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信長ゆかりのお寺がアートの舞台に!見応えたっぷりの『浄厳院現代美術展』が開催中

【2022 AT ARTS EXHIBITION ​浄厳院現代美術展/滋賀県近江八幡市】

織田信長が安土城の築城とともに建立した
古刹「浄厳院(じょうごんいん)」の本堂や書院、
庭園を舞台に「現代美術展」が開催されています。

お寺の釣鐘に絵画を巻き付けたり、
障子に映像作品を映し出したり…。
想像のはるか上をいく表現方法に驚きがいっぱい!

参加しているのは、国内外のアート作家26人。
その中には、戦禍が続くウクライナの画家や、
ロシアと親交が深い日本の作家もいます。

世界では悲しい戦争が続く中、
芸術の持つ力を信じる作家たちが、
それぞれの祈りを込めた美術展でもあります。

展示は約200点!
“今しか見られない”作品の数々を見に、
足を運んでみてはいかがでしょうか。

織田信長が創建した「浄厳院」も必見!

浄厳院 楼門

今回の美術展の会場は、真っ赤な楼門が目を引く「浄厳院」。
天正5年(1577年)に織田信長が
佐々木六角氏の菩提寺「慈恩寺」跡に創建した寺院です。
浄土宗と日蓮宗との間で争われた「安土問答」の場としても知られています。

本堂外観

敷地内には本堂をはじめ、7つの国指定重要文化財があり
歴史や威厳を感じる立派な建物は見応えたっぷり!

木造阿弥陀如来像

普段は拝観に予約が必要な本堂も
美術展の会期中はいつでも拝観することができます。
本堂には平安時代の作と言われる、
浄厳院本尊の木造阿弥陀如来像が安置されています。
天井いっぱいの迫力ある姿は、必見です!

※特別に許可を得て撮影しています。

歴史的建造物と作家のインスピレーションが生み出した、この場限りのアート!

奥田誠一さんの作品

会場のひとつ、「車裏(本房)」と言われる建物に足を踏み入れると、
さっそく不思議な光景が待っています。
地元・滋賀県近江八幡市の作家・奥田誠一さんの作品です。

焼き跡のついた和紙を重ね合わせることでできる
独特の模様が強い存在感を生んでいます。
畳やふすま、壁からせり上がり、また沈んでいく…。
古い建物で感じる不思議な存在感が形になったような感覚があります。

コマノエ

除夜の鐘などで突かれる「梵鐘」も作品の一部に。
梵鐘のある「鐘楼」全体を作品に見立てた、
小松原智史さんの「コマノエ」。
墨や和紙で立体的に作り上げられています。

もちろん鐘は突けなくなりますが、
「こちらでは除夜の鐘で使うのみ」のため大丈夫なのだそう。
「鐘楼」の中に入れること自体も貴重な体験です。

動物たちの寄り合い

「車裏」の小さな部屋に展示されていたのは
佐藤紘子さんの「動物たちの寄り合い」。
部屋の三方に、いまにも動き出しそうな動物が描かれています。
真ん中に置かれている「座布団」が
絵を独占できる超贅沢な「特等席」です。

岩澤有徑さんの作品

「車裏」で最も大きな部屋では、
岩澤有徑さんの作品が目をひきます。
障子に投影した映像作品と、
屏風に金箔などで描いた模様のコラボレーションです。
薄暗い部屋に広がる幻想的なイメージが、
いつかの記憶を呼び起こすかのような不思議な世界を作っています。

7人の作家が住み込みで制作。まるで〝合宿〟のレジデンス

アーティストinレジデンス

この美術展の大きな特徴は、海外から5人のアーティストを滋賀に招き、
現地で制作にあたってもらうという、
「アーティストinレジデンス」に取り組んでいることです。
共同生活を送り、互いに交流しながら作品を仕上げていくのです。

滞在が始まってからすでに早1か月。
参加者は「まるで合宿や寮生活のようで充実していた」と。
その成果が披露されています。

マリア・ルイーザ・フィラトヴァさん

ウクライナから参加した、マリア・ルイーザ・フィラトヴァさん。
写真に映る作品は、故郷が美しく萌える春を描いたもの。
「故郷では悲しみが溢れています」と語りつつ、
あえて静かで伸びやかに描かれた作品には、
ルイーザさんが見る未来への希望が表現されています。

パク・ジンファさん

韓国から「レジデンス」に参加したパク・ジンファさん。
絵画作品の素材に「浄厳院」周辺の石などの自然物を用いて描いています。
指さす先の作品は、日本に来て最初に手掛けた作品。
来日の心象をダイレクトに伝えています。
右に映る作品などには、韓国の伝統的な模様も取り入れていて、
文化的な背景が見えてくるのも魅力です。

アンボラさん

アンボラさんも韓国から参加し、いくつもの作品を仕上げました。
手掛けた作品の中には、「レジデンス」をともにした他のアーティストの姿が。
一緒に過ごした時間の〝かけがえのなさ〟を伺わせるものとなっています。

とくにウクライナ出身のルイーザさんと交友を深めたアンボラさんは
作品にルイーザさんと滋賀で見た大きな虹を描き、
ルイーザさんへの思慕を表しました。

それぞれの祈りが込められた作品の展示総数は約200点!

