【登り窯カフェ/滋賀県甲賀市】
まるで洞窟みたいな、この異空間。
じつは、信楽焼の窯の中なんです。
ガス窯が主流になった今、そのほとんどが役目を終え、
焼き物の里、信楽町の“風景”として、ひっそりと佇んでいます。
そんな“登り窯”をカフェとして活かし、
実際に窯の中に入って寛ぐことができる!と話題のスポットを訪ねてみました。
完全な形で残る、昭和初期につくられた登り窯
到着したのは奥田忠左衛門窯 信楽焼陶芸村の本店。
たくさんの信楽焼き狸がお出迎え。
陶器の販売はもちろん、楽しみながら出来る絵付け体験や
上級者向けの電動ろくろを使った作陶もできる陶芸教室がありました。
そして、ひときわ存在感のある全長20mの登り窯!
”登り窯”とは、山の傾斜を利用し、
ドーム型の細長い部屋(焼成室)が段々に連なっている窯の事です。
一番下の焚き口より大量の薪をくべ、炎が上の段、また、上の段へと登り、
その温度は1300度にもなるそうです。
これほど完全な形で残っているのは珍しく、その歴史は昭和9年にまで遡ります。
窯の中を覗けば、焼成の様子がうかがえます。
棚の一番下に見える支えは『立ちざや』と呼ばれるもので、
壺などを焼く時に使われた台です。
役目を終えた立ちざやが、坂道に配されていました。
坂道を上がると『登り窯カフェ』の看板が。
窯を”そのまま”活かされているのが、外観からも分かりますね!
さっそく中を覗いてみると・・・
細長い部屋にテーブルが置かれ、まさにオシャレなカフェスペースになっています。
15人くらいでもOKな広い空間。
登り窯の中は、まるで異空間!
洞窟のような、秘密基地のような、どこかワクワクする雰囲気の室内。
今回、カフェでいただいたのは、黒炭のビターな生地に
香り高い朝宮茶クリームの緑が映える、
陶芸村オリジナル『黒炭ロールケーキ』とコーヒーのセット。
他に、信楽町にある山田牧場の新鮮な牛乳を贅沢に使用した
『山田牧場特製バウムクーヘン』もスタンバイ。
壁の独特の質感と、アンティークの椅子が馴染みます。
窯中からの眺め。
入口が大きく光も射し込むため、閉塞感は感じません。
ところで、窯中の壁に注目してみて下さい。
『登り窯カフェ』の見どころ、
むしろ醍醐味とも言えるポイントが、ここにあります。
幾度もの焼成で、高温度の炎と、舞い上がる灰などで出来た色。
その表情は、作ろうと思っても作れない偶然の“美”。
窯中の足元にある小窓のようなもの。
これは炎の通り道で、上の段の焼成室へと炎が登っていくための窓で、
稼働当時のままの姿で残されています。
そう言えば、先ほど見た立ちざや。
これもまた、幾度もの焼成によって偶然に出来た色。
登り窯カフェには、かつて長く稼働してきたからこそ生まれた
美しさや味わいが存在します。
ちょっぴり非日常な空間で過ごす時間。
メディアでもよく取り上げられ注目を浴びている『登り窯カフェ』。
来春の予約も徐々に埋まりつつあるそうです。
気になった人は、すぐに予約を!
(完全予約制のため、予約なしでは利用できませんのでご注意ください)
(写真・文 くものすけ)
記事公開日:2018年11月9日/最終更新日:2021年6月14日
「登り窯カフェ」を地図でみる
名神高速道路「信楽IC」から車で約10分!
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