Interview

きみたちは“爆発”しているか!?岡本太郎が目指した「大衆にぶつかる芸術」を信楽で体験!

【岡本太郎と信楽】

“芸術は爆発だ”で知られる芸術家の岡本太郎ですが、
じつは滋賀県の信楽で作品づくりをしていたことを
ご存知でしょうか?岡本太郎と信楽の関係は深く、
1971年には信楽の名誉町民にもなっています!

かつての万博のシンボル「太陽の塔」の裏の顔、
黒い太陽も信楽で作られたものなんです。

信楽には岡本太郎と制作をともにした職人も数多く、
これまで、しがトコでも当時の現場を知る方にインタビューし、
岡本太郎と信楽の関係に迫った記事を公開しています!

記事はこちら>>
太陽の塔は信楽でつくられた!?岡本太郎が愛した焼き物の聖地

そして今回は、滋賀県立陶芸の森で開催中の
特別展「岡本太郎 アートの夢」を訪れ、
学芸員さんにお話を伺いました。
岡本太郎にまつわる驚きのエピソードも必見です!

社会に開かれた芸術“パブリックアート”

外観

信楽でいま
「岡本太郎 アートの夢-陶壁・陶板・21世紀のフィギュア造形」
という特別展が開催されています。
ポスター

この展覧会は、岡本太郎が残した
「一般大衆にじかにぶつかる、社会に開かれた芸術を実現したい」
という言葉を軸に企画されたもの。

芸術は太陽と同じ。すべての人に無限に与えられ、
共有すべきものだというのが岡本太郎の考えでした。
展示風景

岡本太郎は、その熱い思いから旧東京都庁舎の『日の壁』など、
誰もが見られる“パブリックアート”の作品を数多く生み出します。

でも、制作を続ける中で、彼にはひとつだけ心残りがありました。
それは、自分が理想としている“赤”が出ないこと。
次こそは自分が思う赤が出せるところで仕事がしたい!
そう思っていた時に出会ったのが、信楽でした。
作品01

岡本太郎が求める赤を実現したのは、信楽の焼きものの技術。
信楽の釉薬でつくる赤はガラスのような透明感があり、
何十年たっても色褪せることもなく鮮やかな赤です。

この赤が出せたことをきっかけに、彼は信楽に滞在しては
JR岡山駅の『躍進』をはじめとする
たくさんのパブリックアートを生み出すことになります。
当時の写真

ほかにも国立代々木競技場に飾られた8面のレリーフや
太陽の塔の裏側にある『黒い太陽』などが信楽でつくられ、
当時信楽で活動していた若手の陶芸家たちが制作を手伝いました。

展示02

鮮やかな赤の実現と、
雨風にさらされても色褪せない作品を、焼きものでつくる技術。
このような高い技術力が、岡本太郎にとって信楽を
唯一無二の場所にしたのでしょう。

日用品にもアートを!

展示03

「大衆にじかにぶつかる芸術を」という岡本太郎の思いは、
“自分の手もとに置いて楽しめるアート”としてつくられた
日用品にも表れています。

こちらは岡本太郎が52歳の時に発表した
『坐ることを拒否する椅子』。
この作品にも、信楽の鮮やかな赤が生かされています。
それにしてもこの椅子、本当に座りにくそう!
展示04

岡本太郎にとって椅子とは、
人生の活動的な歩みのなかで、ちょっと腰をおろすだけのもの。
生活には生命感のあふれる遊びが必要であり、
この椅子は生活の中の創造的な笑いだ、
という意味を込めてつくられたものだそう。

ほかにも手をモチーフにデザインされた『手の椅子』や
6面すべてに座ることができる『サイコロ椅子』など、
カラフルで自由な形の椅子が並びます。
犬の植木鉢

続いて現れたのは、『犬の植木鉢』。
こちらは壁画などの大きな作品を制作中の空き時間につくられたもので、
ひときわ小さい数体は、個人が保管していたものを特別に借りてきた
初公開の作品だそう!
犬の植木鉢02

植木鉢を抱える岡本太郎は、
まるで飼い犬を抱いているような優しい笑顔!
よく見るとひとつずつ微妙に顔が違うところが、
本当の動物のように思えてかわいく見えてきます。

フィギュアは現代の大衆アート

フィギュア01

この展覧会の大きな特徴は、
岡本太郎の作品と現代のフィギュアを
新しい解釈で結びつけて展示しているところ。

岡本太郎が亡くなってから27年のときを経て、
「今の私たちにとって、いちばん身近なアートって何だろう?」
と考えた時、フィギュアが当てはまるのでは?と思い至ったのが、
この展覧会が開催されたきっかけだそうです。
フィギュア02

フィギュアといえば、アニメのキャラクターを立体にした人形?
と思いがちですが、ストーリーやシチュエーションまで考え抜いて
つくられたオリジナル作品の数々は、まさにアートそのもの!
フィギュア03

今にも動き出しそうな作品から
思わず「きれい…」と声がもれてしまうほど神々しい作品まで、
どれも精巧で、それぞれに個性豊かな作品が並びます。

「過去のできあいのイメージにおぶさるのでなく、
豊かな精神で自分たちの新しい神話・伝説を
つくるのが芸術であり、また生活なのです」
と書き残した岡本太郎の精神は、
確かに現代のフィギュアと通じるものがあるのかもしれません。

芸術は大衆の中、暮らしの中にある

三浦弘子さん

展示を見たあと、この展覧会を企画された
滋賀県立陶芸の森の学芸員、三浦弘子さんにお話を聞くことができました。

「岡本太郎は、誰よりも早く壁画に
FRP(強化繊維プラスチック)を用いるなど、
新しいものへのアンテナを常に張っていました。
そう考えると、もし現代に岡本太郎が生きていたら
フィギュアをつくるのでは?と思ったのがこの企画の始まりです」
取材シーン

「岡本太郎はよく『遊びがない!』と言っていたそうです。
新しい発見を喜び、そこから生まれるワクワク感を愛した彼が
今の私たちを見たら『今の生活には遊びがない!』と
言われてしまうかもしれませんね」

岡本太郎は、自分の作品を決して売ろうとはしなかったそう。
売ってしまったら、大企業の社長室やお金持ちの家に収蔵されて、
たくさんの人に見て触れてもらう機会がなくなってしまう。
芸術は大衆の中、暮らしの中にあるという考えは、
岡本太郎を語る上でとても重要なテーマだとわかりました。

まだ見ぬ作品が発見されるかも!?

取材シーン02

実は今回展示されている『犬の植木鉢』のうち数体は、
愛知県にある個人宅の庭でつい最近発見されたものだそう。

1960年代には信楽でもつくられていたことがわかっていますが、
信楽ではまだひとつも見つかっていないそうです。
ということは、近い将来どこかの庭や路地裏で発見されるかも!?
想像するとワクワクが止まりません。

しがトコではこれからも、
岡本太郎に関する情報や新しい発見を追いかけていきます!

(写真:若林美智子/文:林由佳里/企画編集:亀口美穂)

『岡本太郎 アートの夢-陶壁・陶板・21世紀のフィギュア造形』の情報

開催期間
2023年7月15日(土)~ 2023年12月17日(日)
住所
滋賀県甲賀市信楽町勅旨2188-7 滋賀県立陶芸の森 陶芸館
開館時間
9:30~17:00 (入館は16:30まで)
休館日
月曜日(月曜日が祝日、振替休日の場合はその翌日)
公式サイト
岡本太郎 アートの夢-陶壁・陶板・21世紀のフィギュア造形

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