【ナガハマムービーフェス/滋賀県長浜市】
長浜をテーマにした短編動画イベント
『ナガハマムービーフェス』が3月に開催されました。
会場には、昨年、日本映画界を席巻した「カメラを止めるな!」の
上田慎一郎監督も特別審査員として登場!
上田監督は長浜市木之本町出身。
カメラを手に長浜市内を撮り回った思い出話なども明かされ
監督の作品の原点にもなっている長浜の魅力が浮き彫りになりました。
熱気に包まれた会場の様子とともに、上田監督の単独インタビューをレポートします!
初開催の『ナガハマムービーフェス』。上田監督に続く奇才は現れたのか!?
2019年3月2日。
「えきまちテラス長浜」で『ナガハマムービーフェス』が開催されました。
誰もが気軽に動画撮影できるようになった時代だからこそ
移りゆく町の景色や自然の姿を動画で発信し
新たな長浜の魅力の気づきにつなげていこうというイベントです。
司会は(写真右から)ラジオDJ・ケイミーさんと、
長浜出身のフリータレント・もえりーぬさん。
多くの人が詰めかけた会場の最前列には、上田慎一郎監督の姿もあります。
当日は、応募された39作品の中から選ばれた
11作品の上映と受賞発表が行われました。
上田監督は、この前日に開かれた「日本アカデミー賞」で
9部門入賞という快挙達成したばかりですが、授賞式の疲れも感じさせず
ひとつひとつの作品を真剣に見てくれています。
上映されたのは、長浜で生まれ育ち、
長浜をよく知る人々が撮った、地元目線の動画。
曳山まつりなど長浜の歴史文化を感じるものから
亡き母への想いを込めたもの、コメディタッチもの、
高校の演劇部の作品などもありました。
「一般部門最優秀賞」に選ばれたのは
長浜出身のシンガーソングライター・池崎浩士さんの『もともとのこれから』。
中学生や高校生の頃によく遊びに行っていたレンタルビデオ店なども登場し
「あ~、ほーいえば、ほーやった」(注:長浜弁です)と共感できる作品。
「スタッフ、キャスト含めて、作り手がすごく楽しんで作っているのが伝わってきました。
しかも、カメラワークもよかった。ライン画面で会話をやりとりしたり、
工夫も凝らされていて、すごく好感が持てました」と上田監督。
また、「上田慎一郎賞」には
でん一徳さんの『湖と花火と母と』が選ばれました。
受賞した作品について上田監督は
「単なる情報として見る記録映像ではなく、
そこに物語を感じて心を動かされるものがこの映像にはありました。
編集も独特で、生々しいものと美しいもの、それぞれが断片的に紡がれていって、
他の作品と比べると異質な毛色の違うものでしたが
そこに作り手の切実さを感じて心を動かされました」とコメント。
上田監督が初めてカメラを回した長浜の地から
新たな才能が発掘されることが大いに期待できるムービーフェスとなりました。
上田慎一郎監督が想う、長浜とムービー
――今回の『ナガハマムービーフェス』では審査する立場でしたがいかがでしたか?
上田監督:単純に楽しかったです(笑)。
どれも自分が生まれ育った長浜市の映像だったので、
「わー!ここ出てるやん!」「ここの場所知ってる!」とか。そういう楽しさがありましたよね。
一般の方の応募がほとんどだったので、映像を作る楽しさの初期衝動みたいなものが詰まっていて、
それはすごくニヤニヤしてしまったというか・・・微笑ましかったです。
――楽しんでいただけて良かったです!
上田監督:審査員って、すごく刺激や楽しさをもらえる反面、
適当には見れないじゃないですか。一作品ずつきちんと見ていくには、やっぱり時間と労力が必要で。
だから、審査員をしたのは、今回の『ナガハマムービーフェス』と、あとは
高校映画甲子園という高校生の日本一を決めるというものくらいで。
――上田監督が審査員をするというのは、あまりない?
上田監督:そうなんですよ。この『ナガハマムービーフェス』のお話は
結構早い段階からもらっていたし、最初は「審査員かぁ…」と思いつもも(笑)。
何より地元の長浜市が舞台で、一般の人の撮った映像が見られる!
もう、これはやってみようと思いました。
――監督にとって、ずばり長浜ってどんな場所ですか?
