カルチャー

見慣れた景色も視点を変えればアートに!滋賀のアートプロジェクトを紹介します

滋賀をみんなの美術館に

【滋賀をみんなの美術館に】

暮らしのなかで大切に守られてきた仏像や松明、
琵琶湖のある風景もアートの素材に!

視点を変えれば滋賀そのものが、
まるで大きな美術館のようでもある
そんな想いで3年前から続いてきたアートプロジェクト
「滋賀をみんなの美術館に」。

そのコンセプトに賛同するアート団体の中から、
2023年度は以下の、7つのプロジェクトが選出されました。(順不同)

集大成として行われたオンラインの成果発表会では、
各プロジェクトの代表が、成果や思いを熱く報告。

アートが持っている力や、
これから期待されることなどについて意見交換し、
人や地域をつなぐ重要なヒントを残すものになりました。

滋賀の美をさぐる

地域で大切に守られてきたものに美を見出す、
そんなプロジェクトが注目を浴びています。

ラスト

「近江の祭り研究所」さんのプロジェクト、
『近江の小さな仏たち-近江の千体仏・千体地蔵-』では、
滋賀各地の祠(ほこら)にひっそりと残されてい仏を発見し、
写真でその空気感までも伝えました。

雲迎寺の本尊

集落には当たり前の風景で、
その価値も知られていなかった存在を探し当て
撮り続けてきたカメラマンの辻村耕司さんは、
10年に及ぶ調査を「旅」と表現します。
「地蔵信仰とは何か、先人がどのような思いを込めたのか、
共に感じ理解を深めて行きたい」と話していました。

発見と思索の旅はまだまだ続きます。

「文化遺産としての松明を次世代へ贈る会」は、
受け継がれてきた松明を未来に伝えようと奮闘してきました。

近江八幡市内の各集落では現在も、
形も大きさも違う200基ほどの松明が結われています。
「限られた一地域にこれだけ多くの松明が制作される事例は、
全国広しといえども近江八幡の他にはないでしょう」と、
会長の大西實さんは誇らしげに語ります。

松明の結い方はすべて「口伝え」。
地域ごとに綿々と伝えられてきましたが、
担い手不足や材料の調達が難しくなるなど、
困難にも直面しています。

でも、松明結いを目の前にすると、
松明が持つ不思議な造形の魅力と、
地域の絆を生み出す力に圧倒されてしまうのです。

千体仏も、松明も、造形美はもちろんのこと、
心をつかんで離さないのは、
そこに込められた先人の思いを感じるからです。

時代や世界観を越えて迫ってくる強い思いが、
作品に他にない魅力を与えるように思います。

そんな奥深い滋賀の美を目の当たりにする
アートプロジェクトでした。

誰もがアートできる

アートの敷居をぐっと下げて、
身の周りの美を再発見する取り組みも目を引きました。

21文字 他作品

「電車」という日常のなかで気づいた思いを、
21文字の言葉で表現した文芸作品を募集する
『電車と青春21文字プロジェクト』。

17回続く人気のコンテストで、
今回も5,000を超える応募作品が全国から集まりました。

入選作品は電車の中や駅構内、商店街などに展示され、
多くの人の心をほっこりと温めました。

最優秀

今回、優秀賞の知事賞に選ばれた作品は、
「子ども切符を買った子の手に十円の跡」。

17回目にして初めて、駅員さんの作品が優秀賞になったと、
代表の福井美知子さんは声を弾ませます。

駅員さんならではの視点が心温まる作品でした。

湖南市の石部地区で行われた『石部芸術祭2023』は、
出品者の条件がプロのアーティストではないこと、
という新しい芸術祭でした。

「市の文化施設がなくなるという話をきっかけに、
若い人にも文化や施設のあり方に
少しでも興味を持ってもらい
地域の文化活動のきっかけをつくれたら」
そんな出発点の思いを、代表の長砂伸也さんが振り返ります。

県内の8組が出品した小さな小さな芸術祭。
ですが、展示をきっかけに、出品者と来場者の交流が生まれ、
新たな出会いもあったと言います。

どちらのプロジェクトも、プロではない、
むしろ芸術や文芸には疎かった人も参加できる企画。

しかし、その表現は自由で面白い。
普段の生活の中で感動や美を見つけ出し、
それを表現したいと思っている人は
じつは思っているよりも多いのでは
そんな気づきが得られたプロジェクトでした。

滋賀ならではの表現に迫る

琵琶湖がある滋賀ならではの表現にこだわった
プロジェクトも取り組まれました。

「BIWAKOアーティストインレジデンス」は
琵琶湖の漁師と芸術家が共同で取り組んだ企画です。
8人のアーテストが1泊2日で琵琶湖の漁を体験し、
そこから得られた成果を作品にしました。

参加したアーテストは
「琵琶湖を今まで見るものだと思っていたけど、
中から見ることで新たな琵琶湖への視点ができた」
と言います。

実行委員会の武雄文子さんは、
こうした作家独自の視点を作品を通じて追体験し、
琵琶湖や琵琶湖の漁業をとらえ直すことができるのが
アートの意義なのでは、と語ります。

