【滋賀をみんなの美術館に#07/長浜城下町まちづくり勉強会】
「長浜城下町遺産」は、”長浜の人が、長浜の街を自慢する”プロジェクト!
滋賀県屈指の観光スポット長浜は、
ユネスコ世界文化遺産にも登録された「長浜曳山祭」でも知られる街。
その街の中から歴史情緒あふれる52スポットを選び、
「長浜城下町遺産」に認定するプロジェクトが昨年から始まりました。
取り組んでいるのは、地元住民でつくる「長浜城下町まちづくり勉強会」。
どれも一般公開されている、長浜”自慢”のスポットで、
街をぐっと深掘りできること間違いなし。
それでは、認定ホヤホヤの10の「遺産」を見ていきましょう!
城下町ができた”当時のまま”「背割り水路」
1つ目は「背割り水路」。
名前の通り、建物の背後にある水路で、
「遺産」の中でも特に人気が高いスポット。
水路に降りる階段も、城下町ができた当時の姿のまま残っていて、
ここで暮らしていた人々の姿が目に浮かんできます!
「長浜城下町は、城下町がつくられていった歴史が”街の形”に現れている」と言われます。
豊臣秀吉がつくった初期の城下町中心部は、
街の区画(いくつかの家がまとまったブロック)が正方形に近く、
後に作られた北・南側エリアは長方形の街区に。
「背割り水路」は、後に作られたエリアにあります。
街区を見ながら街を歩くことで、
城下町が形づくられてきた歴史も感じられるのです!
城下町”随一”のフォトスポット「玉八商店西家付近の米川沿い」
続いてはこちら。
アーケード商店街を歩いていると、ふいに現れる「玉八商店西家」。
江戸末期~明治初期の建物に建てられた木造建築です。
長浜市街を通って琵琶湖まで注ぐ米川沿いにあり、
かつては川の水を家の中に引き込んで利用していました。
米川と長浜の暮らしのかかわりを思わせる1スポットです。
建物の中は、光で浮かび上がるガラスの模様と、
畳の上に置かれた紙工作のオブジェが織りなす、
趣のある空間となっています!
フォトスポットとして人気が高いのもうなずけますね!
ここは思想家(宗教家)・西田天香(てんこう)氏の生誕地とされていて、
西田氏が初めて下座(他人よりも一段低い位置に身を置く修練)を行った場所として知られています。
ここは文具店「玉八商店」の店主が大事に管理してきた場所。
街の人の想いで現在につないできた「遺産」なのです。
「玉八商店」の店主は、
「遺産」認定に「自分たちが守り続けていたものが評価された」と喜び、
「長浜の観光の1つの切り口になる」と取り組みを激励されているとのことです。
橋の下からも発見!”免税エリア”の印「朱印地境界石柱」
街のあちこちに残る石柱。
豊臣秀吉が、天正19年(1591)に長浜への朱印状で定めた
「三百石朱印地」の境界を示しています。
「朱印地」は年貢免除のエリアで、今で言う免税区域。
長浜に人が集まるように設定されました。
慶安4年(1651)には、30本ほどの石柱が建てられていたようですが、
ほぼ本来の位置に残っているのは写真の4本のみとされています。
4本のうち、「月宮殿山蔵橋下」の境界石柱(右上の写真)が
残されていたのは、なんと橋の下!!
のぞき込まないと発見できない場所に石柱が残されていたのです!
認定した「まちづくり勉強会」のメンバーからも、
「橋の下に史跡があるなんて!
普段歩いている長浜の街でも知らないことがある」と驚きが。
長浜の街には、他にもこんな隠れスポットがあるかもしれませんね!
“風情たっぷり”『長濱浪漫ビールと米川』
こちら、長濱浪漫ビールは、江戸時代に建てられた倉庫を
リノベーションしてビール・ウイスキーの醸造・販売を行っているお店です。
併設されているレストランでは
樽詰めされたばかりの本格生ビールも楽しめます!
「長濱浪漫ビール」前の重厚な石垣・米川は長浜城の外堀の一部。
長浜城外堀として40年ほど使われた後、
江戸時代に商人の町として栄えて以降は、
港として使われていたそうです。
ビール醸造所と石垣・米川が組み合わさった風景から、
「長浜ロマン」の風情が醸しだされています!
長浜の地ビール・ウイスキーと一緒に
長浜の歴史も味わえちゃうスポット!
