カフェ・お店

ウクライナ避難民が彦根市に母国料理店『TheFaina』をオープン!「戦地に残る父も一緒にお店に立ちたい」

【The Faina(ザ・ファイナ)/滋賀県彦根市】

彦根城から徒歩5分。
観光客が行き交う「夢京橋キャッスルロード」の一角に、
ウクライナの家庭料理店『The Faina(ザ・ファイナ)』がオープンしました。

「自立がしたい」と、日本に避難し
2か月足らずでキッチンカーの営業をスタート。
その1年後に立ち上げたのがこちらのお店です。

「戦地に残る父も呼び寄せ一緒にお店に立ちたい」その一心が原動力でした。

メニューには日本人にも馴染みのある「ボルシチ」をはじめ、
「ムレンツィ」や「ゼフィル」、「ウズバル」などの聞き慣れない料理も。
ここでしか味わえない、ウクライナの家庭料理とは?

キッチンカーでの営業からスタートし、ついに念願の店舗をオープン

左から、菊地崇さん、娘のカテリーナさん、母のイリーナさん

店主は、ロシアの侵攻を受けて
ウクライナから避難しているイリーナ・ヤボルスカさん。

娘のカテリーナさんとその夫の菊地崇さんが暮らす彦根市に身を寄せ、
「自立した暮らしがしたい」と2022年5月にキッチンカーでの営業を始めました。

軌道に乗り始めた頃、ウクライナに残る
夫のローマンさんを日本に呼び寄せたいと一念発起。
クラウドファンディングで資金を募り、
今年の5月28日に念願の店舗をオープンさせました。

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平日にもかかわらず店内は満席で、行列ができることも。
オープンの一報を聞きつけ、
県内外からお客さんがひっきりなしに訪れる盛況ぶり!

料理人の経験を持つ夫のローマンさんとイリーナさんが二人三脚でレシピを完成させた、
本格的ながら日本人の味覚にも合うウクライナの家庭料理。
まずは定番かつ人気No.1のメニューからご紹介します!

ウクライナの国民的料理「ボルシチ」が絶品!

1番人気はボルシチ。トマトベースの優しいスープに、
ゴロゴロとした大きな豚肉や、キャベツ、じゃがいも、ミックスビーンズなど
スパイスを含む25種類の具材がたっぷりと入っていて栄養も食べごたえも抜群です。

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面白いのは、付け合わせ。
生のネギに塩とサワークリームをつけて食べるのがウクライナ流。
優しい味わいのボルシチとは対照的に、ピリッとしたネギの辛味と塩味がいいアクセント!

サワークリームでまろやかさも感じられ、どんどんいけちゃいます。
日本でいうところのお漬物なのかも?

ウクライナ版おにぎり!?モチモチ生地にハマる人続出の「ムレンツィ」

ボルシチのお供には、クレープのような見た目の「ムレンツィ」。
こちらも看板メニューの一つです。
モチモチとした生地の中に、
スパイスで煮込んだチキンと玉ねぎがたっぷりと入った一品。

日本のおにぎりのように、
ウクライナではご飯やおやつとして老若男女問わず親しまれているそう。

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ほうれん草を練り込んだ緑鮮やかなムレンツィには、サーモンとクリームチーズが。
「今日はクリームチーズですが、クリームチーズのソースの日もあるんですよ」。

スタッフの好みで、どっちになるのかはサプライズ!
「どちらもとっても美味しいです」とカテリーナさん。

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カッテージチーズとレーズンを包み、
甘〜い蜂蜜をかければスイーツに早変わり!
懐深し、ムレンツィ……恐れ入りました。

初夏の食べ歩きに最適!ウクライナ伝統ドリンク「ウズバル」

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(写真提供:The Faina)

オレンジやブドウなどのドライフルーツを使用した
「ウズバル」は、初夏にピッタリのドリンク。
日本仕様に、隠し味で梅も入っているのだとか。

砂糖不使用なのでゴクゴクと飲め、
フレッシュで爽やかな甘味が体に染み入ります。
テイクアウトもできるので、彦根観光のお供にも最適ですよ。

カフェメニューも充実!ウクライナスイーツがもりだくさん

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左は「ゼフィル」、右は「ヴィシニャ」
……何度聞いても覚えられないこちらのスイーツは、
ウクライナの伝統菓子なのだとか。