また琵琶湖の漁師・駒井建也さんは、
さらに琵琶湖各地域の漁師がかかわる企画へと
発展させる意欲を見せていました。

「湖北アーカイブ研究所」は、写真展
『湖北の原風景・畔の木(ハンノキ)の詩(うた)』
を長浜市内5会場と県立美術館で巡回して開きました。

かつて、湖北地域の田んぼの畔(あぜ)で、
農家が丁寧に育てていた「畔の木」。
収穫した稲を天日干しするときの支えとして、
当時の稲作になくてはならなかったのでした。

農業の発展に伴って姿を消しつつあった「畔の木」の姿を
後世に伝えたいと、撮りためた代表の吉田一郎さん。

貴重な写真は、多くの人たちの記憶を呼び覚まし、
「写真を前に、同窓会のような会話が広がった」
と吉田さんは相好を崩します。

また「若い農業者が畔の木を植えたいと言い出し、
新たな景観づくりが始まった」とも。

琵琶湖や田んぼは、1日たりとも同じときはありません。
自然と人の深いつながりも感じる、2つのプロジェクトは、
ありふれた景色のかけがえのなさに気づかせてくれました。

創造の輪は国境を越えて

最後にご紹介するのは「AT ARTS」さんのアートプロジェクトです。
海外からアーティストを滋賀に招き、
長期のアーティストインレジデンスと
できあがった作品の展示を行いました。

展示会場は近江八幡市の名刹・浄厳院。
お寺をまるごと展示会場にしているためアート作品だけでなく
お寺の歴史や知らなかった自国の文化にも触れることができます。
太鼓や茶会などイベントも多彩に行われました。

浄厳院の近所では回覧板で紹介され、
地元の人たちにも毎年の楽しみになっているとか。

言語を奪われようとしているスペインの自治区、
カタルーニャ地方から2人のアーティスト2人も来日しました。

「日常ではわからないものにすぐ白黒つけようとしますが、
アートには正解も答えもありません」。

争いが絶えないのも、お互いのことを知らないから。
でもアートにはそれを乗り越えられる力があると、
代表の西村のんきさんは訴えます。

それぞれの過ごした時間や場所が違っても、
逆に違うからこそ、悲哀や喜びの思いは、
人間に通底しているのだと。
そう感じさせてくれた現代美術展が滋賀の地で継続されている、
そのことに大きな意味を感じます。

「ここで生きていける」と思えるために

成果発表会の終わりに、
プロジェクト専門評価員のひとり、上田洋平さんから
あるキーワードが出されました。

「ここで生きていける」という言葉です。

「ここで生きていける」という言葉は、
作家の池澤夏樹さんが著書『うつくしい列島』で
滋賀について語った部分に出てきます。

日本列島を移動し、初めて琵琶湖を目にした人々の
心情を池澤さんは以下のように綴っています。

「こんな豊かな土地があったかと、
欣喜雀躍(きんきじゃくやく=とても喜ぶ)しなかったか。
彼らは稲作を知っていた…。
葦を稲に換えれば食べるものが確保できる。
自分たちはここで生きていける」(抜粋)と。

滋賀にあふれた美を見つけ出し、感動する。
それはまさに「ここで生きていける」という確信に
つながっていくのではないか」と上田さん。

同専門評価員の大澤寅雄さん、アサダワタルさんも
「滋賀には、まったく他所にない、暮らしがある。
どこに滋賀の美を見出すか、
滋賀の美に誇りを持っている人を増やしていく必要がある」
とコメントしていました。

7つのプロジェクトはまだまだ知られていない
多彩で奥深い滋賀がここにある!と
気づかせてくれるものでした。

美の資源や美術館は、人々の暮らしを支え、
彩ってくれる大切な存在です。

愛されて未来につながっていく滋賀へ。
プロジェクトはブラッシュアップを重ねながら
これからも続いていきます。

令和5年度「滋賀をみんなの美術館に」プロジェクトの取り組み

信長ゆかりのお寺×現代アート!”わからない”を楽しめる『浄厳院現代美術展』が開催中!

一人ひとりの価値をアートに。小さな小さな芸術祭『石部芸術祭2023』

これが湖北の原風景。巡回展でよみがえる「畔の木」がある風景

「ラ コリーナ近江八幡」に期間限定で巨大な松明が登場!『たいまつ展示2023』が始まっています

漁師の暮らしそのものが“アート”。琵琶湖から作品を生み出す『BIWAKOアーティストインレジデンス』

一人ひとりの”祈り”が仏になる『近江の小さな仏たち』プロジェクト

『おつかまりください 混んでいるから僕の腕に』今年も心がキュンとする、青春21文字のメッセージ

提供:滋賀県 「滋賀をみんなの美術館に」プロジェクト http://bino-shiga.net/

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