カルチャー

さようなら『びわこエクスプレス』。JR琵琶湖線を駆けた特急のお別れ乗車。

【JR琵琶湖線/通勤特急『びわこエクスプレス』】

JR琵琶湖線を駆け抜ける
通勤特急『びわこエクスプレス』。

この「エクスプレス」という響き、
めっちゃカッコイイと思いませんか!?

滋賀で育った私としては、
琵琶湖の側を「シュババーン!」と駆け抜けていく
爽快なイメージが思い浮かんでくるこの名前は、
駅の案内板や時刻表名などを見かけるたびに
私はワクワクしていました。

しかし残念なことに、2024年3月16日のダイヤ改正で
その名が時刻表から消滅します。

「え、なくなっちゃうの!?
めっちゃ名前カッコよかったのに……」

せめて最後に乗りにいこうかなと
落ちこんでいた私でしたが、
何気ない一言がきっかけで
『びわこエクスプレス』に乗って
大阪へ”出張”することに!?

朝焼けに染まる湖国を走る
「エクスプレス」がくれた、
特別な時間と風景をお届けします。

最後に『びわこエクスプレス』に乗ってみたーい!

きっかけは、私が発した些細な一言でした。

とある取材を終えて編集長とともに
米原駅のホームで電車を待っていた時のこと。

ふと、”あるもの”に目を留めた私は、
思わずスマホのカメラを向けていました。

「何を撮ってるの?」と編集長に尋ねられ、
私はしみじみと答えました。

「びわこエクスプレス、消えちゃうんですよ……」

そこには特急『びわこエクスプレス』の
扉位置を示す案内が貼られていました。

『びわこエクスプレス』とは
JR琵琶湖線・米原~大阪間を結ぶ
特急列車のこと。

びわこエクスプレス

全席が指定席のため、必ず座ることができ、
朝夕、2本が走っている。
しかし、ダイヤ改正で名前が変わってしまう。
そのことを説明をしながら
しょんぼり写真を撮っていた私に、
編集長が言いました。

「それなら最後に乗ってきて、記事にしてみなよ」

「エクスプレス」で、いざ出張へ

守山駅1

まさか、憧れていた特急に
お仕事で乗れる日が来るなんて。

未だ信じられない気持ちのまま、
乗車日を迎えました。

やってきたのは守山駅。
時刻は午前6時すぎです。

本当は始発駅から乗りたかったのですが、
米原駅を6時3分に出る特急に乗るのは難しく、
停車駅の一つである守山駅を選びました。

守山駅2

なぜ守山駅を選んだのかというと、
駅前に「しがトコ」のオフィスおよび
ギャラリーがあるからです!

『びわこエクスプレス』は平日のみ運行の
通勤客向けの特急ということもあり、
「しがトコから大阪に出張する」
という想定で終点の大阪駅まで乗車します!

しがトコ

それでは編集部のみなさん、
“出張”に行ってきます!

改札掲示板

改札を抜けるとすでに電光掲示板には
『びわこエクスプレス』の表示が出ていました。

英語表記もカッコイイですね!

英語表記

その存在感は、びわこを駆ける”ヒーロー”

まだ朝の6時台ですがホームはすでに
通勤客でにぎわいはじめていました。

一番先頭の9号車に乗るので、
ホームの表示に従って列車を待ちます。

9号車

「足もとのこれも、見納めかぁ」

通勤客がホームに並ぶ中、
ひとり中腰で足をプルプルさせながら
足もとにカメラを向ける私。

いくら記事のためとはいえ、
そろそろ恥ずかしさが限界に
達しようとしていたその時――

入線

『びわこエクスプレス』がやってきました!

普通電車が行き交う中に
現れたその白いボディーは、
まるでヒーローのような存在感。

びわこエクスプレス

列車種別表示幕のデザインも
『びわこエクスプレス』専用の
スタイリッシュなもの!

