カルチャー

小野龍光さんと滋賀で過ごした15時間。しがトコ編集部の密着レポート!

【小野龍光さんと過ごした15時間】

まだ肌寒い春だったある日の早朝、
東京発の夜行バスで僧侶がひとり、
滋賀の地に降り立ちました。
太陽はまだ昇らない薄暗い夜明けに、
JR南草津駅のバス降車口に
黄色の袈裟を着てたたずむその姿は、
すこし異様にも見えて……。

ご縁があればどこへでも

僧侶こと、小野龍光さんは2022年まで17LIVECEOを務め、
IT時代の先駆者として、
日本のSNS時代をつくりあげてきた人物。
インドで突如出家して以降は、
自宅があるオーストラリアと日本を行き来しながら、
「ご縁があればどこへでも参ります」というスタンスで、
全国各地を行脚しています。

なぜ、IT業界のトップを走り続けてきた小野さんが僧侶に?
ぜひお話をお聞きしたいということで、
滋賀にお越しいただき、講演会を開催しました。

せっかく滋賀に来ていただくなら、
琵琶湖で瞑想はどうでしょう?
「それは良いですね!」と快くお返事をいただき、
早朝5時に滋賀の南草津駅で待ち合わせすることになりました。

ただ、講演会のスタートは午後3時。

それなら!ということで、琵琶湖瞑想のあとは、
小野龍光さんが参りたかったという比叡山延暦寺へ。

さらに、講演会の開催地である
守山市の市役所にも向かい、市長を表敬訪問。
そんなスケジュールで講演会スタートまで、
小野さんと一緒に過ごしました。

神秘的な琵琶湖の瞑想

琵琶湖で瞑想01

冷たい夜の空気に包まれた大津湖岸なぎさ公園。
かすかに吐く息が白い、まだ寒い日のことでした。
遠くに見えるのは近江大橋と、街のあかり。

琵琶湖に到着してすぐ、インドの袈裟をまとった小野さんは
肩を出したままのスタイルで、寒空のなかで静かに波打つ
琵琶湖を見つめながら、ゆっくりと瞑想をはじめました。


この日の「日の出」は5:45。
瞑想をはじめて20分ほどでしょうか。
暗い夜空が薄紫に色を変えて、太陽がもうすぐ顔を出す瞬間。

それまで凍えそうな寒さを感じていた肌が強烈な光に照らされて……。

琵琶湖で瞑想03

「太陽ってあたたかい」

小野さんの瞑想シーンを見守っていた私たちしがトコスタッフも
思わず声にだしてしまうほど。
太陽をこんなにありがたく感じたことはありません。

その間、小野さんはおよそ30分、じっと動かずに瞑想を続けていました。

「じつは、太陽が昇るまではもう寒くて寒くて…。
ずっと平均台にいるような感覚でした」と、
瞑想中のことを苦笑いしながら話してくれた小野さん。

ちょっと気を緩めると、平均台から落ちてしまう。
そんな寒さとの戦いが繰り広げられていたことは、
あの静かな瞑想姿からは想像できなくて、
人間らしい小野さんの一面を知って、急に親近感が湧いてしまいました(笑)。

比叡山延暦寺を訪れて

比叡山延暦寺
その後、一行が向かったのは「比叡山延暦寺」。
滋賀に行ったついでに立ち寄るつもりだと言う小野さんの言葉を聞き、
それならお連れしますよと今回のルートが決定。
ご案内いただいくのは、延暦寺参拝部の秦行亘さんです。

比叡山延暦寺の地図
比叡山延暦寺は延暦7年(788年)に最澄が開創。
1200年以上の歴史を持つ天台宗の総本山で、滋賀県大津市と京都市にまたがります。
国宝的人材育成の学問と修行の道場として、
法然、親鸞、日蓮をはじめ、日本仏教各宗各派の高僧を輩出した聖地です。


最初に向かったのは「戒壇院」。
ここは、天台宗で「正式な僧侶」となるための儀式を行うお堂で、
儀式は年に一度だけ。僧侶にとっても
中に入れるのは生涯に一度だけという特別な場所。
そんな説明に小野さんも熱心に耳を傾けています。

移動中
今回、ご案内いただいた延暦寺の「東塔(とうどう)」は、
本堂にあたる根本中堂や、大講堂、戒壇院などの重要な堂塔や、
国宝殿、延暦寺会館などが集まっている中心エリアです。

移動中にも、おふたりのお話は尽きないようで、
そのお坊さんの後ろ姿をじっと眺めているだけでも、
なんだかありがたい気持ちになっていたのでした。

大講堂
次に向かったのは「大講堂」。
僧侶がお互いに問答し、勉強する学問修行の道場です。
ここでも食い入るように熱心にお話を聞く小野さん。
その後も、延暦寺の秦さんの説明とともに、
2016年から10年かけて大改修を行なっている、
国宝の根本中堂などを見学し、
およそ2時間ほど東堂エリアを巡りました。

