カルチャー

職人が集まり暮らす珍しい地域、米原市上丹生「木彫りの里」で木彫り体験してきました!

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【上丹生工芸体験/滋賀県米原市】

滋賀県米原市上丹生(かみにゅう)。
豊かな山々に囲まれたその場所は「木彫りの里」として知られ、
江戸時代から伝統の技を受け継ぐ職人が集まり
暮らす全国的にも珍しい地域です。

そんな上丹生で、気軽に職人さんの工房を訪れたり、
「工芸体験」ができることをご存知ですか?
本格的な材料と道具を使った「木彫り」を編集部で体験してきました。

木彫りの里、上丹生(かみにゅう)とは

ノミと鳳凰
清水が流れる観光スポット「醒井」から約3km山間に
ひっそりと息づく「木彫りの里」があります。

上丹生の木彫りの歴史は古く、その始まりは江戸時代末期頃。
当時、京に彫刻を学んだ者が帰郷し、寺社や仏壇の彫刻を
生業として始め、同時に多くの弟子を養成したことから
彫刻技術が普及。

現在では木彫り職人はもちろん、
仏壇をつくるための「塗り師」「錺金具師(かざりかなぐし)」などの
職人が暮らしています。

看板
今回の体験をサポートしていただくのはこちら「井尻彫刻所」。
見上げると立派な看板が!

扉を開けた瞬間、ふわっと香るのは削った木の香り。
本格的な職人の”現場”に、ドキドキしてしまいます。

井尻さん
体験の講師は、「井尻彫刻所」の井尻一茂さん。
祖父の代から70年にわたり受け継がれる「翠雲彫」の3代目であり、
彦根仏壇彫刻部門の「伝統工芸士」でもあります。

よしもと看板

写真提供:井尻彫刻所

神社仏閣の彫刻を始めとする幅広い制作はもちろん、
2013年には「なんばグランド花月」の看板も手掛け、話題に。
鳥や花、竹などの彫刻に、名だたる芸人さんの 名前が見事に調和しています。

そんな経歴を聞くと、声をかけるのも遠慮してしまう
”寡黙な職人”なのかな…と緊張してしまいますが、
実はとても快活でお話し上手。

”現役職人から教わる木彫り体験”と聞き、気負っていましたが、
よーし、思いきり楽しもう!と、リラックスした気分で体験スタートです。

現役の職人さんから教わりながら、「木彫り」を体験

コースター
今回の木彫り体験では、コースターを作ることに。
「好きなデザインを選んでね」と並べられたのは
可愛い図案のコースター!

コースターセレクト
「えー!こんなに種類があるの?!」と驚きの表情を見せているのは、
しがトコ編集部の土岡と、学生インターンのあおのちゃん。

どれにしようかと迷っていたら
「初めてなら、動物がおすすめですよ」と意外な答え!

「シンプルな方が、彫るところが少なそうだけど…」
そんな話をしながらも、素直に動物図案を選びました。

図案
まずは、図案を写す作業から。
「半分ずつ書き写します。紙を手で押さえて…次は反対。そうそう」

書き写し完成
「できました!」と、手際よくあおのちゃんの書き写しが完了!
お手本のライオンより、小顔で凛々しい印象です。

彫刻刀説明
次はいよいよ、彫刻刀の登場。
「触るのは学校の図工以来です…」と話すあおのちゃんも
井尻さんの説明に真剣に聞き入っています。

説明1
「まずは、刃を線に対して垂直に。 こんなふうに押し込んでみてください」
え!それって学校でやったら怒られるやつでは?!
そんな言葉を飲み込み、彫刻刀を立てて力を入れると…
すごい!ぐっと刃が入っていく!

彫り進める
「今つくった”溝”に向かって、周りを彫っていきますよ。
刃を壁に当てるように。そうすると模様が浮き出てきます」

何度か彫っていくと、
少しずつライオンのあごのラインが出てきました!

彫刻刀
それにしても、この彫刻刀の切れ味! なめらかに彫れる感覚がたまりません。
「うわー、気持ちいい!」と何度も口にしてしまうほど。

「体験に使う彫刻刀は、プロも使うイイものですよ。
それになんていっても、職人が研いでるからね」
と、井尻さん。

作業台
それから、この「作業台」も、彫りやすさのポイント。

作業台の”ストッパー部分”に木を押し当てる。
刃よりも前に指を出さないようにして彫る。

この2つを守れば、絶対に指をケガしないというスグレモノ。
「練習」として彫らせてもらった長い縁のラインも
思い切りよくするすると彫れました。

彫り進める2
最初はあれこれ話しながら彫り進めていたものの、
コツを掴み始めると、いつの間にか言葉もなくなり…
木を彫る音だけが響く、静かな空間に。

次はこうしよう、これくらいの力加減はどうだろう。
線からずれたな、もう少し深く彫ろう…

いろいろなことを考えているはずなのに、
どんどん頭の中がクリアになっていくような
心地よい”集中”の時間が過ぎていきます。

「立体作品」こそ、木彫りの魅力

うさぎ
パッと時計を見ると、あっという間に一時間!
驚きとともに大きく息をついたところで、
井尻さんが 作業台に「うさぎ」を置いてくれました。

「これ、うちのおじいさんのお師匠さんの作品」
これは!
時の流れも手伝ってか、落ち着いた色合いとしっとりした質感が
ものすごくリアル!

