カルチャー

お供えものが”時計”?!時の記念日に行われる近江神宮『漏刻祭』 

【滋賀県大津市/近江神宮・漏刻祭(ろうこくさい)】

毎年6月10日になると、
その神社では不思議な祭りが行われます。

感謝を捧げるのは「時の神様」。

1年に1日だけよみがえる、古代の時計の音。

そして神様へのお供えものは……時計?!

日本の”時計の発祥地”近江神宮で、
「時の記念日」に執り行われる
『漏刻祭(ろうこくさい)』を取材してきました!

1年に1日だけよみがえる、古代”火時計”の音色

近江神宮楼門

滋賀県大津市に鎮座する『近江神宮』。

祭神は小倉百人一首で有名な天智天皇で、
競技かるたの舞台として知られており、
『ちはやふる』や『成瀬は天下を取りにいく』などの
作品にも登場する「かるたの聖地」でもあります。

境内

そんな近江神宮では毎年6月10日になると、
全国的にも珍しいお祭りが行われるとのこと。

いったいどんなお祭りなのでしょうか?

当日近江神宮に取材に行ってみると……

「ゴオーン!」

境内にドラの音が響き渡りました!

火時計

音の出所はこちらの龍。
これ、何だと思いますか?

その正体は「時計」

”火時計”と呼ばれる古代の時計なんです!

線香

龍の背に置かれた線香が徐々に燃え進むにつれて、
等間隔に吊り下げられている銅球の糸が焼き切れ、
落下した球が底のドラを叩くことで
2時間ごとに時刻を知らせる仕組みです。

球

普段線香は置かれていないのですが、
毎年6月10日のみ火時計の実演が行われます。

銅球がドラを叩く大きな音に、
訪れた人々は驚きの声をあげていました。

それにしてもなぜ古代の火時計が
近江神宮の境内に置かれているのでしょうか?

なぜ「6月10日」なのでしょうか?

“時の神様”天智天皇と、時の記念日のお祭り

時は671年。

天智天皇が当時の都であった近江大津宮において、
漏刻(ろうこく)という水時計を用いて初めて時を知らせました。

漏刻

6月10日はこの漏刻が設置された日に
あたることから「時の記念日」に定められ、
“時の祖神”である天智天皇をお祀りする近江神宮は
時計発祥の地としても知られるようになりました。

日時計

境内には漏刻のレプリカをはじめ様々な古代の時計が置かれており、
時の記念日である6月10日には火時計の実演のほか、
時の神様である天智天皇に感謝を捧げる
『漏刻祭』というお祭りが執り行われます。

時の神様へのお供えものは”時計”

開始

午前11時過ぎ。漏刻祭が始まりました。

そして奉納されるお供えものですが、
なんと漏刻祭では時計なんです!

時計奉納前

置時計、腕時計、掛時計にデジタル時計と、
その種類も様々。

采女

献納された各時計メーカーの新製品が、
びわこ大津観光大使などが務める
采女(うねめ)によって大切に運ばれていきます。

神前

神前に他の供物とともに並べられ、
時の神様である天智天皇に
時計の歴史の進展が奉告されました。

舞楽

その後も時計関係者らに見守られ、
時折境内の火時計の音が響く中、
舞楽の奉納などが行われました。

踊り子

時の記念日限定!貴重な時計を無料で見られる『時計館 宝物館』

また漏刻祭以外にも時の記念日当日には
時にまつわる様々な催しが境内で行われます。

時計館

普段は有料の『時計館 宝物館』も
6月10日当日は無料で開放されており、
江戸時代の和時計といった珍しい時計や
近江神宮ゆかりの宝物などを見られます。

和時計

館内にはまだ文字盤がなかった頃の時計も展示されていて、
あらゆる手段で時を知ろうとした先人たちの努力と知恵が窺えます。

館内

※館内は撮影禁止です。特別な許可を得て撮影しております。

境内には時計について学べる学校も!

そんな先人たちの歴史と技術を今に受け継ぐべく、
近江神宮には時計の学校も併設されています。

学校外観

それがこちらの『近江時計眼鏡宝飾専門学校』
通称『近江時計学校』です。

しがトコでも以前取材させてもらったことがあり、
全国から集まった生徒たちが時計師になるべく、
日々腕を磨いています。

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日本の“時”は近江神宮から始まった。時の聖地で学ぶ時計職人たち

教室

今年は近江時計学校でも漏刻祭にあわせ特別展示などを行っており、
生徒たちの製作物や実習の様子を見学できました。

指輪

生徒たちの机や展示スペースには実際に製作した宝飾類や
実習で使う古時計などが置かれており、

懐中時計

こちらの懐中時計はなんと200年以上前のもの!
今もカチカチ動く様子を眺めていると、先人の技術の高さに驚かされます!

「近江神宮は時の神社であることも知られてほしい」

教室内を見学していると、
近江時計学校の講師・染矢泰輔先生による
時計部品加工の実演が始まりました。

染矢先生

染矢先生は卓越したものづくりの技能者に
毎年厚生労働省から贈られる「現代の名工」に
2023年に選出されるほどの実力の持ち主。

部品

髪の毛以下の精度が求められる中、
ほぼ肉眼では視認できない領域において
精確に部品を削っていく姿に、
見学者たちは息を呑んでいました。

火時計と先生

「近江神宮はかるたで有名ですが、
漏刻祭や時の記念日での催しをきっかけに、
時の神社であるということももっと知られてほしいですね」

取材の最後に染矢先生は
そう語っていました。

時計別アングル

生活になくてはならない時計と
時の神様に感謝を捧げる漏刻祭。

カチ、コチと今も境内に響く
時の歩みと歴史に耳を傾けに、
“時の聖地”近江神宮を
訪れてみてはいかかでしょうか。

記事を書いた人
結城弘(ゆうきひろ)/滋賀県出身。小説家・ライター。小説作品に滋賀が舞台として登場する『二十世紀電氣目録』『モボモガ』など。趣味は旅行、レトロ建築巡り、ご当地マグネット集め、乗り(呑み)鉄、地酒開拓。各SNS⇒ Twitter(X) Instagram note

『近江神宮』の詳細

住所
滋賀県大津市神宮町1番1号
参拝時間
6:00~18:00
電話番号
077-522-3725
時計館 宝物館開館時間
9:30~16:30(入館16:15まで)
時計館 宝物館休館日
月曜日(月曜日が祝日・休日の場合は開館)
時計館 宝物館観覧料
一般個人300円/小・中学生150円
近江神宮公式サイト
https://oumijingu.org/

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