琵琶湖をカッコイイと思える瞬間って、
結構貴重ですよね。

種別幕

席は全席指定なので、
JR西日本ネット予約『e5489』で
事前に予約しておきました。

後ろを気にすることなく
背もたれを倒せる一番後ろの席です!

座席

座席に腰を落ち着ける間もなく、
『びわこエクスプレス』が動きだしました。

終点大阪駅に向けて、出発進行です!

朝焼けに染まる湖国を走る

車両内部

さっきまでの駅の混雑とは違い、
車内はホテルのラウンジのように
静かで落ち着いた空気が漂っています。

南草津駅

列車は草津駅、南草津駅と、
新快速に馴染みのある駅に停車していきます。

実は『びわこエクスプレス』は
能登川駅と高槻駅を通過する以外は、
停車駅は新快速とほぼ一緒。

「え、それで特急を名乗ってるの?」
という意見もあることでしょう。

しかし、最高130km/hで関西の主要都市を結ぶ
新快速のほうが”特急キラー”と呼ばれるほど
実は全国的に見たら異質な存在なのです。

日の出

南草津駅を過ぎたあたりで、
朝日が車内に射しこみました。

混雑に悩まされることなく
朝の美しいひと時を味わえるなんて……
今日はいいことありそう。

なんて油断をしていたら、
朝焼けを背負う三上山を撮り損ねました。

三上山

『びわこエクスプレス』から望む
湖国の風景を紹介しようとしていた矢先に
“近江富士”を撮り損ねるという失態。

が、特急が瀬田川にさしかかった際は、
瀬田川と琵琶湖、雪化粧の比良山系が見えました!

瀬田川1

瀬田川を挟む瀬田駅・石山駅間は、
実は”琵琶湖線”で琵琶湖がまともに見られる
ほぼ唯一といっていいスポット。

ここで挽回とばかりにカメラを向け――

瀬田川通過

ぎゃあああ!!
このタイミングで電車とすれ違いました!

またもや滋賀らしい景色を撮り逃したぁ!

と頭を抱えていた私ですが、
顔を上げると朝焼けに染まる山が現れました。

比叡山

比叡山です!
頭にちょっと雪をふりかけた姿は、
ガトーショコラみたい。

滋賀県を出る最後の最後に
湖国の美しい朝の景色に見送られ、
『びわこエクスプレス』は
大津駅を出発して京都府に入りました。

車窓を流れる、京都の思い出

山科駅

京都府に入り、山科駅では普通列車を追い越します。
だいぶ通勤ラッシュの混雑が目立つようになってきましたね。

サンダーバード

山科駅を過ぎ、京都駅の手前で
金沢方面に向かう特急『サンダーバード』と
すれ違いました。

車内案内

『びわこエクスプレス』は『サンダーバード』と
同じ車両を使用しているので、
車内にはこのように「金沢」の文字も見られます。

京都駅

列車が京都駅へと入線していきます。

私が幼かった頃は北陸新幹線がまだ金沢に来ておらず、
『サンダーバード』は富山駅まで走っていました。

家族で富山に旅行に行った際に
ここから『サンダーバード』に乗ったのですが、
初めて見た京都駅の駅舎が子ども心には
とにかくでっかく映ったのを憶えています。

そんな思い出の『サンダーバード』も
北陸新幹線延伸に伴い金沢駅止まりに。

そして2024年3月16日からは、
北陸新幹線が福井県の敦賀駅まで延伸する関係で、
さらに距離が縮まり敦賀駅止まりになります。

京都駅を出発してすぐ、
写真ではわかりづらいですが
『京都鉄道博物館』が右手に見えました。

鉄道博物館遠景

日本の鉄道の歴史を牽引してきた
様々な車両が展示されているほか、
扇形の車庫には蒸気機関車がずらり。

機関庫

子どもの頃に親に連れてこられ、
SLの汽笛が怖くてわんわん泣いていた私が
こうして電車の記事を書いているものですから、
世の中わからないものですね。

「エクスプレス」がくれる、特別な朝の時間

守山駅を出た頃に比べたら
座席が半分ほど埋まりましたが、
車内は静ひつな空気が保たれています。

とても通勤ラッシュの時間帯とは思えません。

コーヒー

混雑に左右されず、
のんびり朝の一杯を味わえるのも
特急の特権ですね。

特急券という追加料金を払ってでも
座って通勤したいという気持ちが
わかる気がします……

ノートPC

ついでに、ドン!
無意味にタブレットPCも出してみました!