「すごいでしょ。本物のうさぎの筋肉を見ながら彫ったそうです。
真似して彫ってみるけど、なかなかこの領域にはたどり着きません」

うさぎ2
「こっちは、僕が彫ったもの」
こちらのうさぎも、毛並みの細やかさが分かる木目と
今にも跳ねそうな躍動感!

「以前、これを見た小学生の女の子が”欲しい!”と言ってくれて。
泣き出すものだから、小さなうさぎを彫ってプレゼントしたんです。
そうしたら、その後おこづかいを貯めたよー!と買いに来てくれました。
その時は本当に…この仕事やっててよかったなぁと思いました」

「木彫りの一番の魅力って、こういう”立体”だと思ってます。
学校では、版画とかで”溝を彫る”作業だったでしょ?
彫ることで浮かび上がる、出てくる。
そんな木彫りの魅力を伝えたいですね」

作業再開
彫っていて感じた、これまでと違う新しい感覚。
”溝を彫る”ではなく、”立体として浮かび上がらせる”と
いうことだったんですね。

そんな大切なお話を聞き、
井尻彫刻所の”お宝うさぎ”に見守られながら、体験を再開!

井尻さんは、快くアドバイスはしてくれるものの
こちらの作品にはほとんど触れません。

「僕が手を加えたら、整ったものはできるけど
なんとなくそれで満足しちゃうでしょ。
”次はもっとこうしたい!”うまくなりたい”っていう気持ちを
そいでしまうことになる。
だから、見守ることにしてるんです」

井尻さんお手本
彫り方を教えてくれるときも、手元の作品で見本を彫ってくれます。
シュッ!シュッ!と心地よい音とともに現れる
なめらかな木肌。
この迷いのない勢いが、美しい”面”には必要。
平面の多い、幾何学図案が難しいのは、この点にありました。

井尻さんの手元と自分の作品を見比べながら
どんどん彫るのが楽しくなっていることに気づきます。

「うん、いい感じに彫れてますよ」
「言われたことを素直にきちんとやれてて、うまいですよ」
という声掛けもいただき、自信を持って彫り進められました。

コースター完成
彫り始めてから約2時間。
あおのちゃんのライオンコースター、完成しました!
目や口元の細かい部分もばっちり。 凛々しいライオンがお目見えです。

「まだまだ彫っていたくて…やめるタイミングが難しいです!
もう2時間?って感じでした」
と、あおのちゃんも大満足の様子でした。

木彫り体験した人たちからは
「すみません、あと30分だけ彫ってもいいですか?」と
“時間追加”のお願いもよくあるそう。

わずか2時間で、こんなに木彫りに心奪われることになるとは!

記念撮影
お世話になった井尻さんと、記念撮影!
一流の材料と道具、丁寧な指導のおかげで、楽しい時間を過ごせました。

若手職人たちで結成した”職人チーム”「上丹生ウッドペッカーズ」

職人道具
上丹生には、「上丹生ウッドペッカーズ」という
井尻さんを中心に伝統工芸の技を受け継ぐ職人たちで結成した集団があります。

今回の体験では、井尻さんにサポートしていただきましたが、
上丹生ウッドペッカーズの工房は見学自由。
歴史を重ねた工房で、直接職人さんと話をしたり、
その卓越した技術に圧倒されたり。
気軽に、伝統工芸に触れることができますよ。

観光も魅力的。近くには散策スポット「醒ヶ井宿」も

ギャラリー

工芸体験は、上丹生の工房以外に ゲストハウス『居醒庵(いざめあん)』でも
おこなわれています。(不定期開催)

元旅籠屋をリノベーションし、美しく蘇った『居醒庵』は
上丹生の職人の作品が購入できるギャラリーを備え、
宿泊者でなくても気軽に訪れることができます。

参考記事:梅花藻咲く清流の宿場町に誕生した、ゲストハウス『居醒庵(いざめあん)』

梅花藻
居醒庵のある「醒ヶ井宿」は、 宿場町の趣を今に残す人気の観光地。
最寄り駅のJR醒ヶ井駅から5分ほど歩くと 風情ある町並みが見えてきます。

醒ヶ井宿を流れる地蔵川に咲くのは、 初夏から晩夏まで楽しめる「梅花藻」。
水面から顔を出した小さな花がゆらゆらと揺れる様は
思わずカメラを構えたくなる可憐さ。
暑い夏にぴったりの、涼し気な散策スポットとしても人気です。

職人が美しい工芸品をうみだす「木彫りの里 上丹生」と、
中山道61番目の宿場町「醒ヶ井宿」。

ふたつの土地を、その歴史に思いを馳せながら、
一日かけてゆったりとめぐってみては
いかがでしょうか。

<写真:辻村耕司 文:土岡菜摘(しがトコ編集部)>

※この記事は、非常事態宣言解除後に取材したものです。
編集部はマスクを着用するほか、感染防止に最大限注意し取材しています。
被写体の人物は、写真撮影時のみマスクをはずして撮影しています。

上丹生木彫り体験のお申し込みについて

上丹生木彫体験をご希望の方は、
下記事務局までお問い合わせください。

事務局「石久仏壇店」
電話番号:0749-54-2567
メール:isikyubutudan@gmail.com
※体験を希望される方は体験希望日の10日前までにご連絡お願いいたします。
※誠に勝手ながら年末年始はお休みをいただきます。返信にお時間を要しますがご了承ください。

体験できるメニューや料金は、
上丹生ウッドペッカーズの公式サイトまで。
「Tonton Craft Journy」https://tonton-craft.com/

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