移動中、ところどころでおふたりは立ち止まり、
「なぜインドへ?」「現地の様子はどうでしたか?」
と延暦寺の秦さんも、小野さんに興味津々。

一方で、にこやかに語る姿からは想像できない、
延暦寺秦さんの修行体験も飛び出して……。

お互い耳を傾けながら向き合う姿をみていると、
「傾聴」ってこういうことを言うんだなと、
そばで見ているだけでも、なんだか学びが多い時間。

お別れ

東塔を一巡し、延暦寺の秦さんとはここでお別れ。
「またご縁がありますように」と
にこやかに会釈する姿が印象的でした。

午後からの講演会に向けて、さあ、
会場のほうへと移動です!

琵琶湖を見つめる

道中には奥比叡ドライブウェイ途中にある
「びわ湖展望台」へ。
目の前に広がるのは琵琶湖の絶景!
遠くには琵琶湖に浮かぶ有人島「沖島」も見えます。

琵琶湖大橋や、大津市堅田の街並みを
見下ろしながら、
「ここから見る琵琶湖は本当に美しいですね」
と、小野さんも感動。

琵琶湖の大きさを感じてもらいたかった
私たちしがトコスタッフにとって
「よっしゃ」と、ガッツポーズしたくなる瞬間でした!

講演会の開催地、滋賀県守山市へ

講演会の会場があるのは、滋賀県守山市。
今回の小野さんのお話を事前に守山市長へ伝えたところ
「それはぜひお会いしたい」と時間をとっていただけることに!

守山市は琵琶湖を舞台にした「トライアスロン」の開催地でもあり、
琵琶湖を自転車で一周する「ビワイチ」の
発着地としても知られるサイクルスポット。

守山市長と

じつは、小野さんも僧侶になる前は、
南極、砂漠、アマゾンと過酷な世界のマラソンにも挑戦し
型破りなランナーとして知られていました。

守山市と小野さんが、意外にも「アスリート」のキーワードで
つながることがわかり、30分のお話も終始盛り上がります!

話しに聞き入る会場

そうして、バタバタと慌ただしく過ぎていく時間とともに、
講演会の会場である守山市「チカ守山」に到着。
すでに会場には、新潟から沖縄まで、
その半数は滋賀県外から集まった約50名の参加者が。
小野さんの登場をいまかいまかと待ち構えています。

守山市長の挨拶

講演会のはじまりの挨拶に森中市長も
わざわざかけつけてくださいました。

IT業界の第一線で活躍されていた小野さんが、
なぜ「さまようボウズ」となったのか。
講演会は、そんな興味深い話からスタートしました。

講演会の様子はレポート記事や動画でも詳しくご紹介していますので、
気になるかたはぜひチェックしてみてくださいね。

関連記事:「風景は自分(セカイ)につながる」小野龍光さん講演会の様子をレポート!

関連動画:【小野龍光】ナゼ出家の道を?風景は自分(セカイ)につながる【講演会in滋賀】

関連動画:【小野龍光】1日密着ダイジェスト!AM5:00琵琶湖の瞑想から延暦寺へin滋賀

風景は自分(セカイ)につながる

琵琶湖で考えたこと

「僕らが目にする世界のあり方は、
僕らの心が見せている世界です」。

講演会の最後に小野さんは、
琵琶湖の美しい瞑想時間の映像とともに、
そんなことを話し始めました。

琵琶湖瞑想にて

瞑想は、自分の呼吸や身体の状態を静かに観察し
「今ここ」に集中することです。

未来という字は「いまだこない」と書くように、
未来のことはわからない。考えたってきりがない。
逆に、過去は過ぎ去っているので変わらない。

「やるべきことは、ただ今の自分に集中すること」。

それが仏教の基本的な考え方でもあると小野さんは話します。

今日やること、明日やること、来週やること、
半年後の予定、いやいや1年後は……。

いつも「いまだこない」未来のことばかり考えて
頭を悩ませることも多い日常の中で、
ふと、琵琶湖や、滋賀の美しい風景をぼんやりと見つめると
波打つ心が、シーンと穏やかになっていくような
感覚にとらわれることがたびたびあります。

瞑想の入り口は、意識せずともつねに日常の中にある。
それは、もしかすると、ただ一心に耳を傾けて、
相手の話にじっと聞き入ることもそうかもしれません。

「今ここ」に集中することは、
普段の生活とかけ離れた場所にあるわけじゃない。
そう思えたのは、早朝の琵琶湖での瞑想や、
その後の、延暦寺での小野さんの姿勢を
そばでずっとみることができたからでした。
小野さんと過ごした15時間は、しがトコにとっても
これからも忘れられない体験です。

(取材・文 亀口美穂 写真 山本陽子)

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