「電車で都会のオフィスに出勤」という
生活は送ったことがなかったので、
サラリーマン気分も味わっておきます。

なんて遊んでいるうちに、また一つ駅を通過しました。

高槻駅

……て、よく見たら高槻駅です!

「普段は新快速が停車する駅も通過しますよー」
と写真付きで紹介するつもりだったのに!

慌ててカメラを取り出すもブレブレ。
朝の混雑具合を察していただけると幸いです……

春からのチームメイトと合流し、大阪へ

せわしなくあれこれ写真を撮っているうちに、
列車はあっという間に新大阪駅に着きました。
次はいよいよ終点・大阪駅です。

向こうのホームにいるのは『サンダーバード』ではなく、
姫路から来た『らくラクはりま』という通勤特急です。

この『らくラク』という名に聞き覚えはありませんか?

そう、冒頭で紹介した『びわこエクスプレス』の
改称後の名が『らくラクびわこ』でしたね。

姫路・網干方面からの『らくラクはりま』
奈良方面からの『らくラクやまと』
そして琵琶湖線を走る『らくラクびわこ』

この3つの通勤特急が3月16日から
『らくラク』シリーズとして
近畿各県と大阪を結びます。

そんな新たなチームメイトに見送られ、
『びわこエクスプレス』は
終点の大阪駅へ向かいます。

淀川

淀川をあっという間に渡りきった後、
高層ビル群の中へと列車は吸いこまれていき……

大阪駅寸前

大阪駅に到着しました!
時刻は7時31分。
守山駅から1時間弱の乗車でした。

大阪駅到着

『びわこエクスプレス』は
ここから先どこにも行きません。

さっきまでの静けさが嘘に思えるほど、
ホームは通勤ラッシュの喧騒に満ちていました。

大阪駅掲示板

「特別な時間が終わったなぁ」と夢心地に浸る暇もなく、
『びわこエクスプレス』は回送列車として出発。

回送出発

赤いランプの尾を引きながら去っていった後には、
大阪駅の開放的な天井が広がっていました。

大阪駅天井

ふるさとを駆けた「エクスプレス」

通路

朝焼けに染まる湖国。
思い出が車窓を流れた京都。
新たな時代を感じさせる大阪。

車窓から見えるいつもの景色を、
いつもとちょっと違うものに変えてくれる。

「エクスプレス」という響きには
そんな特別な力があったように
乗車してみてあらためて感じました。

そんな憧れの存在が琵琶湖線から
なくなってしまうのはやっぱり寂しいですが、
思い出から消えてなくなるわけではありません。

『らくラクびわこ』として
生まれ変わった「エクスプレス」は、
新たな仲間たちとともにますます
関西を活気づけることでしょう!

時計広場

降り立った大阪駅で朝の空気を吸い、
「さぁこれから頑張ろう」と
私も気持ちを入れ替えます!

ここまで連れてきてくれてありがとう、
『びわこエクスプレス』

行ってきます!

切符

(取材・写真・文:結城弘 編集:林正隆)

記事を書いた人
結城弘/滋賀県出身。小説家・ライター。滋賀が舞台として登場する小説『二十世紀電氣目録』『モボモガ』を執筆。趣味は旅行、レトロ建築巡り、ご当地マグネット集め、乗り(呑み)鉄、地酒開拓。各SNS⇒ Twitter(X) Instagram note

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