「特別な日のケーキではなく、
ウクライナで日常的に食べられている”おやつ”をご用意しています」と菊地さん。

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メレンゲのようなサクサクとした生地をイメージしてフォークを入れると、弾力があって驚き!
マシュマロのようなゼリーのような食感で、甘酸っぱい風味が口の中に広がります。
関西で食べられるのはThe Fainaだけなのだとか。

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ケーキの底にチェリーがふんだんに敷き詰められた「ヴィシニャ」。
ふわふわなのかと思いきや、モッチモチでジューシー!
絶妙な塩加減と強めのスパイスが、ケーキの甘さとチェリーの甘酸っぱさを引き立てます。
食べたことのない味なのにどこか懐かしい、不思議な”おやつ”です。

私たちにとって『The Faina』は、”Hope(希望)”

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(写真提供:The Faina)

母のイリーナさんがウクライナから日本に避難してきたのは、2022年3月22日。
それからなんと2か月足らずで、キッチンカーの営業をスタートさせました。
原動力となったのは「この状況を打破しなければという危機感」だったといいます。

「母は日本に来てからも、毎日ずっと不安で辛そうにしていました。
母ができることで、喜びややりがいを感じられることはないかと考え、
ウクライナ料理を提供する仕事をつくろう、と思いつきました」。

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(写真提供:The Faina)

「戦争の話ばかりではなく、ウクライナの食文化や料理の話で
日本人とコミュニケーションが取れるようになったことで前向きになり、
母の顔つきがどんどん明るくなっていくのがわかりました」。

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(写真提供:The Faina)

順調に営業を続けること半年。
遠く離れたウクライナで、父のローマンさんが道端で倒れ、
救急車で運ばれたという一報を耳にします。

過酷な状況での暮らしや、攻撃や強奪への不安、
長引く戦争に心身ともに限界だったのです。

「とにかくショックでした。父が安心して暮らせる環境を日本で作りたい、
家族みんなでお店に立ちたいという気持ちが強くなりました」。

即座にクラウドファンディングを立ち上げ、たった半年で店舗をオープン。
店名の「Faina」は、ウクライナ語で「良い(good)」。
すべての人にとって居心地の良いお店であるようにとの願いを込めているそう。

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机の上には、娘のカテリーナさんがデザインしたランチョンマットがお出迎え。
ウクライナの国旗の青と黄色を使って花を描き、
ウクライナの国と街を紹介しています。

大津市からきたというファミリーは
「ニュースで知って食べに来ました。
ウクライナ料理は初めてですが、どれも食べやすくて美味しかった!」

近くの大学に通う男性は「量が少ないかと思いましたが、
食べてみるとボリューミーで満腹。美味しくていくらでも食べられそうでした」

姫路から3時間かけてランチを目的に来たというお客さんもいて、
お会計の際には「応援しています。美味しかった!また来ます」と声をかけられることも。

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18歳から60歳の男性市民に対して
ウクライナからの出国を禁止する「国民総動員令」により、
ローマンさんは今も、ウクライナから出ることはできません。

「戦争で心身ともに疲弊していた父も、お店の内装やオペレーション、
レシピのアドバイスをするときだけは楽しそうにしていました。
The Fainaは、料理人である父が輝ける場所。
私たち家族にとっての”Hope(希望)”なのです」。

料理がつなぐ、私たちとウクライナ

いつもと変わらない日常に、突如舞い込んだ戦争のニュース。
着の身着のまま泣きながら国外に避難する様子や
劣悪な環境で暮らす人々の姿はあまりにショッキングで、
自分が置かれた環境とのギャップに、毎日泣きながら見ていたことを覚えています。

The Fainaの料理は、どれも素朴で家庭的。
ウクライナで、かつて家族で囲んでいた食卓でした。
これがまた当たり前になるその時を願って、
私たちにできることは関心を持ち続けること、
思いを馳せることなのかもしれません。

(取材・写真・文 syam

記事を書いた人
syam/びわ湖沿いで猫と暮らす、2児の母。子供の体力を削ることに余念がない。楽しそう&美味しそうなものに食いつく、ドがつくミーハー。ジブリ好き。

『The Faina』の店舗詳細

住所
滋賀県彦根市本町1-7-36
営業時間
水・木・金:8:30~15:00(14:30ラストオーダー)
土・日・祝:10:00~21:00(20:30ラストオーダー)
定休日
月・火曜(桜・紅葉シーズンは不定休)
電話番号
070-9118-4662
公式サイト
https://www.faina.tokyo/
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