カルチャー

ありがとう、西武大津。歴史と軌跡を振り返る「44年のあゆみ展」が開催中です。

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【西武大津店/滋賀県大津市】

西武大津店の歴史と軌跡を振り返る企画展
「44年のあゆみ展」が6月19日(金)から始まりました。

西武グループ創業者 堤康次郎(つつみやすじろう)氏の
出身地、滋賀県で長年愛された百貨店が
2020年8月31日、ついに閉店を迎えます。

開店当時の貴重な写真が展示されている様子をご紹介します。

会場は7階レストランフロア

エスカレーター
6階の吹き抜けにあるエスカレーターに乗り、7階へ。
レストランフロアで「44年のあゆみ展」は開催されています。

案内
展示のエリアは大きく2つ。
あえて展示場所を離し、一か所に人が集まりすぎない配慮がされています。

「びわ湖放送」のエリアも、当初は映像を流す予定が
足を止めて見ることになるため、映像写真の展示となるなど
”三密”に配慮された展示となっています。

埋立地に建った百貨店。歴史をふりかえる、展示内容のご紹介

今昔
まず目に飛び込んでくるのは、大きな「今昔」写真。
開店当時と今、時の流れがひと目で分かります。

正面比較
正面からの比較写真。
くす玉が割れ、アドバルーンがあがるにぎやかな写真(左)には
大きな電柱と電線も写っています。
開店当日には、なんと13万人もの来店があったそう。

展示写真
当時のファッションを着こなす女性、
エスカレーター横の、星座をあしらったモダンな装飾、
買い物を楽しむたくさんの人たち…。
「確かにあった、あの頃」が、エネルギッシュに伝わってきます。

白黒西武
きりりと凛々しい、オープン当時の西武大津店。
右手前にある建物は、若者向けの商品を扱う店舗が並ぶ
通称「ホビー館」。

建物の内部は緩やかな傾斜の通路でつながり、
階段を登らず上から下まで買い物できるつくりでした。
こちらも、今はその姿はありません。

正面道路
道路の形はそのままながら、道を挟んだ反対側には
たくさんの住宅が並ぶ街並みです。

跡地に立つ
実は、びわ湖大津プリンスホテルから浜大津アーカスがある
「におの浜エリア」は、広大な埋め立て地。
1968年には、日本万国博覧会(大阪万博)のプレイベントとして
「びわこ大博覧会」が開催。その跡地に西武は建っています。

6月某日、びわ湖に出るぞ。

ネッシーポスター
当時の新聞広告は、とても斬新でした。
開店前に出されたのは、「百貨店がオープンします」とは
一切書かれていない、ネッシーの写真。

目を引くキャッチーさは十分なものの、
「予告登場するネッシー」を求めて
カメラマンが殺到しなかったのかな?と
今更すぎる心配をしてしまいます。

オープン広告
店舗のオープンを知らせる広告はこちら。
新聞広告としては、
令和の今ならギリギリアウト…ではなかろうか、という、
攻めた写真が使われています。

ネッシーについて追記はないものの、
大空真弓さん、森昌子さん、石川さゆりさんなどが
オープニングイベントに登場したことや、
「テクニトーン教室」や「おもちゃ病院」があったことなど、
当時を知るには読み応えのある広告です。

