カルチャー

まだまだ知らない琵琶湖の“ヨシ”。学生インターンが取材してきました!

【琵琶湖の“ヨシ”を学生インターンが取材!】

長さ5メートルにもなろうかという、この植物。
ここは、琵琶湖周辺に自生している“ヨシ”の群落です。

“ヨシ”というと、琵琶湖の水質保全や、
美しい景観を守るなど、様々な役割があると言われています。

しかし、実際のところ“ヨシ”って何?どんなものなの?など、
詳しく知らないという方も、じつは多いのではないでしょうか。

それなら取材して話を聞いてみよう!ということで、
滋賀大学の大学生と一緒に、
琵琶湖の“ヨシ”について取材をしてきました!

しがトコ✕京信、学生インターンシッププログラム

今回の取材は「しがトコ」と、
地域に根ざした金融機関「コミュニティ・バンク京信」とのコラボで実施。
“地域の魅力を発信する”という観点から、
「しがトコ」と「京信」でのタッグが実現しました。

そして、今回の取材を担当してくれたのは、
京信インターンシップ生をしている、滋賀大学の宮本康規くん。

滋賀大学4年生の宮本康規くん

宮本くんは、熊本県出身の大学4年生。
大学進学で滋賀県に住み始めて以来、滋賀のことが大好きになったそうです。

「でも、まだまだ知らないことだらけなんで、もっと滋賀を知りたいんです!」

そう爽やかに笑いながら、今回の取材と記事制作にチャレンジしてくれました。

じつはこの取材に行くまでに、
宮本くん、京信さん、しがトコの三者で、何度も打ち合わせを実施していました。

情報発信するときに、どういうことを大事にするか?
しがトコのコンセプト“滋賀を自慢したくなる”なら、何を伝えたいか?
ユーザーに届くコンテンツってなんだろう?
などなど、繰り返しミーティング。

そして、満を持して取材へ。
向かった先は、滋賀県近江八幡市。
水郷を中心とした古くからの景観がいまも残る円山町で、
『西川嘉右衛門商店』の代表、西川嘉武さんにお話を伺ってきました。

それでは、インターンシップ生・宮本くんの記事をどうぞ!

<これ以降は、インターンシップ生・宮本くんが書いた記事です>

意外と知らない“ヨシ”の世界

こんにちは!滋賀大学の宮本です。
みなさんは、“ヨシ”を知っていますか?

私は大学進学を機に
滋賀に引っ越してきたのですが、
滋賀にきて初めて“ヨシ”という言葉を聞きました。
きっと私と同じように、“ヨシ”についてあまり知らない、
もしくは“ヨシ”という言葉すら聞いたことがない人も
いるんじゃないでしょうか!?

そこで今回は、400年も前から“ヨシ”の卸業を営む
老舗『西川嘉右衛門商店』を取材させて頂きました。

みなさんに“ヨシ”の魅力や歴史をはじめ、
いま私たちに求められていることまで。
どどーん!と紹介させてもらえたらなと思います!

“ヨシ”のいまとむかし

そもそも“ヨシ”というのは、漢字では「葦」や「葭」などと書き、
地域によっては“アシ”とも呼ばれる植物です。
哲学者・パスカルの有名な言葉『人間は考える葦である』の「葦」ですが、
琵琶湖周辺では“ヨシ”と呼んでいます。

この“ヨシ”ですが、一口に言っても
生息地や産地によって性質が異なります。

たとえば、淡水と海水が混在している
「汽水域」の地域で生息する“ヨシ”は、丈夫で強い。
そのため、茅葺屋根(かやぶきやね)などに使われています。
有名な伊勢神宮の茅葺屋根でも、
汽水域の“ヨシ”が使われているんですよ。

一方で我らが琵琶湖の“ヨシ”は、淡水の“ヨシ”です。
その特徴は、美しいこと。
そのため、簾(すだれ)や葦戸(よしど)など、
家の中で見えるところに使われます。
琵琶湖の“ヨシ”の中でも、特に西の湖や円山地区のヨシは
その色や艶が美しいことから
特別な“ヨシ”として扱われており、
他の生息地と比べて非常に高値で取引されてきた歴史を持っています。

しかし、戦後の土地開発などによる影響を受け、
琵琶湖の“ヨシ”は減少していきます。

その結果、中国産の安価な“ヨシ”が日本市場へ多く流入。
琵琶湖の“ヨシ”の流通量は、徐々に減少してしまいました・・・。

“ヨシ”は、水質改善にも役立ってる?

