カルチャー

え!瀬田じゃなくても「セタシジミ」?シジミ漁船に乗ったら琵琶湖のリアルが見えてきた【琵琶湖の漁師#01】

【琵琶湖の漁師シリーズ #01】

琵琶湖の名産「セタシジミ」。
県内でその名前は有名ですが、
大半の人は、きっと勘違いしてるはず。

「瀬田で採れるシジミ」だから「セタシジミ」と思ってませんか?
恥ずかしながら、しがトコ編集部では、
これまでそう思ってました。
でもじつは、違うんです。
琵琶湖で採れる品種の名前が「セタシジミ」。
堅田で採れても「セタシジミ」、沖島で採れても「セタシジミ」。

ホントに全然知りませんでした。

でも、それなら色々知ってみたい!
ということで、シジミ漁の船に乗せてもらって、
取材してきました。

「おいしが うれしが」10周年記念での取材から

今年度、しがトコでは、滋賀の地産地消推進キャンペーン「おいしが うれしが」の
魅力発信のお手伝いをさせてもらっています。

■参考:おいしが うれしが【公式】Instagramアカウント

この取材の中で訪れたのが、シジミ漁師・今井良平さんの取材機会。
取材アポの電話をさせてもらう際、思い切って、
「話を聞くだけじゃなくて、漁船に乗せてもらえませんか?」
と、リクエストしてみたところ、
「いいですよー」と、まさかの快諾。

やったー!ということで、取材現場に行ってきました。

堅田港

やって来たのは、こちら。堅田漁港。

繰り返します。これから採るのは「セタシジミ」。
堅田で採るけど「セタシジミ」。

中村さんの船

まずは中村さんに船の説明を伺います。
この日、取材に訪れたはのは、午後2時。

いつもは朝4時から漁を始めるそうですが、
今日は特別に、取材用として、午後から2回目の船を出してもらいました。

「ちょっと今日は風があるから酔うかもしれんなあ。船酔い大丈夫?」

うーん、どうでしょう。でもここまで来たら乗らせてください。
どうぞよろしくお願いいたします。

なんて話をしながら、漁船に乗せてもらいます。

今井さんの船

ドキドキしながら、船内へ。

船室

船室に通してもらいました。
いや、船室と言うか、漁船の中です。

「危ないんで、船が動いてる間は中に居てもらっていいですか」

そう言って今井さんは、船外で舵を取ります。
ちなみに、横におられるのは今井さんの奥様。

いよいよ出発進行です。
まずは、堅田漁港から北上して、琵琶湖大橋を目指します。

青空が気持ちいいー!

漁船に乗せてもらうのに、大雨だったら大変です。
というか、風が強い日や雨の日は船がだせず漁もお休みなんだそう。

うみのこ

あ!うみのこだ!!

滋賀県民にはお馴染み「うみのこ」の姿を見つけ
少しテンションもあがります!
(写真はピントが合いませんでした・・・)

■関連記事:新”うみのこ”内部初公開!潜入レポート

そうこう言ってるウチに、もう琵琶湖大橋です。
普段は上を通るだけの琵琶湖大橋の下を
くぐるっていうのは、嬉しいですねぇ。

琵琶湖のランドマーク「琵琶湖大橋」の魅力は
こちらのサイトで詳しく紹介されてますよ。

■関連記事:『惚れる!琵琶湖大橋』

北湖

さらに船を進めること、数分。

この日の漁場の野洲沖に着きました。
いったん船を停め、シジミ漁が始まります。

余談が多くなりましたが、
ここからが、シジミ漁レポート、本題です。

黒く輝く琵琶湖の恵み「セタシジミ」

漁が始まる

「まずここで、網を降ろします。
船が止まると揺れやすくなるんで、気をつけてくださいね」

分かりました、と答えますが、揺れる揺れる。

漁の準備をするため、船上をさっそうと歩く今井さん。
でも、これ、めっちゃ揺れてるんです。

網を降ろします。

この網には重い錘(おもり)がついていて
船を動かすと琵琶湖の底に眠るセタシジミが
すくい取れるという仕組みです。

今井さんは網を軽々と持ち上げているようにみえますが
なんと重さ約50kg!