ネッシー吹き抜け
ちなみに、ネッシーは琵琶湖ではなく、
店内の吹き抜けエリアにちゃんと登場していたようです。

思い出グッズ
こちらは、思い出グッズの展示コーナー。
オープン記念のマグカップは、ネッシーの写真の箱に入っています。

一級建築士 本田明氏の写真展示

本田さん
「西武大津店、閉店」のニュースが駆け抜けた2019年10月。
しがトコでは、当時を知る高島市在住の一級建築士、
本田明さんに寄稿を依頼しました。

公開した記事は、12月の公開にも関わらず
「しがトコ年間ランキング」にランクインし、話題に。

西武大津閉店に寄せて。70年代の写真とともに一級建築士本田明氏による寄稿

その記事が西武大津店の担当者の目に止まり、
「44年のあゆみ展」に本田さんの写真が展示されることに。

取材当日、本田さんにもお話を聞くことができました。

本田さん2
いわゆる「建築の記録写真」と異なり、
本田さんの写真には、多くの人や車などが写り込んでいます。

当時の活気が色鮮やかによみがえったパネルを見て、
「ネガが古くて心配やったけど」と、本田さんも一安心の様子。

本田さん3
1977年4月、大津の設計事務所で働き始めた本田さんは20歳。

建築界の大御所、 菊竹清訓(きくたけきよのり)氏の設計した
西武大津店に「見るのも仕事」と勉強のため足を運んだそう。

本田さん4
「百貨店は、店内の階段ってあまり使われないから、
質素な作りのところが多いんだけど。
西武はトラバーチンという石材を使った丁寧な作りで、感激しましたね」

「トイレがおしゃれにデザインされててね。それがほんとに斬新だったね」

建築家らしい着眼点から、当時を懐かしむ本田さん。
なにより、西武大津店ができてから数年で
みるみる街の姿が変わったことが、一番驚いたといいます。

「JR膳所駅から西武に続く”ときめき坂”に、どんどん商店ができて。
集客する拠点があると、街が変わるんだってことを目の当たりにしました。
反対に、西武がなくなるこれからは、どうなっていくのかな…」

本田さん5
「私の小さなころは、京都大津へ父母に連れられて行く、
なんてことがあったら、一大イベント。
百貨店の食堂でお子様ランチなど食べようものなら、
こぼしたらあかん、とか、行儀悪い食べ方をしてたら、
周りの人に笑われる、とか。
”ハレ”の緊張みたいのがあった気がします」

1979年吹き抜け

1979年 6階吹き抜け(写真提供:本田明氏)

「今日は祭りやから、おろしたての新品の服を着る」
「正月や歳時記的行事は、家族みんなが一張羅の服を着よう」
そういう日のために、百貨店があった。

今はそんな”ハレの場”のイベントがなくなった、と語る本田さん。

2020吹き抜け

2020年 6階吹き抜け(写真提供:本田明氏)

この6階フロアには客席を備えたホールがあり
ファッションショーもおこなわれていたそう。

「百貨店が文化を発信する」
そんな気概があった当時。

現在は、ホールは催事場スペースへ姿を変え、
吹き抜けエリアも、人の数はまばらです。

デッキ
デッキへ出てみると、開店当時はなかったテナントの看板が迫ります。
かつてパルコだった建物も、「Oh!Me大津テラス」に。

本田さん6
眼下に広がる大津の街を眺める本田さんに、
西武の閉店をどう思いますか、と聞いてみました。

「商業の形が変わったんだな、というのが、率直な感想です。
今は、ワンクリックで自宅に物が届く時代。
店舗はネットと違い”実際に触れる”ことができるけど、
今後展開する商業の”しかけ”は、それだけでは難しい気がします。
百貨店という業態が閉店することは、時代の一つのマイルストーンで
あることは確かですね」

「さよなら」は、一人ひとりで足を運ぼう

正面カウントダウン
正面玄関にまわると、閉店までのカウントダウンが
始まっていました。

これを見て、ようやく「本当に閉店してしまうのか…」と
込み上げる悲しみとともに実感がわいてきます。

取材に対応してくれた西武大津店の藤井さんは
「お客様へのご挨拶ができればいいのですが…
おそらく、静かに閉店するのではないかと思います」と話します。

閉店日のイベントも、密集を避けるため今はおこなわない方針だそう。

あと少し。
秋が来る前に、西武大津店は閉店します。

感謝の気持ち、懐かしい気持ちを、あらためて。
西武大津店へ、足を運んでみてはいかがでしょうか。

<写真:しがトコ編集部 文:土岡菜摘(しがトコ編集部)>

『西武大津店』を地図でみる

JR琵琶湖線「膳所駅」北口、京阪大津線「京阪膳所駅」下車 徒歩約8分

西武大津店

→大きい地図で見る

『西武大津店』のデータ

住所
〒520-8580 滋賀県大津市におの浜2丁目3−1
→地図
電話番号
077-521-0111(大代表)
営業時間
午前10時~午後7時30分(当面の間)
公式サイト
https://www.sogo-seibu.jp/otsu/
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