長浜で”最も歴史がある建物”『四居家』
こちらは、長浜市街地で一番古い伝統的建物とされ、
国の登録文化財にもなっている「四居家(よついけ)」。
もともとは油屋だったという建物で、
表から見た2階部分が低くなっているのが特徴です。
2階が発展していないことが、
江戸中期に建てられたという歴史の長さを表しているのです。
ぱっとしないことを「うだつがあがらない」と言いますが、
もともとは建築用語。
この家は「うだつがあがる家」となっています!
家の両端にすこし飛び出た、
小さな屋根のような部分が「うだつ」です。
財力がある家の象徴で、防火の役割も果たしていたそうです。
「四居家」は現在、湖北観光情報センターとして活用されています。
築300年以上の歴史を持つ「うだつがあがる家」は何かいいことがありそうな必見スポット!
個性あふれる長浜城下町遺産たち
北大路魯山人と”ふかーい関係”「安藤家」
明治38年(1905)から大正4年(1915)にかけて
建てられた近代和風建築の「安藤家」。
「安藤家」は、長浜の十人衆・三年寄の一家として
町人文化の一躍を担った家で、明治期には呉服商を営み、
福島に大きなデパートを作ったそうです!
芸術家・北大路魯山人のパトロンという一面もあった安藤家には、
魯山人の装飾美が施された「小蘭亭」もあります。
2022年3月現在は公開に向けて準備中ですが、
開館され次第「魯山人ワールド」につつまれてみたいですね!
街の人の愛着がこもった「どんどん橋」
かつて木製の橋だった頃、
橋を渡ると「どんどん」と音が鳴ったことから
「どんどん橋」と呼ばれています。
現在の橋は、昭和30年(1955)代に作られたとされています。
この橋付近は米川が本流と支流に分かれるポイントで、
ホタルも見れるスポットだそうです!
「遺産」を巡った後の夕暮れにここでホタルを見て楽しむのもいいですね!
明治から今までずっと現役「鍋庄商店」
醤油の製造・販売を行う醤油屋さん『鍋庄商店』。
2階部分に高さがある進歩的な形式が特徴の建物で、
明治初期の建物といわれています。
建物右側は現在も醤油醸造道具が残る作業場で、
建物左側の主屋に比べてより古い建物だとされています。
醤油屋さんの雰囲気溢れる店内では様々な種類の醤油がずらり。
楽しくお買い物もできます!
長浜に竜宮城?「浄国寺の竜宮門」
えきまちテラス長浜のすぐ隣にある「浄国寺の竜宮門」。
文化3年(1806)3月に落成したといわれています。
重厚なやぐら部分と、白色の門のフォルムが
住宅地の中でひときわ際立っていてなんとも愛らしいですね!
長浜の大正期レトロを代表する「下郷邸のガス灯」
最後は、明治期~昭和初期の長浜市の文化・福祉事業をリードした
財団法人「下郷共済会」の下郷邸にあるガス灯です。
大正期の長浜の風景を代表する文化財となっています。
レトロ好きにはたまらない逸品!
今後5年にわたり毎年10件遺産認定!
「長浜城下町遺産」は今後5年間で、
長浜の江戸時代の町数に合わせて、52ヶ所の選定が予定されています。
「『長浜城下町遺産』は、長浜の人が、長浜の街を自慢するプロジェクトです」と
「まちづくり勉強会」の会長・渡辺浩之さんは言います。
「候補」をパネル展示し、人気投票してもらう企画を市内で実施したり、
「遺産」の見学会や講演会を企画したり、
“地元が選ぶ”にこだわっています。
「選定は、それぞれの”推しスポット”があって盛り上がりました。
選ぶ私たちも面白い。選ばれた場所に関係されている人も喜んでくださる。
そして、長浜を訪れていただく方々とっても長浜をより面白く知ることができる。
まさに長浜“三方良し”の選定だと思っています」と渡辺さん。
長浜の熱い思いがつまった「遺産」の数々をめぐりながら、
自分の”推しスポット”を探せば、長浜がもっと面白くなるはず!
今後も、どんどん増えていく「長浜城下町遺産」。
目が離せません!
(取材・文:宮嵜浩 編集:川島圭)
令和3年度「長浜城下町遺産」選定事業の概要
- 主催
- 長浜城下町まちづくり勉強会
- 公式サイト
- https://nagahama.net/jyoukamachi/
『滋賀をみんなの美術館に』プロジェクトは「しがトコ」が企画・取材を担当し制作しています。この記事は、滋賀県公式のポータルサイト『滋賀をみんなの美術館に』でも公開されています。