鈴木マヤ子さん

赤や黒などの力強い絵柄が印象的な鈴木マヤ子さんの作品。
円卓に並ぶのは、マトリョーシカです。
鈴木さんはロシアでの滞在制作を経て、
ロシアと親交を深めてきた作家として、
ウクライナとロシアをめぐる状況に深く心を痛めているひとりです。

美術展にマトリョーシカを出展しようと決めたのは、
ウクライナ情勢が緊迫する前でした。
「こういう事態になって逆風もありました。
でも出展する作品を変えてしまうのではなく、
作品が持っている〝力〟を信じることで希望を見出したい」と。
作品のタイトルは『未来からの呼び声』です。

朱の絆

野外作品のひとつが、横山栄一さんの「朱の絆」です。
1年以上にわたって複数回、
浄厳院の庭の手入れに参加してきた横山さん。
穴が開いた石を偶然見つけ、その上に瓦や綱を載せる作品を仕上げました。
作品のベースになったのは平和への思い。
作品に使った瓦を境内で見つけた際、
書かれている「卍」マークに、かつての独裁者を思い起こしたと言います。
「決して繰り返してはならない」との思いを託した作品です。

守破離光

本堂と書院をつなぐ廊下に展示されているのは、レイさんの「守破離光」。
美術界の定石にとどまらない大胆さが魅力です。
「人間が生きるのには、芸術が必要」とまっすぐに言い切るレイさん。
写真は作品の一部で、「光」という漢字を模した部分。
未来への希望を託した作品となっています。

一粒の種

和田健一さんは、未来に希望を託す「一粒の種」を展示。
「思いを込めた種は未来でどんな花を咲かせるでしょうか」と和田さん。
十分な感染症対策がとれれば、参加型の作品になる予定です。
ぜひ、あなたの思いも形にしてみてください。

西村のんきさんの作品

「春陽院」の座敷に展示されていたのは、
この美術展を主宰する西村のんきさんの作品。

作品に共通する構図「クロス」は、
さまざまな人が交流し、交わる様を表現しています。
座敷の前の庭園に、いくつもの鏡が据え付けられていて、
鏡に反射した光が絵に投影されるのも見どころです。

違う文化が交わる面白さ

浄厳院での美術展は今年で3回目。
初回からコロナ禍に見舞われ、
今年は少しずつ日常を取り戻してきたと思った矢先、
ウクライナが戦禍となりました。

しかし、西村さんらは「人にとってアートは絶対に必要なもの、
なくしてはないけないもの」と開催にこだわってきました。
「芸術作品は、それぞれの文化の背景を一瞬にして伝え、
しかも〝差異〟を受容し、共存できる。」
西村さんが強調している点です。

一見、難解で難しいイメージがある「現代アート」。
しかし、見たまま感じたままが正解とも言えます。

浄厳院の副住職・勝山宏隆さんもこう話します。
「私たちは日常でなんだかわからないものに直面すると立ちすくんでしまう。
なんでも白黒ハッキリすることが求められる現代で、
お寺くらいはそういうものを受け入れる場であればと思っています」。

西村のんきさん

「文化や芸術が平和への歩みをリードすべき、
って思っているんです」と西村さん。

〝ともに生きる世界〟を目指し、滋賀でもっと文化を耕したい。
世界から来たアーティストも、それぞれの心の中で耕してほしい。
美術展の根底には、西村さんのそんな願いが込められています。

会期中は再入場も可能。時間をかけてじっくりと鑑賞しよう


会期中は週末に本堂でギャラリートークやライブ演奏、
パフォーマンスなどの催しも予定されています。

10月29日(土)・30日(日)
全日 裏千家お茶会
11:00~、14:00~ ギャラリートーク

11月3日(木・祝)
14:00 Arts Flying Pan 舞踏&ライブ音楽

11月5日(土)
14:00 ギターアンサンブル湖風

11月6日(日)クロージングパフォーマンス
14:00 Bumblebee ジャズコンサート

マップ

入場料が必要ですが、会期中は何度も再入場ができます。
時間が許す限りじっくりと時間をかけて、
鑑賞することをおすすめします!

(取材・文:川島圭 写真:山本陽子 取材・編集:しがトコ編集部)

『浄厳院現代美術展』の情報

住所
滋賀県近江八幡市安土町慈恩寺744
開催会期
2022年10月22日(土) ~11月6日(日)
開場時間
10:00〜17:00
公式サイト
https://nonki510nishimura.wixsite.com/website-1

提供:滋賀県 「滋賀をみんなの美術館に」プロジェクト http://bino-shiga.net/

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