が味わえます。
知らなくっても楽しめる。
知って行けば、もっと楽しめる。

今もなお発掘調査が行われており
“生きる”遺跡として発展を続ける
『特別史跡一乗谷朝倉氏遺跡』。

訪れてみたら戦国時代の人々と
繋がった気持ちになれるかもしれませんね!

イベントのお知らせ

この特別史跡一乗谷朝倉氏遺跡で、2024年3月23日~24日にかけて
一乗谷文化祭 』というイベントが開催されます!

一乗谷文化祭

当時は戦国大名の文化・教養として欠かせなかった
“蹴鞠(けまり)”を再現する、
フリースタイルフットボールのパフォーマンスのほか、
福井に関連するアーティストのライブや、
地元食材のグルメもズラリと揃うとか!

入場は無料。
春の一乗谷で、戦国時代の賑わいを、
一緒に味わってみませんか?

詳細は、公式サイトをご覧ください!

→2024.3.23&24 一乗谷文化祭 | ふたたび、文化が集い、人が集う谷へ。| 一乗谷朝倉氏遺跡で当時の賑わいに思いを馳せる1日


(取材・文:結城弘 編集:しがトコ編集部)

記事を書いた人
結城弘/滋賀県出身。小説家・ライター。滋賀が舞台として登場する小説『二十世紀電氣目録』『モボモガ』を執筆。趣味は旅行、レトロ建築巡り、ご当地マグネット集め、乗り(呑み)鉄、地酒開拓。各SNS⇒ Twitter(X) Instagram note

『一乗谷朝倉氏遺跡博物館』の詳細

住所
福井県福井市安波賀中島町8-10
開館時間
9:00~17:00(入館は16:30まで)
定休日
毎週月曜日、年末年始
基本展示観覧料
一般700円、高校生400円、小中学生200円、70歳以上350円 ※特別展示の観覧料は別途必要
電話番号
0776-41-7700
公式サイト
https://asakura-museum.pref.fukui.lg.jp/

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