ためしに我々も持ちあげようとしましたが、びくともしません・・・
今井さんいわく、力の入れ方にもコツがあるとのこと。

網を下ろしたら
船をゆっくり動かします。

その間も、船は揺れます。
速いスピードで動いてる船の方が揺れにくい、ということを、
この日、学びました。

あみをあげる

ずっしりと重そうな網を引き上げる今井さん。
もしやこれは、大漁の予感!?

貝をうつす

網の中には大小様々な貝がたくさん入っています!

選別

その貝を今度は、こちらのざるのようなものにうつし、
電動でざるを左右に動かすと、
シジミより小さい貝は琵琶湖に落ちていく仕組みです。

ざるに残った貝

この作業を何度か繰り返していきます。

貝

こんなにたくさん!!

思わず喜んだ取材陣に、
「これほとんどセタシジミちゃうで」と今井さん。

ヒメタニシ

たしかに!よく見れば形が少し違います。

「これはヒメタニシゆうねんけど、これが今琵琶湖で爆発的に増えてるんや。
どうもこれがシジミの稚魚を食うてるらしいねん。
昔はシジミの中からタニシをよってたんやけど、
今はタニシの中からシジミをよってるんやで」

よりわける

手作業でシジミをより分けていきます。

船上でこの作業を行うので、
風の強い日は漁にでることができないんです。

セタシジミ

あんなにたくさんあった貝の中から
出荷できるセタシジミはたったの1割なんだとか。

えぇー!気軽に大漁と喜んでたことが申し訳ないです。。

通常の漁ではこの作業を早朝から昼過ぎまで、
何度も何度も繰り返すので、
シジミ漁は体力勝負なのだそう。

今井さん夫婦

しかも、セタシジミの旬は冬から春。
凍える寒さに耐え、漁にでる今井さんたち
漁師さん仕事の厳しさに頭が下がります。

今回は本当に貴重な機会をありがとうございました!

琵琶湖の固有種「セタシジミ」は、シジミの中でも最高級品!

しじみ

日本には「ヤマトシジミ」、「マシジミ」、「セタシジミ」の
3種類の在来シジミが生息していますが
マシジミとセタシジミは環境要因のため激減し、
今現在、流通しているシジミのほとんどは、ヤマトシジミなんだそう。

セタシジミは、琵琶湖の固有種で
産卵を控え身をふっくらとさせた冬から春のセタシジミは、
シジミの中でも最高級品と言われています。

セタシジミの名の由来は、瀬田川付近でたくさん獲れたことからきていて
昔は、獲れ過ぎて舟がひっくり返りそうになるほどの収穫量だったとか。

シジミ収穫量グラフ
(参考資料:滋賀県

けれど、このグラフからもわかるように
収穫量は昭和30年代から驚くほど激減しています。

「今年の台風でさらにシジミがおらんようになってしもたんや」と今井さん。

昨夏の台風21号。
各地で猛威をふるった記憶に新しいあの台風。
「あの台風で琵琶湖の中がひっくりかえってしもて、
今までおったところにおらへんようになったさかい、
みんな海津のへんまで獲りに行ってるんや。
そやけど、そこまで行ったらガソリン代かてバカにならんしなあ」
と言葉少なに語ってくれました。

琵琶湖

今井さんが網をすくいあげたとき、
ペットボトルやプラスチックも一緒にあがっていました。
最近は海洋プラスチックの問題もニュースになったように、
プラスチックは自然に還ることなく琵琶湖を漂い続け、
琵琶湖に生きる生物に影響を及ぼし続けます。

わたしたちを潤し、守り、食べさせてくれる母なる琵琶湖。
その琵琶湖の環境を守るために少しでもできることをして、
美しい琵琶湖を次世代に引き継いでいきたい。

夕陽に照らされて徐々にピンクに染まっていく琵琶湖を眺めていると
そう願わずにはいられませんでした。

琵琶湖の漁師シリーズはこちらから

「漁師ほどおもしろい仕事はない」新しい文化を作る琵琶湖の漁師中村清作の挑戦【琵琶湖の漁師#02】

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