“ヨシ”には、素材として使われるだけでなく、他にも役割があります。
その一つが、自然浄化という働き。
現在に至るまで琵琶湖の水質を改善してきました。

琵琶湖の“ヨシ”は、たった3カ月で、なんと5mもの大きさになるんです。
その成長のためには多くの水を吸収し、
同時に、琵琶湖の水に含まれる、
リンなどの汚染物質も一緒に吸収してくれます。

これによって琵琶湖の水質が改善されている・・・
と思ったら、大間違い!

成長後に枯れてしまった“ヨシ”を
そのまま放置していると、
結局、汚染物質は琵琶湖に逆戻りしてしまいます。
だから、“ヨシ”は、刈り取らなければいけない。

つまり、人の手を加えないと“ヨシ”の自然浄化の力は発揮されません!
昔から続く、“ヨシ”を刈り取りとる作業は、
古くから琵琶湖の水質改善に役立ってたんですね。

文化的景観を守っていくための“ヨシ”

そしてもう一つの役割が、琵琶湖の景観。
琵琶湖の“ヨシ”原である「近江八幡の水郷」は、
国の「重要文化的景観」に、第一号として選定されたんです!

この地域の人々は一年を通して
農作とヨシの仕事で生計を立ててきました。
文化的景観として今も残るヨシ原は、
まさに人々の暮らしの中から生まれてきた景観です。

そんな文化的景観ですが、現在は失われつつあります。
原因は人手不足です。

代々、この土地で“ヨシ”を刈る人(刈人)をされてた方も、
現在は会社員として働いていたり、
会社と兼業で刈人をする方などが増えました。
それが、主な原因だそう。

西川嘉右衛門商店の西川さん

お話を伺った西川さんは、それでも、いまもなお、
すべて手作業で、敷地内の“ヨシ”の刈り取りを
行われているということでした。

琵琶湖の“ヨシ”を保全してくために

じつは滋賀県は、全国で唯一、
“ヨシ”の保全に関する条例が制定されている自治体です。
県だけでなく、様々な保全団体が中心に、
“ヨシ”を保全していこうという取り組みが行われています。

しかし、その活動も、まだまだ活発であるとは言い切れないと、西川さんは話します。

“ヨシ”を保全してくためには、新しい用途や活用法を見つけることも、
今後は大事になってくるのかもしれません。

新しい用途と言うと、ゼロから新しい使い方を、
考えないといけないと思う人もいるかもしれません。

しかし、西川さんはそうではないと言います。

「これまでの歴史を振り返ることで
新しいものが見えてくるんじゃないか」。

昔ながらの日本の家屋では、
“ヨシ”のもっている断熱性を活かして
夏の暑さや冬の寒さを防ぐ屋根や簾(すだれ)に
無くてはならない素材でした。
四季がある日本の気候に合う素材として
何千年もの間、活用されてきたのが“ヨシ”です。

そんな“ヨシ”の歴史を活かしつつ、
若い世代の視点や考え方を組み込むことで
新しい歴史を生み出す第一歩になるのではないでしょうか。

今回の取材を通じて、私はそのことを強く思わされました。

(文:宮本康規/写真:林正隆/編集:しがトコ編集部)

【編集後記】“ヨシ”の未来

学生インターンシップ・宮本くんの記事、
いかがだったでしょうか。
じつは、しがトコ編集部でも、“ヨシ”については、
今回の取材で様々な発見がありました。

環境保全の文脈で語られることの多い“ヨシ”ですが、
むしろ、それだけでなく、素材としての価値、魅力が多い植物であること。
そして、その活用方法は多くの可能性に溢れてること。

その活用を考えるためにも、まず知ることが大事なのかもしれません。
様々な視点、役割から考えられる、琵琶湖の“ヨシ”。

滋賀の風景を大事にしたい、「しがトコ」にとっても、
改めて、大事な存在だと思わされる取材でした。

『葭嘉 西川嘉右衛門商店』の詳細情報

住所
近江八幡市円山町188

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