カルチャー

“信長の寺”でアートが解き放たれる。日本最大級の寺院アートフェス開幕!

【浄厳院国際芸術祭2025/滋賀県近江八幡市】

織田信長が創建したと伝わる安土の古刹・浄厳院。
その歴史あるお寺が、いま“自由”をテーマにしたアートでいっぱいに。
本堂や竹林、屋根裏まで、境内すべてが展示空間に変わる『浄厳院国際芸術祭』が開催されています。

信長の時代から続く静かな寺院が、国内外41名のアーティストによってカラフルに生まれ変わる——。
まるで時代とアートが交差するような、不思議な体験が待っています。

「現代美術展」から「国際芸術祭」へ。世界に開かれるお寺アート

織田信長がこの地から天下統一を志した滋賀県近江八幡市安土町。
「金勝山浄厳院」は、約450年前に信長が安土町に創建した浄土宗のお寺です。
浄土宗と日蓮宗との間で「安土宗論」が行われたことでも有名です。

これまで5年間は「現代美術展」として親しまれてきた浄厳院のアートイベント。
今年からは「国際芸術祭」として新たなスタートを切りました。

国内外から41名の作家が38の空間に出展。そのうち13名は海外からの参加です。

寺院で開催される美術展としては、 国内最大級の規模を誇ります。

今年のテーマは「自由」。
めまぐるしく変化する時代の中で、“自由”の定義は人それぞれ。
常識や国境も越えて、自由な発想で楽しめます。

仏像の隣にアート!? 異色のコラボが実現

今年初めて、本堂も展示会場として開放されました。
本尊の脇に飾られているのは、滋賀出身の大﨑緑さんによるカラフルなシルクスクリーン。
大﨑さんは宝塚歌劇団を退団後アーティストへと転身した異色の経歴の持ち主。
華やかな舞台で活躍した彼女の作品が、静かな本堂に鮮やかに映えます。

信長×宝塚×現代アート——まさに“異色の共演”!

さらに、普段は立ち入りできない内陣の裏側にも作品が。
鈴木マヤ子さんの赤と黒をまとった起き上がりこぼしやうちわが、仏画や祭壇に不思議と馴染み、「アートと祈りの境界ってどこ?」と考えさせられるような空間になっています。

本堂だけでなく、鐘楼や楼門、庫裏まで__。
境内すみずみまで、全部が展示会場。

作品そのものの見応えに加え、「浄厳院」のこの空間があってこその展示です。

お寺という“空間を味わう”作品

大広間に展示されているのは、安土町出身の奥田誠一さんの作品。
焼け跡の残る和紙を重ねた張り子の人形は、中が空洞で、光と風を通します。

「作品と同じ目線に座って、作品の中に入って感じてほしい」と話す奥田さん。

静かな土間に射し込む光や建物の質感までもが作品の一部。

この場所そのものを“まるごと体感”して楽しむのが浄厳院国際芸術祭の魅力。

境内の池のほとりに並ぶのは、主催者でもある西村のんきさんのインスタレーション。
竹や石など寺にあった素材を組み合わせ、大地にマンダラを描きました。

琵琶湖の形を模した池の周りにつるした土鈴からは、風が吹くたびにやさしい音色が響きます。

自然とアートが溶け合うような心地よさ。
“観る”というより、“感じる”時間が流れています。

海外アーティストが安土に滞在。歴史の中で生まれる作品たち

会期前に海外作家によるレジデンス(滞在制作)を実施するのも、浄厳院国際芸術祭の特徴です。
今年はスペインやポーランドなど5人のアーティストが安土に滞在し、地域の人々と交流しながら作品を制作しました。

スペイン・カタルニア出身のユイス・エストピニャンさんは、“記憶”をテーマにした作品を観音堂に展示。
京都の骨董市で見つけた戦前の学生写真をもとに、ひとりひとりの顔を切り出して展示しています。
古い寺院の空気と、遠い時代の記憶が静かに響き合うようです。

誰でもふらっと楽しめる、開かれた芸術祭

会期中は、前衛舞踏やジャズ、お茶会、ギャラリートークなどイベントも盛りだくさん。
大学生までは入場無料!また、何度でも入れるお得なパスも用意されています。

「アートがきっかけで浄厳院を知ってもいいし、その逆でもいい。お互いに興味を広げる場になれば」と西村さん。

ショップでは、作家がサインを入れた“お寺の石”などを販売。
毎年ひとつずつ買い集めるのを楽しみにしてる人もいるんだとか。
「滋賀ではアートを買うことにまだ抵抗がある人も多いけれど、作品を買うことが作家の活動を支える第一歩なんですよ。回を重ねるごとに楽しみに待ってくれてる住民の方も増えてます」と西村さん。

“自由”をテーマに、国も世代も超えて広がるアートの世界。
信長ゆかりの寺で、自分だけの“自由”を見つけに出かけてみませんか?

(文・ふくもん/写真・辻村耕司)

『浄厳院国際芸術祭2025』イベント紹介

会期中は毎週末に、多彩なイベントも開かれます。
詳細は公式サイトからチェックしてみてください。

11月1日(土)・2日(日)前日
裏千家お茶会

11月3日(月・祝)14:00
舞踏+ライブ音楽✕舞踊
日本を代表する前衛芸術 BUTOH✕日本舞踊・美術家 大崎緑

11月8日(土)14:00
ジャズ

11月22日(土)14:00
よし笛

11月23日(日)14:00
ジャズ

11月9日(日)・15日(土)・16日(日)
11:00~・14:00~ ギャラリートーク

『浄厳院国際芸術祭2025』の詳細

住所
滋賀県近江八幡市安土町慈恩寺744
会期
2025年10月25日(土)~11月23日(日)< ※水・木曜日は休場/dd>
開場時間
10:00~17:00
料金
当日券 1,000円(現金のみ) 会期中入り放題パス 1,500円
※大学生以下は学生証提示で無料
浄厳院国際芸術祭
https://www.jogoninart.com/
浄厳院
https://www.jogonin.com/

※この記事は、滋賀県の「地域資源活用交流創出事業に係るレガシー創出事業」の一貫で、『しがトコ』が企画・取材を担当し制作しました。 http://bino-shiga.net/

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