上田監督:ずばり、僕が初めてカメラを回した場所です!
正確には、長浜市木之本町ですね。
――カメラを回し始めたのは、いつ頃ですか?
上田監督:中学校の頃かな。
ちゃんとした作品は高校のころから撮り始めたんですよ。
――長浜のどんなところで撮ってたんでしょう
上田監督:やっぱり琵琶湖とか、豊公園とかはよく行きましたね。
高1の時に文化祭用に撮った作品は、学校と豊公園をメインで撮ってました。
豊公園は、公園の中だけでもいろんな場所があるので絵変わりもするし、撮りやすいんですよ。
高3の時は現代の若者が戦争時代にタイムスリップする「タイムトラベル」っていうのを
山にこもって撮りましたよ。長浜には琵琶湖だけじゃなく、
山もありますからね。真ん中には街もあるしね。
――地元で過ごした日々は、いまの作風にも影響していますか?
上田監督:僕のルーツですよね。
特に「カメラを止めるな!」は、僕が中高生の頃に撮っていた作り方に近いというか。
――すでに中高生の頃から?!
上田監督:「カメラを止めるな!」は、新人の役者さんたちとワークショップを重ねて、
その人たちのキャラクターに合わせて、当て書きをして作ったんですけど、
高校生の時も、それに近いことをしていたので。
学校のクラスの友達の個性を掴んで、当て書きで脚本を書いて、それぞれに見せ場を作って。
――「カメラを止めるな!」の原点は長浜にあったんですね!
上田監督:僕が監督として上から指示を出すという感じではなく、
出演者、スタッフが横一線で作品を作っていたという感じなので、
そのあたりのスタイルは、長浜で築かれたものだと思いますね。
――その「カメラを止めるな!」が、3月1日に行われた「日本アカデミー賞」では、
9部門で入賞という快挙を達成されましたね。本当におめでとうございます!
上田監督:監督、脚本、編集、作品、撮影、録音、音楽、話題賞をいただきました!
編集部門はまさかの最優秀賞で、いやー嬉しかったです!
――編集力が評価されたんですね
上田監督:高校三年生の頃からパソコンで編集をはじめて、
編集の魅力みたいなものに夢中になったんですよね。
そこから自分の作品は自分で編集してきました。
たぶん他の受賞映画は、良い編集室で最新の機材を使って編集されたと思うんですが、
僕は自宅にある7年前に買ったMac pro一台でほぼ全ての編集をやったので。
まさか、それで最優秀編集賞がいただけるとは!とても感慨深かったですね。
――監督みずから編集していたとは驚きです
上田監督:編集には最新の機材とか良い設備というのはもちろん大事だとは思いますが、
やっぱり人の「閃き」だったり「粘り」が必要なんだと思うんです。
そいうことを改めて信じられたので、すごく自信にもなりました。
――地元長浜で初めて開催された「ムービーフェス」は、どうでしたか?
上田監督:東京とかだと、自主映画やインディーズ映画を作っている人は
いっぱいいると思うんですけど。地元では、なかなかいないですよね。
僕はまぁ長浜の木之本で映画を作ってましたが(笑)。
実際問題、東京だとどこで撮るにも許可がいるので、撮りにくいというのはあります。
でも、長浜ってそんなうるさくないですよね?
すごい田舎もあれば、駅前や商店街もあって。琵琶湖もあって、撮りやすい環境がいっぱいある。
これからも『ナガハマムービーフェス』が続いていくなら、
映画祭と連動した映画チームみたいなものを作って、
毎年の発表の場にしていくのはどうでしょう?
――なるほど!
上田監督:まず中学にも高校にも映画部ってないですよね。
きっと社会人の映画製作チームとかもないと思うんですよ。
『ナガハマムービーフェス』が、そういう人の受け入れ先になれればいいなと。
やりたいけど仲間がいないとか、どうやっていいかわかんない。
そんな人はいっぱいいると思うんです。仲間がいないと映像は作れないですよ。
そういう作れる環境を『ナガハマムービーフェス』で盛り上げていただきたいと思います。
――僕も実行委員のメンバーをしているので、
ぜひがんばりたいと思います!!今日は大変興味深いお話をありがとうございました。
(取材=やませたかひで /写真=清水康雄 /企画・編集=亀口美穂@しがトコ)